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【言葉】しこう

各方面から批判の放火をあびた新潮45 10月号の『そんなにおかしいか「杉田水脈」論文』ですが、その批判の一つとして幾人かの論者が「性的嗜好」という言葉を使っていたことが理由になっていました。同性愛や両性愛を表現するのは「性的指向」というのが正しいのに「性的嗜好」という言葉を使ったというものです。

「しこう」と読む漢字はいくつかありますが、紛らわしいものが「嗜好」「指向」「志向」です。辞書(広辞苑)で確認してみました。

嗜好:
たしなみこのむこと。このみ。

指向:
1)めざして向かうこと
2)さしむけること
3)⇒しこう(志向2)

志向:
1)心の向かう方。意向。志趣。
2)「哲」(intendierenドイツ)意識は常に具体的な何ものかについての意識であり、意識がその何ものかに向かっていることを志向という。ブレンターノ・フィッセルはこれを心的作用の特性とした。指向。
3)(intention)動機としての目的の観念に対し、それを実現するに必要な手段及び予想される結果の観念をいう語


つまり「性的嗜好」(英語ではsexual preference)と表現すると同性愛や両性愛を自分で選択したもの、後天的なものという印象になります。

「性的指向」(英語ではsexual orientation)と表現することで、生まれつき、要するに先天的なものであるとう意思表示を兼ねています。

新潮45は論者が勝手に書いて発表するネットような媒体ではないので校閲があるはずです。校閲の指摘を受けても、あえて「嗜好」を使ったのだと思います。

公平に考えて、同性愛や両性愛がすべて生まれつきだと断言する根拠は乏しいように思います。同時にすべての同性愛者や両性愛者が自分の意思とは無関係だとは断言できません。

現に、日本では衆道は武家のたしなみ(要するに「嗜好」)とされていた歴史があります。「性的嗜好」という表現をしただけで怒られるというのはやや納得しがたいものがあります。

なお、同じ音で「志向」という言葉があります。ある特定の国々との外交関係で”これからは未来志向の関係で・・・”というのをよく聞きます。両国の心を未来に向けていこうという意味なのでしょう。しかし、その国々は舌の根も乾かぬうちに”歴史が~、過去が~”と言い始めます。

これは”我が国の「志向」は未来だけど「嗜好」(=趣味)は過去ですヨ”という意味なのでしょうか?

【言葉】体液

6月21日の朝日新聞の記事より引用します。

長野市内で10代の女性の体を触るなどしたとして、長野県警長野中央署は21日、元長野市議の生出光容疑者(28)=同市伊勢宮2丁目=を強制わいせつ容疑で再逮捕し、発表した。容疑を認めているという。
 生出容疑者は今月5日、1月に他人の自転車のサドルに自身の体液を付着させたとして、器物損壊容疑で逮捕され、その後、容疑を認めて市議を辞職していた。長野地検は21日、生出容疑者を器物損壊の罪で起訴した。
 県警捜査1課によると、再逮捕の容疑は、4月19日午後7時40分ごろ、同市内の路上で、歩いて帰宅していた10代の女性の体をいきなり触るなど、わいせつな行為をしたというもの。被害関係者の届け出を受け、署が捜査していた。
 代理人の弁護士によると、生出容疑者は「被害者や信じて投票していただいた有権者、家族に申し訳ないことをした」と謝罪の言葉を述べているという。
 再逮捕と起訴を受け、生出容疑者が所属していた共産党長野市議団長の野々村博美市議は取材に対し、「許されない行為であり、被害者、市民の皆様に大変申し訳ありません」と話した。
 党県委員会では近く開かれる会合で、党としての処分を決める方針。


体液とはなんのことでしょうか?
広辞苑によれば、

体液:動物体内の脈管または組織間隙を満たすすべての液体。血液・リンパ液・脳脊髄膜液など。


とあります。

つまり、この犯人が自転車のサドルに付着させたのは、血かもしれませんし、リンパ液かもしれません。

しかし、本当は誰もが想像するあの体液をなすりつけたのだとは思います。

なぜこういうあやふやな書き方をしているのかと朝日新聞以外もネットで調べましたところ、読売・毎日・産経も同じ「体液」という表現を使っています。なお、東京新聞・日本経済新聞・あかはたでは事件の記事自体を確認できませんでした。

思うに、新聞記者が語彙をつくして記事ではなく、警察発表をそのまま書いているのでしょう。

コラムなどで言及するの場合であれば下品にならない婉曲表現を使うというのは分かりますが、報道記事は正確さを旨とすべきです。警察が「体液」と言ったとしても、記者は具体的にそれがなんなのかを追求するのが記者の役目だと思います。

【言葉】セクハラ

5月21日朝日新聞朝刊の東京面に「市長への注意 数年前から」という記事が載りました。

市長への注意 数年前から
狛江 セクハラ疑惑で市幹部ら
 狛江市の高橋都彦市長(66)によるセクハラ疑惑で、市長が数年前からセクハラ行為をやめるよう市幹部や市議に注意されていたことがわかった。18日の非公開の幹部会議で、市幹部の1人が発言したという。市長への辞職要求は市議会の一部会派から副市長ら市幹部に拡大し、市長は厳しい立場に追い込まれている。
 複数の市関係者によると、水野穰副市長は市長と市幹部が出席した18日の臨時庁議で、「立場を利用して卑劣な行為を行った」と厳しい言葉で市長に進退を迫った。その後、事実上ナンバー3の石森準一参与が、市長が初当選(2012年)した後の1期目からセクハラを注意してきたと発言。16年の再選後も副市長や自民党・明政クラブの市議とやめるように言ったが収まらず、今回の事態に至ったとし、「職員は誰もあなたを信用していない」と辞職を求めた。市長は明確に答えなかったという。
 疑惑は3月、情報公開請求で入手したセクハラ相談に関する市の公文書をもとに共産党市議が市議会で質問し、表面化した。市は個人情報保護などを理由に加害者とされる人物の役職を黒塗りし、市長は「身に覚えがない」と否定。過去2回の市長選で市長を支えた自民党・明政クと公明党は、その議会で市長の辞職勧告決議案と調査のための委員会設置案を退けている。
 自民党・明政クは共産党より以前に同じ公文書を入手したことが分かっている。今回の庁議での発言から、少なくとも一部の市幹部は数年前からセクハラを認識していたことも判明。市職員組合は4月、「加害者は市長」とする組合ニュースを発行し、「組織内の自浄作用はほとんど機能していない」とした。次の議会は6月4日に始まる予定で、ある市議は「今度は市議会の自浄能力が問われる」と話した。(河井健)


「セクハラ」というのは英語の「sexual harassment」を日本で輸入した際に縮めた外来語だと思います。

この「セクハラ」によって、日本社会で見過ごされてきた悪質な行為がおおっぴらに指弾される流れが生まれました。

「セクハラ」には、強制猥褻にあたる行為から、卑猥な言葉を投げかけるもの、あるいは部下の女子社員にウケをねらった冗談、職場にヌード写真のついたカレンダーを置くことまで幅広く含まれます。

「セクハラ」がいけないとされること自体は間違っていないと思います。しかし、「セクハラ」という言葉があまりにもいろいろな場面で使える便利な言葉のためか、「セクハラ」というだけではどういう行為なのか分からないというきらいがあります

この記事でも狛江市長がなにをしたのかさっぱり分かりません。

新聞記事たるもの、便利な外来語を安易に多用することは控えるべきかと思います。

【言葉】レイプ

5月5日朝日新聞朝刊に『ノーベル文学賞、今年見送り レイプ疑惑 選考機関内紛、混乱 「来年に同時発表」』という記事が載りました。

記事の中身ではなく、「レイプ」という言葉が気になりました。なんで日本語で「強姦」って書けないのでしょうか?

GoogleTrend(https://trends.google.com/trends/)で、「レイプ」と「強姦」を比較してみました。2004年からの情報しか分からないのですが、「レイプ」が「強姦」を圧倒しています。

次に、辞書をひいてみました。
■強姦

暴行・脅迫の手段を用い、または心神喪失・抗拒不能を利用して婦女を姦淫すること。強淫。婦女暴行。⇔和姦。
(広辞苑 第二版)


▽女性を暴力で犯すこと。
(新明解国語辞典 第四版)


▽暴力によって女性を犯すこと。(対)和姦
(角川国語辞典新版)


▽暴力で女性を犯すこと。暴行。⇔和姦。
(旺文社国語辞典 改定新版)


■レイプ
▽(広辞苑 第二版)になし
▽(新明解国語辞典 第四版)になし
▽(角川国語辞典新版)になし
▽(旺文社国語辞典 改定新版)になし

持っている辞書が古いのばかりだからかもしれませんが、どの辞書にも「レイプ」という言葉は載っていませんでした。

なぜ「強姦」でなく「レイプ」が一般的になったのか、分かりませんでした。新聞まで外来語の「レイプ」を使うのは不思議です。

【言葉】綺羅星

「綺羅星のごとく」という言葉があります。これは、「綺羅が星のようにたくさんある」という意味であって、「”綺羅星”のように」という意味ではない、というのが通説です。

このため、”綺羅星”という単語自体存在しないのかと思っていましたが、辞書を引いてみたら、なんと出てきました。

きらぼし「煌星、綺羅星」:(古くはキラホシか)暗夜にきらきらと光る無数の星。
(広辞苑 第二版)


三省堂の大辞林によれば(これは手元にないのでネットで見ただけですが)、「綺羅星」について、『「綺羅(きら),星(ほし)の如し」という言い方から,誤ってできた語』という説明がありました。

もともと「綺羅星」という言葉はなかった、というのは正しそうですが、誤用が始まったのは最近のことでもないみたいです。広辞苑に載っているくらいですからいまさら誤用ともいいきれないかもしれません。

なんでこの話をしたかというと、先日私が口座を持っている東京都民銀行から合併の知らせが届きました。八千代銀行と新銀行東京と合併して「きらぼし銀行」となるとのことです。

誤用っぽい言葉(誤用から始まった言葉)を新しい名前にするというのはちょっと変な感じがしました。

「キラボシ」といえば、アニメ『STAR DRIVER 輝きのタクト』に登場する秘密結社・綺羅星十字団を思い出します。団員は親指・人差し指・中指の三つの指を伸ばし、人差し指と中指の間を片目で覗くポーズをきめ、「キラボシ!」と発声します。団員は条件反射的にこのポーズを返すので、素顔をしらないても互いに同志だと確認することができます。実は、この綺羅星十字団の設立目的は団員に知らされていたものと違う深い陰謀がありました。綺羅星十字団のうさん臭さは「綺羅星」という言葉の出自を考えると腑に落ちるという仕掛けです(私の想像混じりですが)。

その意味で、「きらぼし銀行」も怪しげに思えてしまいます。

そういえば、綺羅星十字団の構成組織のひとつに「おとな銀行」というユーモラスな名前のものがありました。いまからでも「きらぼし銀行」なんてやめて、「おとな銀行」にすればいいのに!
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えいび

Author:えいび
日々の出来事、映画やアニメの感想です。

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