FC2ブログ

【言葉】自明

元総理大臣の村山富市氏が、25年前に発出した「村山談話」を振り返るコメントを出しました。

(略)
 私の後を継いだ、橋本龍太郎首相以降、今日に至るすべての内閣が「村山談話」を踏襲することを明らかにしていますが、それは当然のことと言えます。中国・韓国・アジアの諸国はもとより、米国・ヨーロッパでも、日本の戦争を、侵略ではないとか、正義の戦争であるとか、植民地解放の戦争だったなどという歴史認識は、全く、受け入れられるはずがないことは、自明の理であります。
(略) 



自明とは何かと言えば、

自明:何らかの証明を要せず、それ自身ですでに明白なこと

(広辞苑より)

証明を必要とせずに明白なことなんて世の中にあるのかいな、と思いますが、「自明」という言葉を使いたくなる気分は理解できます。どんな人にも異論はないだろうことだったら、その議論の中での証明は省きたくなります。

しかし、村山氏のこのコメントのような形で「自明」を使うのはどうかと思います。

村山氏にとって我慢ならないことかもしれませんが、日本の戦争を正義の戦争だったと考えている人は一定数います。当然、侵略か正義か分かりかねている中間派もいます。

議論・説得の目的は、中間派を賛成にまわらせ、反対派をせめて中間派にまで引き寄せることです。

したがって、中心議題を「自明」だとして証明しないようでは、広く賛成を得ることはできません。もとからの賛成派は喜ぼせるだけの議論です。
スポンサーサイト



【言葉】亡命

Yahooニュースサイトより引用します。

 不正疑惑で捜査を受けているスペイン前国王のフアン・カルロス1世(Juan Carlos I)がスペイン国外に亡命する意向であることが分かった。同国王室が3日、発表した。
 前国王は息子である現国王フェリペ6世(King Felipe VI)に宛てた書簡で「スペイン国民、国の機関、国王であるあなたに最も良く仕えるという信念に導かれ、今の時点でスペイン国外に亡命するという私の決断を知らせる」と述べた。
 前国王の疑惑に対する捜査はスイスとスペインで行われており、スペインのメディアはサウジアラビアから前国王に渡ったとされる資金の不透明な管理の詳細を頻繁に報じている。
(略)


「亡命」という言葉に違和感を覚えました。この記事だけでなく、多くのマスコミが「亡命」と報じています。

辞書をひくと

亡命:
(1)戸籍を脱して逃げおおせること
(2)政治上の意図で本国を脱出して他国に身を寄せること
広辞苑より


広辞苑は意味の古い順に並んでいます。(1)の意味で使う人はいまではあまりいないと思われます。普通は(2)の意味で、政治的に迫害されたので国外に出るというときに使います。

スペイン前国王の場合は、刑事訴追を逃れるためですので「亡命」というのは正しくないようです。ではなぜ「亡命」と各マスコミが報じるかというと前国王が現国王に手紙でそう書いたからでしょう。

つまり自己申告です。

刑事責任から逃れるために脱出したというとカッコ悪いから息子に”これは亡命だ”と強がっただけです。

社会の木鐸であるマスコミなら、本人の主張は主張として報じても、客観的な事実に基づいた言葉を選らぶべきです。

【言葉】ブラック

朝日新聞の記事『「ブラック企業」に「黒人差別」の指摘 どう思いますか』を引用します。

 働き手にとって問題のある会社を「ブラック企業」と呼ぶことに、異論が出ています。悪質な職場を分かりやすく共有・追及する上で役割を果たしてきた言葉ですが、黒人(Black)などから不快に受け止める声が上がっており、意図はなくても差別を助長しかねないとの指摘も出ています。
(略)
 この言葉を使って労働運動に取り組んできた人たちは、指摘をどう受け止めるのか。劣悪な企業を12年から選出・発表してきた「ブラック企業大賞」の実行委員の一人、河添誠さんは「日本の『黒』『ブラック』という言葉には、黒人差別的な社会的・政治的文脈はない。それに『腹黒い』などの(黒を否定的に使う)日本語も全て変更しないと一貫性がない」と話す。
(略)
 一方、外国人労働者らを支援するNPO「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事は、すでに13年から異論を唱えている。「『ブラック』『黒』に悪いレッテルを貼るのは、使う側の意思にかかわらず差別を拡大しかねず、やめた方がいい。批判すると運動に水を差すかのように思う人もいるが、『問題企業』と表現してはだめなのか」と語る。
 以前、産業廃棄物処理場で働くガーナ人男性が、「夜に黒人が歩くと怖い」との近所からの苦情で残業ができなくなったこともあったという。「日本でも差別や偏見は続いている。差別をめぐる問題は都度ブレーキをかけて立ち止まり考え、受け止めていかなきゃいけない」


なかなか難しい問題ですが、外来語ともともとの日本語は区別する必要がありそうです。

これが「腹黒い」という言葉は差別だからやめろと外人が言ってきたら無視してかまわないと思います。日本語は日本語話者ものものだからです。

しかし、「ブラック」は日本語化したとはいえつい最近は言ってきた外来語です。英語で黒人とは関係なく「悪い」という意味で使ってきたのは確かですが、それを今やめようとしています。もう日本語化したのだから知りませんと言えるのかどうか微妙なところです。

ただ、日本語の「ブラック」は「黒色」や「悪い」という意味で使われていて、決して「黒人」という意味はもっていません。英語に流暢でない日本人に「ブラック」を「悪」という意味で使うのは人種差別だ、といってもピンとこないのも事実です。

こうすればいいと簡単に答えは出せませんが、あえて言うなら軽々に外来語を使用するのは控えるべきだということは言えます。

【言葉】手がかり・足がかり

7月7日の朝日新聞で、衆議院議員・無所属の中村喜四郎議員が、「投票率10%UP」を目指す署名活動を推進しているとの記事を載せています。投票率UPと言っていますが、実のところ野党の後援者集めのようです。

(略)
当面の目標は、自民党の党員数に並ぶ109万人に設定。1カ月ごとに中間集計を行い、各議員が競い合う形をつくる。 運動の事務総長を務める中村氏は当選14回。自民党を離れて無所属となっても小選挙区で勝ち続けている。野党議員には地道な地元活動が不足しているとみており、「この運動が新たな後援会組織をつくるための大きな手がかりになる」と訴える。 枝野代表も今月1日の記者会見で、「野党の連携を強め、さらには特に若い議員らの選挙の足腰を強くし、国民に呼びかける大変有意義な活動」と語った


気になったのは「手がかり」という言葉です。私の感覚では「足がかり」と方がしっくりきます。辞書をひいてみました。

てがかり:
(1)体をささえるため、手をかけるところ。転じて、物事を始める、または解決するいとぐち。「---も足がかりもない岩場」「犯人の---をつかむ」
(2)手近な所。また、弓・鉄砲の射程内のあること

あしがかり:
(1)高い所へ昇るとき、足をかける所。足場。「---がない」
(2)事を着手するいとぐち。拠点。「出世の---を作る」

(広辞苑)

このように「手がかり」には「物事を始める、または解決するいとぐち」という意味があるので中村氏が間違っているというわけではないようです。しかし、これだと、今まで野党議員が後援会組織づくりをまったくやっていなかった(=ゼロからのスタート)、といった感じになっています。

その点、「足がかり」なら、より高いところに昇るための足場、という意味なので、今までも後援会づくりはしていたけど、この運動でさらにたくさんの人を集めるんだよ、という雰囲気が出ます。

誤用とは言えませんが、「足がかり」の方が適切だと感じました。

ところで、投票率UP、といった目標は結構だと思って署名しちゃうと、後から電話だのがあって後援会に誘われちゃうのでしょうか? それってめんどくさいですね。

【言葉】前広

朝日新聞の記事を引用します。

 安倍晋三首相は29日の衆院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた学校の「9月始業」について「社会全体に大きな影響を及ぼすので慎重に、という意見もあることは十分承知しているが、これくらい大きな変化がある中においては、前広に様々な選択肢を検討していきたい」と述べた。
(略)


「前広」ってなんだ、と思っちゃいました。ネットで調べてみたら安倍首相のこの発言がほとんどを占めていました。一般人が普通に使う言葉ではないみたいです。私もおそらく初めて聞きました。

広辞苑をひいてみると

前広:以前、まえかた。
前広に:あらかじめ、前以て


ということでした。

ただ、それだと安倍首相の使い方には疑問を感じます。どんなものでも「検討」するのは「前以て」です。その時になって検討したって仕方ありません。

となるとここでの「前広」はどういう意味なのでしょう。「前向きに検討します」(=やりません)の言い換えなのかもしれませんね。

sidetitleプロフィールsidetitle

えいび

Author:えいび
日々の出来事、映画やアニメの感想です。

sidetitle最新記事sidetitle
sidetitle最新コメントsidetitle
sidetitle最新トラックバックsidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitleFC2カウンターsidetitle
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleRSSリンクの表示sidetitle
sidetitleリンクsidetitle