【本】親を、どうする?

著:小林裕美子

私のようなグータラサラリーマンでも、時々会社のトップと話をすることがあります。下々の者の意見にも耳を傾ける、というポーズかもしれませんが、組織人ですので指名されたら付き合わざるを得ません。

たいていは気を遣うだけで、決して忠誠心をかきたてられたりすることはありません。しかし、一回だけ、一人だけ例外がありました。この時の社長との会話は実に楽しかったと記憶しています。

他の重役と何が違うのか考えました。

結論は、会話が楽しかったトップは解答を示さない、ということです。

他の重役は、我々に日々困っていることは何かと訊き、それに答えると、“こうすればいい”とか“ああすればどうか”と解答を出します。しかし、日々問題に直面している我々はとっくに検討して捨てたアイデアです。いくら重役が偉いからといって、ほんの十分前に聞いた問題に適切な解答を出せるわけがありません。

しかし、意義があったと感じた重役は、解答を示さず、“俺も若いころに似たような問題に出くわして参ったヨ。それはかくかくしかじかで・・・”といった世間話的なことを言うだけです。

一見、解答を出す人との会話の方が有意義に思えますが、実際は違います。似た経験をした人がいたんだな、と感じる方が頑張る気力が出ます。

この本を読んで、それを思い出しました。

本書は老親の介護をテーマにした(基本4コマの)漫画です。

別に笑えるということはありません。年寄りの介護をしたことのある人だと、似たような経験が随所に出てきます。これを読んで、介護について知識が得られるという本ではありません。しかし、他人の経験(架空の話も含まれているかもしれませんが)を聞くことで実に心が楽になりました。

別にこの本に限る必要はないかもしれません。介護で困っている人は他人の経験談の本を読むことは良いことだと思います。

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【本】「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気

著者:牧村康正+山田哲久

大ヒットアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の生みの親、西崎義展の半生のレポートです。同時に日本アニメーション会の歴史が描かれます。

敵が多すぎるために、おおくの関係者から実名を出すことさえ嫌がられ「N氏」とか「ヤマトの某氏」など呼ばれていたこともありますが、いままで西崎氏の業績を日本アニメーション史のどの辺に位置づけるべきなのかよくわからないでいました。この本で、それが氷解しました。

表紙の写真は、開襟シャツをだらしなく着込み、ズボンのポケットに両手をつっこみ、くわえ煙草で、視線をカメラに向ける西崎氏です。道で前からこんなのが歩いてきたらよけたくなります。とてもではありませんが、まともな人間には見えません。

本書で描かれる西崎氏のひととなりは、この写真の通りです。ただ、それとは別に「宇宙戦艦ヤマト」をよい作品にしようとした彼の生き様も公平に書かれています。

私も「宇宙戦艦ヤマト」は好きでした(今でも好きですが)。いまに至るもアニメファンなのは、この作品によるところが大です。しかしシリーズを重ねるにつれ違和感が増大したのも事実です。よくも悪くも「宇宙戦艦ヤマト」が私の一部分を形成したといえるでしょう。

そんな私にとって、本書で知る制作の裏側は興味以上の感情を持ちました。

【本】エヴァンゲリオン化する社会

著者:常見陽平

「エヴァンゲリオン」というのはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のことです。

「エヴァンゲリオン」で描かれた世界が、現代社会の、特に労働者の働き方を予言していたかのように一致する部分があるという考察で進めています。

サブカルチャーをもとに現代社会を論じる社会学的考察はどういうわけか日本では目に付きます。外国のことはよく知らないのですが、他所の国にもあるのでしょうか。「スターウォーズ化する米国社会」とか「ハリー・ポッターが予言する英国の未来」とか。どうも想像がつきません。日本だけで流行っているような気がします。

それはともかく、この手の論は、単なる偶然の羅列や、牽強付会の理屈に満ちているのがほとんどで、この本も例外ではありません。

普通に労働環境について語った方がよっぽど説得力があります。売れないかもしれませんが。

ただ、常見氏はきちんと「エヴァンゲリオン」を視聴しているのは確かで、その点は好感が持てました。

【本】「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

著:エマニュエル・トッド

フランスの歴史人口学者エマニュエリ・トッドのインタビューをまとめたものです。副題に「日本人への警告」とありますが、これは嘘です。文芸春秋社が勝手につけたもので、もともと日本人相手に書いた(語った)ものではありません。

それゆえ、話題は欧州に集中しています。米国についてはある程度語っていますが、日本への言及はきわめてわずかです。

そのためか、「客観的」な世界情勢の分析とみなされ、日本で売れたのだと思います。

しかし、私にはもの足りませんでした。

たびたびインタビュアーに「あなたはドイツが嫌いなんですか?」と訊かれ、そのたびに否定していますが、やはりドイツが嫌いなようにしか見えません。

たびたび、“ドイツはこう”で、“ロシアはこう”と断定していますが、根拠らしきものは、歴史的事例からその国の振る舞いを決め付けているだけに見えます。

図表や統計数字が多いわりには、客観性に乏しく、論理よりも情緒に偏っているように感じました。

また、翻訳が悪いのか、この人の喋りの癖なのか、決して読みやすいものではありません。

【本】君は人生を戦い抜く覚悟ができているか?

著:鳥越俊太郎
初版:2015年8月1日

このblogでジャーナリストの鳥越俊太郎氏の話題を取り上げると、なぜか反響がおおきいです。調子に乗って、図書館で見つけた鳥越氏の本を読んでみました。

内容は著者のジャーナリスト人生のエピソードを通じて、若者に仕事に必要なスキル・心構えを伝える、というものです。

本当に仕事の哲学が学べるとは思えませんし、そういう目的で読む人も実際には少ないでしょう。記者の裏話を読ませたい・読みたいというのが本音かと思います。

意外だったのは、鳥越氏が都知事選挙であらわにした反自民という思想がどこから来ているのか、この本を読んでも分からないことです。何かの体験なり、思索が、「ストップ・ザ・安倍」になったはずなのですが、読み取れません。野党に対するシンパシーも見えません。一冊だけで判断するのは早計かもしれませんが、もしかして彼の反自民は、それほど根深い考えではないのかとさえ思えます。

今読むと面白いエピソードもあります。

著者は、サンデー毎日の記者時代に政治家の浜田幸一氏(通称ハマコー)に、業務上横領・障害逮捕監禁の前科があることを暴きました。その後、浜田氏がパリにフライトすることを突き止めた著者は、同じ機の隣の席を予約します。当時、鳥越氏はテレビの仕事をしていなかったためか、浜田氏は鳥越氏の顔を知りません。鳥越氏は、たままた同乗した振りで話しかけ、仲良くなった後で、名刺を出してインタビューを試みるという作戦に出ます。

名刺を出した後、こうなりました。

浜田氏は、「ん?『サンデー毎日』?『サンデー毎日』は、こないだ俺のことをさんざん悪く書きやがって!」と怒りました。
さすがに僕が書いたというのは言えなかった。「僕が書いた」と言ったら、恐らく取材できないだろうと思って黙っていました。
そこで私はこう言いました。「先日の記事は、編集部内でも、『発表すべき派』と『発表すべきでない派』に分かれました。私は発表すべきだと思いました。それは将来、浜田先生が総理大臣になるかもしれないからです。そのときにこういう過去の経歴が出ると、大スキャンダルになる。それは国民もあなたも不幸です。でも、いま出しておけば、そのとき爆発することはありません」と説明しました。
(中略)
「総理大臣」という言葉に気をよくした彼の態度は、ガラっと変わりました。それからは質問に全部正直に答えてくれたのです。


「総理大臣」を「東京都知事」に、「国民」を「都民」に置き換えても十分通じる話です。過去のスキャンダルを暴く報道は、本人にも選挙民にも良いことだ、というありがたいお話です。笑えます。

※鳥越氏に対する報道は、選挙中だったので選挙妨害に当たるのではないかと今でも思っています。したがって、浜田氏に対する報道とは別ものと考えるべきかもしれません。しかし、こうして読むと、無性に笑えてきます。
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えいび

Author:えいび
日々の出来事、映画やアニメの感想です。

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