【本】心は実験できるか   著:ローレン スレイター

前に、このブログでローゼンハンの実験に関する勝間和代氏のコラムを取り上げ、実験には不備を指摘しました。これです。ただ、もしかしたら勝間氏の紹介のしかたに問題があるのであったのでは、という疑いが残っていました。そこで、この実験を取り上げている資料を探していて、この本にたどりつきました。

全部で10章ですが、読んだのはローゼンハンの章だけです。

問題の実験の箇所を引用します。

これから三ヶ月のあいだ、不特定の数の偽患者を送りこみ、病院側で判定してもらう、とローゼンハンは述べた。前の実験の逆バージョンで、狂気を診断するのではなく、正気を診断してもらうのである。一ヶ月が過ぎ、二ヶ月が過ぎた。三ヶ月の期間が終わったとき、病院側は、高い確率で四一人の偽患者を見破ったとローゼンハンに報告した。ところが実際は、ローゼンハンは一人も偽患者を送っていなかったのである。判決は下った。試合終了。精神医学は恥じ入るばかりだった。


繰り返しますが、病院が診察した患者が本当の患者か偽患者かを検証しないかぎり、ローゼンハン博士の勝ちにはなりません。あえていえば、偽患者を一人も送り込まなかった博士の不戦敗です。

勝間氏が、これを種本にしていたのだとすると、割愛して紹介したということはありませんでした。正確に伝えてくれています。ただし、この実験の不備に気がつかなかったのは、ひどく不思議な気がします。

スポンサーサイト

【朝日新聞】「殺される前に殺せ」教師が点字文章配る 甲府の小学校

「殺される前に殺せ」教師が点字文章配る 甲府の小学校
11月28日朝刊

小学校4年担当の教師が「殺される前に殺せ」「命を狙われている」という点字の文章を生徒に翻訳させた、という記事がありました。

甲府市の市立小学校で9月、4年生担任の40代の男性教師が、国語の授業で「殺される前に殺せ」という点字の文章を配り、児童らに翻訳させていたことが分かった。教師は「授業に集中させるためだった」と説明しており、校長とともに児童の各家庭を訪ねて謝罪したという。
 市教委によると、男性教師は9月上旬、点字を記したプリントを担任する児童30人に配布。スパイが暗号を解読するという設定で、「命を狙われている」「殺される前に殺せ」という文章を訳させた。
 10月下旬、保護者から指摘を受けて学校側が確認したところ、教師は「児童の興味を引こうと、刺激的な文章を使ってしまった。不適切な内容だった」と話したという。
 市教委は、謝罪済みなどの理由で処分を見送る方針。同市の長谷川義高教育長は、取材に「配慮を欠いており、目が不自由な人にも失礼だ」と話した。


苦情を言われると、教師としては謝らざるをえないのでしょうが、具体的な被害はどこにもありません。各家庭をまわって謝らせるのは、やりすぎてです。

同市の教育長の、「目が不自由な人にも失礼だ」という発言にいたってはまったく理解できません。少々不道徳な文章を小学生に渡したのは、うかつと言えばうかつです。しかし、点字そのものは決して神聖なものではありません。スパイ小説でも官能小説でも、点字であらわすことは可能です。「目が不自由な人にも失礼だ」というのは、的外れな意見です。

【本】「正社員からの転落 下流ライフ残酷物語」 著:高崎ケン

本の帯部分に、次のようにあります。

正社員を辞めたら地獄が待っていた!
一流大学を出て、一流企業に就職するも夢を追いかけて退社!
しかしその後に待っていたのは、屈辱に満ちた転落人生だった・・・・・・


題名や帯の文句をみると、出版社の狙いは、正規労働者と非正規労働者の格差を描くことにあるようです。私も、現在の雇用情勢をうかがい知ることのできるかと思って読みましたが、そういうものではありませんでした。

夢を追いかけては映像関係に転職、お金がなくなっては稼げるところに転職、というのを繰り返し、まるで破滅型作家の私小説みたいな感じの本です。具体的な収入・支出、職についた期間、就業時間、といったデータがあると社会の断面を知るのに役立つのですが、著者の興味は、もっぱら自身の内面にあったようです。

【朝日新聞】異議あり:Naoto Kan? Kan Naoto!

和歌山大学の江利川春雄教授が、西洋語で日本人の名前を名-姓の順にひっくり返すことに反対意見を述べています。「自分のアイデンティティに一番かかわる名前について自覚的に対応す」べき。特に政治家が名-姓で名乗るのは「向こうのヘゲモニー(主導権、覇権)を認めたことにな」る、との主張です。

基本的には同意します。一部気になったのは、欧米社会で暮らす日本人も姓-名の順を守るべきなのかどうかという点です。アイデンティティやヘゲモニーの論議も結構ですが、そこまで姓-名にこだわると毎日が不便では、という気がします。

日本社会で暮らしている日本人が西洋語で名乗るのは姓-名の順の方がよい、というのには異議ありません。

そこまではよいのですが、江利川教授は、自説を補強するために暴走ぎみに論を展開します。姓と名の順番などを問題としてとらえること自体がおかしい、という意見に対して、

自分の名前を大事にできない人は、他人の名前も大事にできないでしょう。あえて言えば、戦前の日本が朝鮮半島でやってしまった「創氏改名」も、名前の持つ意味をあまりにも軽々しく考えてしまったからではないでしょうか


つまり、「自分の名前を大切にしない = 名-姓にする」→「他人の名前を大切にしない」→「朝鮮半島で創氏改名政策をした」という流れです。

問題は二点あります。

第一に、論理に飛躍がありすぎです。西洋人の名前を日本語であらわす際に姓-名にしたわけではありませんから、「自分の名前を大切にしない = 名-姓にする」→「他人の名前を大切にしない」は直接つながっていません。「他人の名前を大切にしない」→「朝鮮半島で創氏改名政策をした」も飛躍しすぎです。政治上の政策はもっといろいろな理由でなされたと考えるのが常識です。

第二に、論議がわかれているもの(この場合は「創氏改名」)を論拠にしたことで、不必要に敵をつくっています。いくらよい主張をしても、本論と関係ないところで、味方になってくれるかもしれない人を敵に追いやるのは賢明ではありません。


※創氏改名については、wikiで、さまざまな説が紹介されています。

【展覧会】「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展

「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展
於:サントリー美術館

版元の蔦屋重三郎が関わった浮世絵・掛け軸・黄表紙などの展示です。単なる版元というより、「プロデューサー」と呼ぶべき人物なので、実にさまざまなことに関わっていたことがうかがい知れました。

祝日なので相応に混んでいましたが、くたくたに疲れる程ではありません。西洋絵画の展覧会より年配の方が多いようにも思いました。

版元である蔦屋重三郎に焦点をあてたため、展示作品としてはやや散漫になった感じです。ただ、蔦屋の店を再現は興味深かったです。思ったよりも小さな店でした。

江戸文化に興味がある人にはおすすめです。

【朝日新聞】勝間和代の人生を変える「法則」(11月20日 be on Saturday)

精神分析学に「ローゼンハン実験」という有名な実験があるそうです。この実験から得られる教訓を、経済評論家の勝間和代氏が解説しています。

腑に落ちない部分がありましたのでコメントします。ただし、実験の経緯は、あくまで勝間氏の説明に基づきます。実際の実験はこれと異なっている可能性はあります。

引用します。

精神分析学に、「ローゼンハン実験」という有名な実験があります。
これは、1973年に米国の心理学者のデービッド・ローゼンハン博士が友人7人を募り、8人で12の病院に「幻聴が聞こえる」と訴える偽患者を装って診察を受けに行ったところ、診療にあたった医者がそれを詐病と見抜けず、全員入院させられて、薬物治療を受けることになったというものです。
この実験は、医学会から大変な反論と反響がありました。


この実験に続けて、ある病院とローゼンハン博士の間で勝負がありました。

ある病院は、偽患者はかならず見分けられると主張し、ローゼンハンに、好きなだけ偽患者をよこせと勝負を挑みました。
じつはこのときもローゼンハンの完勝でした。なぜなら、この病院は、3ヶ月で診察した193人の患者のうち、41人が偽患者だと見抜いたと発表しましたが、なんとローゼンハンはこの病院に一人も偽患者を送りこんでいなかったのです。


間違っています。ローゼンハン博士の完勝ではありません。実際に41人は詐病だったのかもしれません。もしかしたら残りの152人も詐病だったのかもしれません。患者なのか詐病なのか検証していない193人のうち41人を偽患者だと発表しても病院の負けではありません。正しくは、偽患者を一人も送り込まなかったローゼンハン博士の不戦敗です。

【朝日新聞】耕論:世論調査は悪者か(11月19日 朝刊)

埼玉大教授の松本正生氏が、世論調査について「酷使されすぎ 頻度抑えよ」主張しています。

基本的には、「それ(世論)を最も客観的にとらえているのは、新聞社や通信社がおこなってきた世論調査だと思います」としていますが、続けて「率直に言って、いまの世論調査は酷使されすぎています。大きな出来事があるたびに調査がおこなわれ、政治家が結果に一喜一憂、右往左往している。」「与野党とも世論調査で足を引っ張られまいとするあまり政治に余裕がなくなった。長期的視野で政策を打ち出し、国民に働きかけるのが政治の役割なのに、本末転倒です。」そして、最後に「世論調査という「公共財」の品質確保のため、調査の頻度を抑えるなどの自制が必要でしょう。」と、頻度を下げることを訴えています。

賛同できません。第一に、民間であるマスコミがやっていることを規制する方法がありません。第二に、政治家が「右往左往」するのは、世論調査のせいというより、選挙があるためです。選挙をしないのなら、政治家は支持率が低くても気にしないでしょう。もしかしたら「長期的視野で政策を打ち出」せるかもしれません。しかし、それがよい社会のありかたとは思えません。世論調査のせいで政治家が長期的視野をもてないのではなく、力量のない政治家が世論調査に振り回わされているとみるべきです。

同じ「耕論」で民主党幹事長代理の枝野幸男氏が、「自分自身は、世論調査の数字を、一定の距離を保って眺めています。肌で感じる世論と世論調査が食い違うときは、どうしてそうなるかを考えるようにする。より深い世論の在りかたがわかります。」と述べています。こちらの意見の方が納得できます。

【朝日新聞】社説:海保映像問題―まだ流出の真相が見えぬ 11月17日

11月17日の朝日新聞社説より

前半は、海上保安庁の情報管理についての苦言です。気になったのは後半部分です。

海保への疑問が増す一方で、保安官の行為を支持する声が一部に広がっている。安倍晋三元首相がメールマガジンで、「勇気をふるって告発した保安官」を励ましたのはその一例だ。
 だがこれはおかしい。政府の方針が自分の考えと違うからといって、現場の公務員が勝手に情報を外に流し始めたら、国の運営はどうなるか。


一般論としては、異論はありません。映像を流出させた当人さえ、規律違反であることは認めています。しかし、問題とすべきなのは一般論ではなく、この事例の当否です。社説は次のように述べています。

保安官の行いは、法律で保護される内部告発の要件を満たしてもいない。称賛したり英雄視したりするのは間違いだし、危険なこと甚だしい。保安官は「一人ひとりが考え判断し、行動してほしかった」との声明を出したが、いったい何を意図したものか。


「要件を満たしてもいない」というのは公益通報者保護法が、通報対象事実を重大な法令違反行為に限っていることを指しているのだと思います。しかし、ここで問われるべきは法律の解釈ではなく、倫理の問題です。まさか、朝日新聞は内部通報保護の法律ができるまでは内部告発そのものを悪、と考えていたわけではないでしょう。法律の要件を満たしていないから「間違いだ」というのは短絡的です。

社説は続けて、内部告発に関する考えを述べます。

朝日新聞は国民の知る権利の大切さを唱えてきた。だが外交、防衛、治安情報をはじめ、すべてを同時進行で公にすることがその中身ではない。
 情報の公開とそれに基づく討議は民主主義に欠かせぬという認識を互いに持ち、ケースごとに全体の利益を見すえて公開の当否や時期を判断する。この積み重ねこそが社会を鍛える。


もっともらしいことを述べています。しかし、この尖閣ビデオ流出の事例を「全体の利益を見すえて公開の当否や時期を判断」した結果、どう考えたのかが語られていません。これでは無責任な批判としか言いようがありません。

(略)
まだ真相が見えない。捜査を尽くし事実を解明する。それが、ネット時代の情報の公開や保全のあり方について冷静な議論を進めることにつながる。


話が、「ネット時代の情報の公開や保全のあり方」に飛んでしまいました。たまたま今回はネットを使ったというだけであって、既存のマスコミに持ち込まれた可能性もありました。仮に、朝日新聞にこのビデオが持ち込まれたらどう扱うか、という視点がまるでありません。

ネットへの対応意識からか、あるいは中国に対する思い入れのせいか、冷静さを欠いた社説だと思います。

【朝日新聞】悩みのるつぼ:30代の彼と別れられません

11月13日 朝日新聞のbe on Saturdayに「悩みのるつぼ」という人生相談のコーナーで、以下のような相談が載りました。

30代の彼と別れられません  質問者 主婦 70歳

70歳になった主婦です。10年前から現在30代半ばの美容師と出会い、付き合っています。
彼は20代で店長になったやり手で、現在は複数店舗を経営するような立場になりました。
最初はとても純情で、本当に好きでした。週1回デートし、その度に服やアクセサリーを買ってあげ、誕生日には10万円以上のプレゼントをしました。彼への贈り物は年間250万円から300万円になります。
彼には彼女が2人くらいいたのですが、この7年ぐらいは誰もいません。1人でローンでマンションを買って住んでいますが、いくら頼んでも部屋に連れて行ってくれません。
また車が故障したとかで27万円貸しましたが、給料日に少しずつ返すと言っていたのに知らぬ顔です。2人はキスまでの関係でそれ以上はありません。
私には70代のすばらしい夫がいて、何もほかに求めることもないのに、その彼とても美しくて、見ているとときめきます。彼の美容院には今は1時間半かけて週1回通っています。電話もしてこないし、買い物ばかり行きたがるし、不満だらけなのに別れられません。2人の間にもう親密さが出来てしまって、彼から断られない限りは、どうしても切れません。
私は50代に見えます。やはりこんな彼とは離れたほうがいいとは思っていますが、どうすればよいでしょうか。


普通人の感覚からして異様な状態です。30台のボーイフレンドとデートを重ねている70台女性にはあきれますが、70台の女性から年間200~300万の貢ぎ物を受け取っている男にも驚きます。

「どうすればよいでしょうか」って、縁を切ったほうがいいに決まっています。たいていの人間がそう考えるでしょう。ところが、社会学者の上野千鶴子氏の回答は次のものでした。

きみペこと「きみはペット」というまんががあります。20代後半のキャリアウーマンのところにころがりこんできた若者を、ペットのように飼う、というお話です。
あなたは70代、お相手は30代。この年齢差で異性のペットが飼えるなんて、男女が逆ならあるかもしれませんが、人も羨む話ではありませんか。相手をペットだと思えば腹も立ちません。主婦とは言いながら、年間にペットに使うお金が200万も300万もあるなんてうらやましい。ペットは餌をくれるあいだだけ、ご主人さまのところに居着きます。あなたはそれを知っているから、餌代を惜しまないのですね。錦鯉に何百万円も投じる人もいますし、保険のきかないペットの医療費に何十万も使う人もいるのですから、少々維持費が高くつくペットと思えばよいでしょう。
そもそもペットというのは、見て楽しみ、そばにおいて喜ぶ以上になんの役にも立たないものです。ペットに見返りを求めてもムダなだけ。あなたが彼と性関係を求めるわけでもなく、今の結婚を解消して彼と再婚したいわけでもなく、時々会ってその美しさを愛で、ご自分のヘアケアやエステをかまってもらい、それだけのおカネを使っても家計が破綻せず、サラ金に手を出すわけでもなく、夫とトラブルが起きず、それが暮らしのうるおいになっているなら、おやめになる理由はなにひとつありません。しかも相手の男性は、キス以上の関係を持とうとせず、愛人がいることも隠さず、自分の家に招かず、結婚をちらつかせてあなたにいたずらな期待を持たせず、ホストのように際限なく貢がせてあなたを経済的に破綻に追い込むこともなく、その程度には無心の額にも節度を持っているふしがありますから、「婚活」詐欺ってわけでもありません。
でもあなたは、苦しんでおられるのですね? こんな関係はやめたほうがよい、と。あなたはきっと、相手に見返りを要求したくなったんですね。使った金額をこんなにいちいち覚えているのはそれが投資だと思えばこそでしょう。投資というのは回収を予期したおカネ。で、あなたは彼から何を回収したいのですか? セックス? 愛情?ペットの飼い主であるための条件は抑制と寛容、すなわち支配者の徳です。それが持てないなら飼い主の資格はありません。


まず、二人の関係を肯定しつつ、見返りを求めているなら関係を止めよ、という意見です。相談者の打ち明け話に負けずおとらずぶっ飛んでいます。なぜこのようなおかしなことを言うのか考えてみました。

関係を肯定する根拠の核心部分は次のところです。

この年齢差で異性のペットが飼えるなんて、男女が逆ならあるかもしれませんが、人も羨む話ではありませんか。


つまり、70台の男が30台半ばの女を金で自由にしているとすれば男社会では羨ましがられるはず。だったら、男女を逆転した場合も羨ましがって当然、という論理です。

しかしこれは間違っています。確かに、70際の男が30台の女を金で体を自由にしていれば、男同士の内輪では、羨ましい、という感想が出るかもしれません。しかし、金だけ貢いで「キス以上の関係を持」てないでいるなら、馬鹿呼ばわりされることは必至です。正確に男女逆転して考えれば、羨ましい、という結論にはなりえません。

続けて上野氏は、見返りを求めるならペットを飼う資格がない、と主張しています。しかし、二人の関係をペットと飼い主に見立てたのは上野氏であって、誰も同意していません。人間関係でお金が行き来するのですから見返りを求めるのはあたりまえです。ペットを飼うのと同じだから見返りを求めるな、というのは上野氏の暴論です。

要するに、上野氏の回答は次のようにまとめられます。まず、性差に対する意識の違いに皮肉をこめて肯定します(ただし、上述したように正確に男女逆転していないのでこの判断は間違いです)。しかし、いかに上野氏といえでも普通に考えてみれば、この女性のやっていることはおかしいと思うので、理由にならない理由をあげて否定に転じました。

人生相談のコーナーが相談者に対する回答を離れ、回答者の独演会になるというのはありがちです。しかし、これは行き過ぎているように思います。

【映画】インシテミル 7日間のデス・ゲーム

ネタばれありの感想です。

冒頭の雰囲気は緊張感がみなぎっていて良かったです。しかし、後半で失速します。出演した役者さんたちは熱演だったのに残念な作品でした。

骨格となる設定は次の通りです。
・この舘の出来事を一般に放映して運営している。つまりリアルタイムショーである。相当数の視聴者が存在している。
・今回のゲームは最低でも2回目である。前回も死者が出ている。
・今回の参加者は、これがリアルタイムショーだとは知らない。何かの実験目的で集められたと思っている。

今回の参加者は、このゲームが放映目的だと知らないのは不自然です。一般人が観ているのですから秘密ではないはずです。しかも今回が初めてのゲームではありません。

また、社会の枠組みの中で運営している以上、死者が出た段階で中止になるはずです。こうした殺人ゲームを許すような暗黒社会だという様子はうかがえません。我々の暮らす社会と同じかその延長にある社会のように思えます。それなのに実際に死者がでても中止にならないのも不自然です。

こうした無頓着さが、後半になって作品から緊張感を奪ってしまいました。

【朝日新聞】耕論:流出(11月12日 朝刊)

11月12日の朝日新聞の朝刊、耕論のコーナーで、尖閣ビデオの流出問題について4人が意見を述べています。

このなかで、作家の佐藤優氏がビデオを流出させた人物への同情や称賛を戒めています。理由の第一は、すべての映像データを公開していないこと。つまり何らかの意図が紛れ込んだ可能性がないとは言えない点。第二に、歴史の教訓に学んでいない点。ここでは、五・一五事件に世論が同情的だったことが後の二・二六事件につながったことを挙げ、海上保安庁など武力を保持した役所には厳しいモラルが必要だとしています。その上で、本来はまず上司に公表を求め、それがいれられない場合は辞職して公開すべきだった、と主張しています。

この意見には賛同できません。

第一の理由を受け入れると、すべての映像にアクセスできない限り内部告発はできない、ということになります。都合のいい情報だけを流出させていると考えたのなら、そこで批判すべきであって、すべての映像を公開しなければはじめからダメ、というのは無意味に内部告発のハードルを上げているだけです。

次に第二の理由です。武装している海保職員には厳しい規律が求められるという点は同意します。しかし、暴力を行使した五・一五事件をビデオ流出と同じに考えるのは無理があります。今回の件をクーデター呼ばわりするのは実態に即していません。

また、辞表を提出してから流せという意見は、事実上内部告発を止めよ、と言っているのに等しいものです。

この海上保安官は、みずから名乗り出た時点で、職を失うことや有罪になることも覚悟したことでしょう。その覚悟に比して、佐藤氏の批判はやや軽々しいように思います。

【朝日新聞】ひと:台湾花博にも招かれた「万博おばあちゃん」

11月11日の朝日新聞のひと欄で、上海万博に一日も欠かさず通った日本人女性(61)を実名・写真付でとりあげています。この女性は2005年の愛知万博でも毎日通ったそうです。中国首相の閉会の演説に登場したり、台北の「花博」に招待されたり、とほめたたえています。ひと欄は基本的に「すばらしい人」を紹介するコーナーですので、この記事もそれに沿ったものです。

一部を引用します。

上海ではマンションを借り、39度の熱が出ても、教師を退職して同行した長男のxxさん(37)と一緒に通った。5年間に使った費用は約1200万円にものぼる

※長男の名前は伏せ字にしました。

なにやら美談めいた紹介をしていますが、普通に考えればおかしな人にしか見えません。37歳の息子はいたっては、なにを考えて教師を辞めたのか、あきれるばかりです。自分の人生をまじめに考えているとは思えません。

もちろん、マニアックな性格の人間というのはどこでもいます。他人に迷惑をかけないかぎり非難されるいわれはありません。その意味では、この親子をせめようとは思いません。しかし新聞がこれを美談として紹介するのは間違いだと思います。



【新聞】朝日新聞社説:尖閣ビデオ流出―冷徹、慎重に対処せよ

11月6日の朝日新聞に、尖閣諸島での海上保安庁の舟と中国漁船の衝突時のビデオが流失したことに対する社説が載っていました。ここ

まず、政府の情報が流出したことに対する懸念を表明しています。

もとより政府が持つ情報は国民共有の財産であり、できる限り公開されるべきものである。政府が隠しておきたい情報もネットを通じて世界中に暴露されることが相次ぐ時代でもある。
 ただ、外交や防衛、事件捜査など特定分野では、当面秘匿することがやむをえない情報がある。


基本的には政府の情報は公開すべきだが、外交・防衛・事件捜査などの特定分野では秘匿もやむをえないものがある、との主張です。

ここで思ったのですが、これは、仮にこのビデオがYouTubeでなく朝日新聞に持ち込まれたら、握りつぶした可能性がありますよ、と言っているのと同然です。今回の情報を流出させた人にとってはYouTubeを使ったのは正解だったようです。

さらに社説は続きます。

流出により、もはやビデオを非公開にしておく意味はないとして、全面公開を求める声が強まる気配もある。
しかし、政府の意思としてビデオを公開することは、意に反する流出とはまったく異なる意味合いを帯びる。短絡的な判断は慎まなければならない。
中国で「巡視船が漁船の進路を妨害した」と報じられていることが中国国民の反感を助長している面はあろう。とはいえ中国政府はそもそも領有権を主張する尖閣周辺で日本政府が警察権を行使すること自体を認めていない。映像を公開し、漁船が故意にぶつけてきた証拠をつきつけたとしても、中国政府が態度を変えることはあるまい。

(中略)

ビデオの扱いは、外交上の得失を冷徹に吟味し、慎重に判断すべきだ。



もはや秘匿する意味はないのだから全面公開をせよ、という意見に対し、政府の判断で公開するのは政治的意味合いが付加されるので、慎重に判断すべき、と主張しています。要するに、公開するな、ということです。しかし、公開すべきでない具体的な理由は一切あげていません。それどころが公開しても「中国政府が態度を変えることはあるまい」とまで言っています。

邪推まじりですが、日本政府が秘匿し続けることが中国政府への忠誠の証し、とでも考えているのでしょうか。実に、不可解な社説だと思いました。







【新聞】尖閣諸島問題ビデオ公開への日本共産党のスタンス

11月2日の朝日新聞に朝刊に尖衝突諸島での海上保安庁と中国漁船の衝突時のビデオ映像をみた国会議員のアンケートが載っていました。この中で日本共産党の議員の答えに注目しました。

質問は次の二問です。

問1:ビデオを公開すべきか(○・・公開すべきだ、×・・公開すべきでない、△・・どちらとも言えない)
問2:中国人船長を処分保留で釈放した那覇地検の判断は正しかったか(○・・正しかった、×・・間違っていた、△・・どちらとも言えない)

日本共産党の議員三名の回答は次のものです。

衆院 笠井亮 △△ いずれも政府の責任と判断で決めることだ
衆院 赤嶺政賢 △△ いずれも政府が様々なことを判断して決めることだ
参院 大門実紀史 △△ 公開は慎重に。あおるだけになっちゃう。

なお、問2の中国人船長を保釈したのは那覇地検の判断であった、という前提には疑問があります。本当は政府の判断で保釈した、と疑っているのは私だけでないと思います。前提に疑問のある質問への回答は意味がありませんので、ここでは、一問目のビデオの公開の是非について注目します。

3名とも「どちらとも言えない」という歯切れの悪い答えです。しかしながら、日本共産党は尖閣問題について、日本領土であるとの意見を明確に表明しています。

しんぶん赤旗より

日本共産党はすでに1972年に日本の尖閣諸島の領有は正当であるとの見解を発表しているが、この機会にあらためて尖閣諸島の領有の正当性について明らかにする。
(以下略)



一方、ビデオの公開に関しては、日本共産党の国対委員長が記者会見で意見を表明しています。
朝日新聞より

共産党の穀田恵二国対委員長は20日午前の記者会見で、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件のビデオ映像の扱いについて「国会で(ビデオの提出を政府に求めることを)議決し、賛成したが、公開は慎重にすべきだ」と述べた。その理由については「検察側の態度、証拠の問題、(ビデオの)内容などを総合的に見て(判断した)」と説明した。



三名の議員の回答は、穀田国対委員長の意見と同一のものだと判断できます。

つまり、日本共産党は、国民には物事の正邪を判断する資格はない、と考えているようです。物事を判断するのは政府や党で、国民(あるいは人民)はそれに従えばよい、とごく自然に考えているということがあらわになりました。これは、”政府の責任と判断で”という彼ら自身のコメントでも裏付けられます。

いかに理路整然ともっともらしく主張を述べようと、日本共産党が目指す社会のありかたが透けて見えるようです。

sidetitleプロフィールsidetitle

Author:えいび
日々の出来事、映画やアニメの感想です。

sidetitle最新記事sidetitle
sidetitle最新コメントsidetitle
sidetitle最新トラックバックsidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitleFC2カウンターsidetitle
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleRSSリンクの表示sidetitle
sidetitleリンクsidetitle