【言葉】失笑

6月14日朝日新聞朝刊の「特派員メモ」。守真弓特派員の『容姿」発言の波紋 @シンガポール』より

 「私たち3人には共通点がある。みんな女性で、同世代。そして、全員がグッドルッキング(美しい)!」
 稲田朋美防衛相が共に壇上に上がったオーストラリアとフランスの国防大臣に目をやり、こんな「冗談」を言った時、会場で取材していた外国人の記者たちが目を見合わせた。仏豪の両大臣も、心なしかこわばった表情に見えた。
 3日、シンガポールで開かれた「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」での演説。フランスのルモンド紙の女性記者は「大臣の容姿の善しあしなんて誰も気にしていない。女性である大臣自身が、女性差別的な発言をしたのに驚いた」。
 容姿の優劣で女性の価値をはかるような物言いは、世界では不適切とされる風潮にある。この日の夕食会でも、稲田氏の「グッドルッキング」発言は「奇妙だった」とひとしきり話題になったそうだ。
 「講演のほとんどは棒読みだったが、あの一文だけは実感がこもっていた。冗談としては面白かった」(英国紙の男性記者)という声もある。確かに会場には笑いが起きたが、失笑も入り交じっているように見えた。(守真弓)


私も長いこと間違っていたのですが、この「失笑」の使い方は誤用だと思います。辞書をひいてみます。

おかしさに耐えきれず、ふきだして笑うこと。
広辞苑


あまりのおかしさに、思わずふき出してしまうこと。
岩波国語辞典


思わずふき出してしまうこと。「---を買う(=自分としてはまともな言行のつもりなのに識者(相手)からはとんでもない事だとして笑われる)」
新明解国語辞典


本来的には「失笑」には馬鹿して笑うという意味はないようです。

「失笑」そのものではなく「失笑を買う」ですが、新明解国語辞典の説明では、馬鹿にして笑われる、という説明になっています。

「失笑」なら肯定的な笑いだけど、「失笑を買う」となると否定的な笑いになるということなのでしょうか。

そこまで複雑なのだとすると、「失笑」の誤用が新聞記者にまで広まるというのも無理はないかもしれません。

それはともかく「失笑」という言葉が肯定的な意味の笑いだと理解しても、例えば

「先週のあなたの講演には失笑しましたよ。アハハ。」

などとは、とても言えません。絶交されちゃいそうです。
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【言葉】見本

6月12日朝日新聞夕刊に「線路転落!? どう声かける?」という記事が載りました。引用します。駅員が視覚障害者へなんと声をかけるのかという模索を紹介しています。鉄道各社が視覚障害者への配慮を真剣に考えることが伝わり、よい記事だとは思いますが、ひっかかるところがありました。

 視覚障害者らの線路転落事故を防ぐホームドアの設置が進まない中、「声かけ」の重要性が増している。具体的にどう接し、どう言葉をかければいいのか。鉄道各社は駅員に対する教育を進めている。乗客への見本になり、街に広がればと考えている。
(略)


「見本」に引っかかりました。念の為に辞書をひいてみました。

ある商品・製作品の品質・意匠・効用などを知らせるために、その中から少量を取り出して、示すもの。
(広辞苑)


(ある類のものの)全体の質や状態を推し測らせるために、その中から取り出して示す一部分のもの。「---市」
(岩波国語辞典)


一)全体の質・状態の実例の代表として人に知らせるための現物(模造品)。サンプル。「商品---・新切手の---」
二)代表例。「かれは不良の---だ」
(新明解国語辞典)



どの辞書をみても、「見本」は全体を代表する例(つまりサンプル)という意味であり、「街に広がれば」という意味の良いもの、という意味合いはありません。「不良の見本」などと悪いものにも使っています。

「乗客への手本になり、街に広がればと考えている」と「手本」を使えば日本語としてしっくり来ます。

しかし、新聞の記事は何重もの校閲がかかっているはずで、見落としがあるとは考えにくいです。

もしかしたら「手本」を使うと偉そうに聞こえるという危惧があったのでしょうか。

【言葉】「シカト」

5月7日朝日新聞朝刊。経済面。アジア開発銀行の特集記事です。その中に、編集委員・吉岡桂子氏のコラム「対等な協力へ実験場」を取り上げます。

 ADBのメンバーのうち、AIIBに入る意思を一度も示していないのは、主要国では日本と米国だけである。台湾は条件で折り合わず、宙に浮いた状況だ。いずれも、経済よりも安全保障面での対立に由来する。
 この事実が示すように、国際機関は開発銀行とはいえ、鋭く政治性を帯びる。米国はオバマ政権時代、英国を皮切りに各国がAIIBへの加盟へと動いた2015年3月、ルー財務長官(当時)を北京に派遣した。李克強首相との会談で、表面的かもしれないが、協力を約束している。
 経営の不透明さなどAIIBの問題点をもっとも正しく批判してきたのは、日本かもしれない。同時に「シカト」を決め込んできたのも、日本だけ。トランプ政権下でのAIIBを含む米中の取引外交のゆくえに、やきもきしている。
(略) 



「シカト」というのは「無視」という意味で、ヤクザの隠語を語源として、不良少年から一般に徐々に広まりつつある言葉です。しかし、現時点では、正式な場面で使えるような言葉ではありません。

こういう隠語を、インタビュー記事で載っているのを見たことがあります。しかし、それはインタビューを受けた側(一般人)がしゃべった言葉であって、新聞記者が使ったものではありません。

この記事で、新聞記者が「シカト」という言葉を使ったのを初めて読みました。カギ括弧付きにしているところをみると、美しくない言葉であることは分かっているようです。しかし、あえてカギ括弧をつけてまでこの言葉を使う理由がありません。普通に「無視」とか「黙殺」と書けば済むところです。どうしても「シカト」という言葉を使いたかったのでしょうか。

はっきり言って、吉岡桂子氏は品がないです。

【言葉】お若いですねー

年寄りが年齢を言った場面で、お世辞なのか、「お若いですねー」と返すのをしばしば見ます。

よく考えるとちょっと変です。このやりとりを心の中も含めて再現するとこうなります。

若者:お爺さん、何歳になるんですか?(70歳くらいかな?)
老人:今年で82歳になります。
若者:えっ、お若いですねー(えっ、見かけより年寄りなんだなー)

言葉は「お若いですねー」ですが、内心は「年寄りなんだなー」と真逆です。

では、何故これが失礼にならないどころか褒め言葉になるのかいうと、こういうことだと思います。

実年齢で歳をとっているのはいかんともしがたいことですし、時代や文化によっては高齢であることは誇らしいことでもあります。その反面、よぼよぼして元気がないのは、多分どういう文化でも喜ばしくないのでしょう。

「若い」という言葉には、実年齢の老若を示す意味と、元気のありなしを示す意味の二つがあり、実年齢より元気に見える、ということで、「お若いですねー」という言葉で、褒め言葉になってます。

そして、それは現代の日本が、実年齢で歳をとっていることを喜ばない文化になったということを示しています。

江戸時代だったら、実年齢より元気な年寄りには「丈夫ですねー」とか「かくしゃくとしてますねー」とは云っても、「お若いですねー」とは云わなかったのだと思います。

【言葉】元(もと)

朝日新聞の記事より引用します。

プロ野球・巨人の投手らによる野球賭博事件で、賭博開帳図利幇助容疑で逮捕された笠原将生容疑者(25)が、警視庁の調べに「1試合最大で100万円程度賭けた」と説明していたことが、捜査関係者への取材でわかった。
(略)


記事内容については特別な関心はありません。興味をもったのは「元投手」という言葉です。

「元投手」と聞くと、投手だったのが内野手か外野手かにポジション変えをしたように思ってしまいます。投手のまま引退したというのであれば、「元プロ野球選手」とか「元巨人軍の投手」といった書き方ならまだ分かります。

しかし、それでも足りないところはあります。

野球賭博に手を染めたのが現役の野球選手時代で、逮捕された時点で引退していたから「元」なのか、引退後に野球賭博をして捕まったから「元」なのか、はっきりしません。

どちらも違法賭博なので悪いことなのですが、現役選手がやったとなると意味が違います。

明確に区別がつく言葉が欲しいです。

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えいび

Author:えいび
日々の出来事、映画やアニメの感想です。

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