【本】「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

著:エマニュエル・トッド

フランスの歴史人口学者エマニュエリ・トッドのインタビューをまとめたものです。副題に「日本人への警告」とありますが、これは嘘です。文芸春秋社が勝手につけたもので、もともと日本人相手に書いた(語った)ものではありません。

それゆえ、話題は欧州に集中しています。米国についてはある程度語っていますが、日本への言及はきわめてわずかです。

そのためか、「客観的」な世界情勢の分析とみなされ、日本で売れたのだと思います。

しかし、私にはもの足りませんでした。

たびたびインタビュアーに「あなたはドイツが嫌いなんですか?」と訊かれ、そのたびに否定していますが、やはりドイツが嫌いなようにしか見えません。

たびたび、“ドイツはこう”で、“ロシアはこう”と断定していますが、根拠らしきものは、歴史的事例からその国の振る舞いを決め付けているだけに見えます。

図表や統計数字が多いわりには、客観性に乏しく、論理よりも情緒に偏っているように感じました。

また、翻訳が悪いのか、この人の喋りの癖なのか、決して読みやすいものではありません。

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【本】君は人生を戦い抜く覚悟ができているか?

著:鳥越俊太郎
初版:2015年8月1日

このblogでジャーナリストの鳥越俊太郎氏の話題を取り上げると、なぜか反響がおおきいです。調子に乗って、図書館で見つけた鳥越氏の本を読んでみました。

内容は著者のジャーナリスト人生のエピソードを通じて、若者に仕事に必要なスキル・心構えを伝える、というものです。

本当に仕事の哲学が学べるとは思えませんし、そういう目的で読む人も実際には少ないでしょう。記者の裏話を読ませたい・読みたいというのが本音かと思います。

意外だったのは、鳥越氏が都知事選挙であらわにした反自民という思想がどこから来ているのか、この本を読んでも分からないことです。何かの体験なり、思索が、「ストップ・ザ・安倍」になったはずなのですが、読み取れません。野党に対するシンパシーも見えません。一冊だけで判断するのは早計かもしれませんが、もしかして彼の反自民は、それほど根深い考えではないのかとさえ思えます。

今読むと面白いエピソードもあります。

著者は、サンデー毎日の記者時代に政治家の浜田幸一氏(通称ハマコー)に、業務上横領・障害逮捕監禁の前科があることを暴きました。その後、浜田氏がパリにフライトすることを突き止めた著者は、同じ機の隣の席を予約します。当時、鳥越氏はテレビの仕事をしていなかったためか、浜田氏は鳥越氏の顔を知りません。鳥越氏は、たままた同乗した振りで話しかけ、仲良くなった後で、名刺を出してインタビューを試みるという作戦に出ます。

名刺を出した後、こうなりました。

浜田氏は、「ん?『サンデー毎日』?『サンデー毎日』は、こないだ俺のことをさんざん悪く書きやがって!」と怒りました。
さすがに僕が書いたというのは言えなかった。「僕が書いた」と言ったら、恐らく取材できないだろうと思って黙っていました。
そこで私はこう言いました。「先日の記事は、編集部内でも、『発表すべき派』と『発表すべきでない派』に分かれました。私は発表すべきだと思いました。それは将来、浜田先生が総理大臣になるかもしれないからです。そのときにこういう過去の経歴が出ると、大スキャンダルになる。それは国民もあなたも不幸です。でも、いま出しておけば、そのとき爆発することはありません」と説明しました。
(中略)
「総理大臣」という言葉に気をよくした彼の態度は、ガラっと変わりました。それからは質問に全部正直に答えてくれたのです。


「総理大臣」を「東京都知事」に、「国民」を「都民」に置き換えても十分通じる話です。過去のスキャンダルを暴く報道は、本人にも選挙民にも良いことだ、というありがたいお話です。笑えます。

※鳥越氏に対する報道は、選挙中だったので選挙妨害に当たるのではないかと今でも思っています。したがって、浜田氏に対する報道とは別ものと考えるべきかもしれません。しかし、こうして読むと、無性に笑えてきます。

【本】64(ロクヨン)

著:横山秀夫

映画が面白かったので、原作を読んでみました。原作も期待通りに面白かったです。

単行本で647ページの長編です。映画は前後編に分かれていますが、前編の終わりは478ページまで。つまり、前半は飛ばしぎみで、後半をじっくりという構成です。ただし、後半部分で原作にない追加があります。原作では、64(ロクヨン)事件の完全解決にまで至っていません。被害者遺族によって解決への端緒をつけたところまで、とりようによっては警察組織に匕首をつきつけたところまでが原作です。映画では、おさまりが悪いと思ったのか、完全に解決するところまで描いていました。

原作は主人公三上の心情を丁寧に追っているので、映画では疑問に思えた行動(誰と戦っているの?)も理解できます。一見関係のない三上の行動が“64模倣事件”と裏で密接に関わっているのも原作で説明できています。

映画ともども原作もお薦めできます。

【本】闘う社説

著:若宮啓文

元朝日新聞論説主幹・若宮啓文氏が2002年から2008年までの論説主幹をしていた時期の記録(自叙伝?)です。

社説の方向を決めるのに朝日社内での議論が交わされる様子がうかがえます。同じ朝日新聞とはいえ論説委員によって微妙なズレがあり、積み重ねてきたこれまでの社論と整合性をどう取るかなど、舵取りの難しさ分かります。

産経新聞や読売新聞をはじめ他のマスコミとの論争での若宮氏の言い分も、全部ではありませんが、理解できなくもありません。

しかし、次の一節はどうにも気になります。

2003年元日の社説『「千と千尋」の精神で 年の初めに考える』で、日本の外交姿勢を批判しアニメ映画「千と千尋」の精神(多神論的な複眼的で冷静で柔軟な精神)を忘れるな、と書きました。この社説に、テロ組織や北朝鮮と日本や米国の価値観を「どっちもどっち」と考えているようだ、との批判がありました。この批判について

批判の矛先がとかく日本やアメリカに向きがちなのは、それが「話してわかる側」だからにほかならない。(P45)


と反論しています。おそらくこれは、2003年元日の社説だけでなく、朝日新聞の論調一般に言えることなのだと思われます。

私から見れば、「話してわかる側」に厳しいことを言うというのは、公正な言論ではなく、政治活動です。読者を対等の知識人とみなさず、教化すべき相手とみなしているとしか思えません。

【本】裸足の皇女

著:永井路子

時代小説といえば、たいていは江戸時代です。歴史小説は、いろいろな時代を扱うといってもやはり戦国やご維新が多いです。

この短編集は、古代を題材にとっています。壬申の乱とか藤原四兄弟とか、そこらへんです。ただし、主人公たちは歴史を動かしたメインプレイヤーではなく、周辺にいた人たちです。その意味では時代小説的なところもあります。歴史の事件を直接扱うのではなく、背景の人たちを追っていくというスタイルでした。

小説で歴史を学ぶというのは邪道なのかもしれませんが、歴史の解説書だとどうしても人物の造形が無味乾燥になります。小説だと、根拠薄弱なのかもしれませんが、その人の性格・情念といったものがくっきりと描かれますので、人物への関心が高まります。それゆえ一般人にとっては歴史を題材にした、小説、映画、テレビドラマは意味のあるものだと思います。

古代の日本については、あまり知識しかないので、この短編集は非常に面白かったです。結構、興味がわいてきました。
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Author:えいび
日々の出来事、映画やアニメの感想です。

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