【朝日新聞】「W杯予選 勝ったら拉致されていた」

11月29日 朝日新聞朝刊より引用します。

W杯予選 勝ったら拉致されていた
自民・坂本氏、北朝鮮戦の保護対策批判
「もし(日本が)2対0、3対0で勝利していたら、今頃は(日本の)選手が拉致されていた」
28日の衆院拉致問題特別委員会で自民党の坂本哲志衆院議員は、先のサッカーのワールドカップ3次予選で日本が敗れた対北朝鮮戦について、こんな感想を語った。
坂本氏は、北朝鮮で観戦した日本人に対する外務省の保護対策が不十分だったと批判する中で発言をした。「ザッケローニ監督の選手起用法は、引き分けか、最小失点差で負けを覚悟という方向でいったのではなかろうか」「最高の功労者はザック監督だ。0対1で負けていただいた」などという見方も披露した。


いくらなんでも選手を拉致したりはしないとは思いますが、日本人サポーターには何をするか知れたものではありません。難癖をつけて数週間勾留するぐらいのことはやりかねない国だと思います。

この記事の特徴は、論評抜きで、坂本氏の発言の要旨を紹介していることです。

おそらく朝日新聞は、坂本発言を「問題発言」としたいのでしょう。しかし、北朝鮮がスポーツ精神を尊重する国家だと読者を納得させられないために、論評抜きの記事になったように感じました。

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【テレビ】朝まで生テレビ:激論・暴力排除条例と安全

11月のテーマは暴力団排除条例について。

パネリストは、
平沢勝栄(自民党・衆議院議員、元警察官僚)
青木理(ジャーナリスト)
石原伸司(作家、通称「夜回り組長」)
江川紹子(ジャーナリスト)
小沢遼子(評論家)
小野義雄(元産経新聞警視庁・警察庁担当記者)
木村三浩(一水会代表)
古賀一馬(元警視庁刑事、調査会社副代表)
原田宏二(元北海道警察警視長)
三井義廣(弁護士、元日弁連民暴委員会委員長)
宮崎学(作家)

パネリストは主に三つのグループに分類できます。暴力団排除条例賛成派、警察の権限増大警戒派、暴力団擁護派、の三つです。

私には、排除条例賛成派の主張の方に理があるように見えました。特に、弁護士の三井氏の実体験に根ざした意見は説得力がありました。暴力団に利益供与をして自分が得をしたら、その金は暴力団の組織維持に使われ別の被害者を生むのだから、市民は暴力団を排除する責任がある、という意見には賛成です。この条例の対象が市民であるのはなぜか、という問いへの十分な答えになっています。

警察の権限が増大することを警戒しているのは、青木氏、江川氏、小沢氏です。たしかに警察が無制限に権限を拡大することは警戒すべきです。その点では彼らの言うことには正しいです。しかし、警察の暴走を監視するのはマスコミであったり、市民であったり、法律であったりすべきです。断じて、暴力団の存在で警察が抑制されることがあってはなりません。一見、インテリ風に見える意見ですが、三井弁護士と比べると、底の浅いものを感じます。

暴力団を擁護といかなくても容認しているとしか思えない人たちもいました。その中で、特に宮崎学氏はひどいものでした。

はじめに彼が見せたのは、警察官の数が増えたが検挙数が落ちたというフリップです。警察官の数は事務職の部分を含んでいる、と反論を受けて沈黙です。検挙できない犯罪事例は自転車窃盗が多いという指摘もされました。実際に警察の能力が低下したのかどうかは検討すべきですが、フリップが恣意的なために、そこまで議論が展開することができません。

また宮崎氏は、暴力団がいないのは、ポルポト政権下のカンボジアだけと大見得を切りましたが、英国にもないと反論されて、尻すぼみ。日本で暴力団がいなかったのは戦時中と占領下だけと言い出した途端に、石原氏から占領下では暴力団の活動が活発だったと証言される始末です。

仮に、警察の能力が低下していてようが、ポルポト時代に暴力団がなかろうが、それと暴力団排除条例の賛否とは関係ありません。事情通のふりをしてあれこれ喋っていますが、事実を捻じ曲げた無内容なものに過ぎません。番組の議論が深まらなかったのは宮崎氏のような胡散臭い人間を出席させたのが一因だと思います。

【本】フランス白粉の謎


フランス白粉の謎 (創元推理文庫 104-6)フランス白粉の謎 (創元推理文庫 104-6)
(1961/03)
エラリー・クイーン

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1930年発表。エラリー・クイーンの第二作目。

犯人の動機にドラマチックさがなく、「小説」としては物足りません。しかし、第一作の「ローマ帽子」同様の緻密な論理性があります。同時期のほかの推理小説と比べても、非常に「推理」に特化した作品です。

印象に残ったのは、若い娘さんが一人で夜のニューヨークの待を散歩していた、と証言していることです。証言なので事実か否かを警察は問題にしますが、嘘くさいとは切り捨てていません。この当時のニューヨークはさほど治安が悪いわけではなかったのでしょうか。ちょっと意外でした。

推理小説としては必読の作品です。

【朝日新聞】「恋人いない」過去最多

11月26日朝日新聞朝刊社会面に、『「恋人いない」過去最多』という記事が載りました。

国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査を記事にしたものです。18歳から34歳の7073人を調査しています。ここに調査の現物があります。


気になったのは次の文です。

「交際している異性はいない」と答えたのは、男性が61%、女性は50%。


男女の数はほぼ同数のはずなのに、この差の11%は何なのでしょうか。女性で18歳未満や34歳超の男性と交際している人がいると、このようになります。また、18歳から34歳の間でも既婚者と交際している可能性もあります。あるいは、男性のなかに二股をかけているものがいればこのような差が生まれます。しかし、一番考えられるのは交際相手がいない女性が嘘をついたということです。

こうしたプライバシーに関わるアンケート調査では、真実をみつけにくいという証明になっただけのような気がしました。

もう一つ気になったのは次です。

この調査はほぼ5年ごとに実施。今回は昨年6月に行い、18歳~34歳の有効回答7073人分を分析した。


なんで、一年半も昔の調査を今頃発表するのでしょう。純粋に不思議です。

【朝日新聞】英語力は世界で必須

11月25日朝日新聞朝刊生活面の「就活する君へ」のコーナーで、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏のインタビュー記事が載りました。

「英語力は世界で必須」という題です。柳井氏は、英語が苦手な学生は優秀でも採用しない、と言い切っています。

インタビュー全体を読んで気がついたのは、英語力が必須であることを、具体的に説明できていないことです。

これからのビジネスで英語が話せないのは、車を運転するのに免許がないのと一緒。


何故、「一緒」なのかを説明せずに、「一緒」だと言っているだけです。

欧米はもちろん、アジアでもビジネス言語は英語です。小売業という最も国内市場に根差した会社の経営者(おそらく柳井氏本人のことだと思われます)でも考えることだから、製造業なら当然だし、ほかのサービスにも当てはまる流れだ。


自分がそう考えるから、それが真実だ、と言っているだけです。

―――社内公用語にまでする必要がありましたか
「そうでもしないと社員は勉強しない。日本人社員だけなら日本語で話しても良いが、3~5年で本部社員の半数は外国人にする。英語なしでは会議もできなくなる」


無理やり英語を必要とする状況を作る、というだけの話です。一般的に英語力が必須であることの証明にはなりません。

英語を必要とする層は確実に存在します。しかし全ての日本人が英語を必要とするようになるか、と問われるとかなり疑問です。柳井氏をはじめとして一部の英語論議は、この疑問に答えていません。

【朝日新聞】解決を通じて統合深めて

11月24日朝日新聞朝刊オピニオン欄の「私の視点」というコーナーに経済ジャーナリストのスザンヌ・シュミット氏による「欧州債務危機 解決を通じて統合深めて」という一文が載りました。

シュミット氏は、欧州を統合に賛成しています。しかし、なぜ賛成なのかがが伝わりません。それは、シュミット氏が、欧州統合が正しいと決め込んで、後は弁舌でまるめこもうとしているように見えるからです。

まず、シュミット氏が言っているのは、道徳的な面です。

「ドイツが欧州と一体化していなければ、東西ドイツ統一は成功しなかった。欧州最大の経済大国として、ドイツは危機からの脱却に大きな責任を持つ。


ドイツ統一の借りがあるから欧州の債務危機に責任がある、という意見です。私にはピンとこない意見です。百歩譲って、欧州の危機には対処する責任がドイツにあるとしても、欧州統合にまで責任があるとは言えません。

また、欧州統合が自由な社会を支えているかのようなことを主張します。

そのドイツで、戦争を経験した世代が減り、欧州統合への熱意が少なくなっていると言われる。若い世代は「戦争と平和」といった議論に無関心だ。
彼らは戦争とナチスについて学校で何度も聞き、うんざりしている。また、欧州大陸の大部分を自由に旅行でき、自分の意見を自由に表明できるのは当然で、そうでないことを想像できないのだ。


西側にはユーロ以前から言論の自由がありました。東側も社会主義体制が崩壊したあとは西側と同じような自由を享受できるようになりました。つまり欧州統合と言論の自由は関係ありません。シュミット氏より「若い世代」の方が正しいのです。

さらに、経済的な利益につながるようなことも書いています。

経済的にも政治的にも権力の重心はアジアへ移っており、世界の多極化は今後数十年は続く。欧州が危機を脱する過程で、統合をさらに深めることができれば、世界における欧州の重要性が現在より少しは強まることが期待できる。


欧州が危機を脱したら欧州の重要性は相対的に強まるのはわかります。しかし、統合を深めるとなぜ重要性が増すのかが説明されていません。

この一文を読んで、「人口激減」という本と同じ読後感を持ちました。自分の主張を説得するために、倫理だったり損得だったりを駆使して、結局説得力を失っているところが似ています。

※「人口激減」の感想は、ここです。

【展覧会】ウフィツィ・ヴァーチャル・ミュージアム展

於:イタリア文化会館
入場無料

「ウフィツィ・ヴァーチャル・ミュージアム展」は、高細密画像によってはじめて可能になる方法で、ウフィツィ美術館の門外不出の名画を美術館の外に持ち出してご鑑賞いただける、特別な展覧会です。これらの名画は、ウフィツィ美術館を訪れる数百万人の来場者の憧れの的です。それを、世界中の人びとがヴァーチャルな手段を用いて目にすることができるまたとない機会となるのです。


下記の10点の細密な画像が展示されています。自由に拡大できるので、細部にわたって鑑賞することができます。

「ウルビーノ公爵夫妻の肖像」 ピエロ・デッラ・フランチェスカ
「春 プリマヴェーラ」 ボッティチェリ
「ヴィーナスの誕生」 ボッティチェリ
「マニフィカトの聖母」 ボッティチェリ
「聖家族」 ミケランジェロ
「ヒワの聖母」 ラファエロ
「受胎告知」  ダ・ヴィンチ
「ウルビーノのヴィーナス」 ティツィアーノ
「エレオノーラ・ディ・トレドとその息子ジョヴァンニの肖像」 ブロンズィーノ
「バッカス」 カラヴァッジョ

同時に、実物大のレプリカも同じく10点展示されています。

さらに100点の絵画を、かなりの高画質で壁に映し出す仕掛けもあります。これは実物より小さいサイズで写すものもあります。

デジタルシアターとして絵画の解説コーナーも用意されています。

実物大レプリカだけでも楽しいのですが、それ以上に高細密画像には驚かされました。

残念なことに11月22日から12月8日までと期間が短い上に日曜休館という悪条件ですが、一見の価値はあります。

【朝日新聞】特派員メモ:文化財あるべき所は

11月22日朝日新聞朝刊国際面の「特派員メモ」のコーナーに中野晃氏が「文化財あるべき所は」という一文を載せています。先ごろ韓国に送った朝鮮王朝の図書に関するものです。

引用します。

(前略)
朝鮮王朝図書は市民団体が5年余り前から返還を求めてきた。メンバーで同市の寺の僧侶ヘムンさん(38)は訪日を繰り返して宮内庁で実物を閲覧し、政府や国会に要請を続けた。「活動費のほとんどは市民が支えてくれた」。昨年、当時の菅直人首相が併合100年の談話で引き渡しを約束し、願いは実を結んだ。
韓国政府によると、日本にある朝鮮半島由来の文化財は6万点を超えるという。もちろん日本に渡った経緯は様々だが、「文化財はどこにあるべきか」という問いは忘れたくない。(中野晃)


明確に言っていませんが、中野氏の考えは、文化財は作られた国にあるべき、ということなのでしょう。

まるで賛成できません。

文化財にかぎらず合法的に所有権が移転したのであれば外国に移動することはなんら問題ありません。盗んだものは返すべきですが、正当に入手したものを返す必要はありません。フランスがモナリザをイタリアに返す必要がないのと同じことです。

「経緯」こそが問題なのです。経緯を無視して返却しろ、というのは暴論に過ぎません。

また、たとえ暴論であっても明確に主張するのであればそれなりの意味はあります。しかし「問いは忘れなくない」などといったムニャムニャした言い方には、なんの覚悟も感じられません。

【朝日新聞】天声人語

11月20日 朝日新聞朝刊の天声人語より

言葉の誤用例の定番に「役不足」がある。本来は、その人の力量に比べて役目が軽すぎることを言う。それが往々、「彼では役不足だ」などと、役目やポストに器量が及ばない意味に使われる。広まったのは後者のケースが目につくからだろう▼歴代の閣僚にも誤用をもって表すべき人はいた。今ならさしずめ防衛相の一川保夫氏か。ブータン国王夫妻を招いた宮中晩餐会(ばんさんかい)は欠席し、仲間の議員の政治資金パーティーに出ていた。「こちらの方が大事」と挨拶(あいさつ)したそうだ▼またか、の感がある。一川さんは就任に際して、「私は安全保障の素人だが、それが本当のシビリアンコントロールだ」と述べて、周囲を呆(あき)れさせている▼普天間の問題では沖縄県の仲井真知事に、「自衛隊の小松基地を抱える石川県に生まれ育ったので苦労も十分わかっている」と言っていた。沖縄の歴史を少し学べば、自衛隊と米軍の基地の違いは分かるのに、である▼沖縄の基地は、沖縄戦をへて、あるいは銃剣とブルドーザーによって奪われた土地だ。米兵は犯罪をおかしても基地に逃げ込めばすんだ。基地問題の根には、米軍の分厚い壁と、人の尊厳の蹂躙(じゅうりん)がある。知事が不快感を示したのは当然だろう▼人の世には「地位が人をつくる」という情け深い俗言がある。だが、その間にも世界は動く。折しも太平洋をはさんで米中は緊張を高めている。防衛に限らずTPPあり復興あり。あの人もこの顔も、「役不足」で国の足を引っ張らないよう願いたい。


言っていることは理解できます。一川防衛大臣の問題発言、問題行動の数々にはあきれかえります。おそらく大臣の器ではないのでしょう。

それはともかく、天声人語の「役不足」とからめた文章はいただけません。「役不足」が誤用であることと、一川大臣が不適格であることは関係ありません。言葉の誤用に言及しなくてもこの趣旨の文章は書けるはずです。

こういう文章が名文とはとても思えません。

【朝日新聞】第2回どくしょ甲子園:姜尚中氏の選評

11月21日朝日新聞朝刊に「どくしょ甲子園」の記事が出ていました。「どくしょ甲子園」というのは私も知りませんでしたが次のようなものです。

高校生に読書会の成果を一枚の「どくしょボード」(A3判)に表現してもらうコンクール「第2回どくしょ甲子園」(主催・朝日新聞社、協力・出版文化産業振興財団、全国学校図書館協議会)の選考委員会がこのほど開かれ、最優秀賞1点、優秀賞2点、奨励賞3点が決まりました。受賞各チームに、熱の入った読書会の模様、「どくしょボード」の工夫などを聞きました。全国から寄せられたボードの数は506点。どの一枚からも、一冊の本を通して互いの理解や絆が深まる様子が生き生きと伝わってきました。表彰式は12月10日(土)午後1時から、東京・内幸町の日本プレスセンターで開きます。


URLはこちらです。

要するに、読書会の成果をビジュアルに表現したものを競い合うようです。文字だけの読書感想文ではなく、絵による表現力も必要です。また一人で書く感想文とは違い、仲間と協同するという楽しさもあるようです。

気になったのは、選考委員の政治学者姜 尚中氏の選評です。引用します。

本質に迫る読みの深さ、あっぱれ 

 高校生の頃、こんなに深い読みをしてたっけ?! 我が身を振り返り、応募作品の質の高さに舌を巻くほどだった。高校生くらいの年頃であれば、時代の空気を敏感に察知するのか、思いの外、生や死、戦争や原発事故など、結構シリアスで、ややもすると暗くなりがちなテーマを扱った作品が目についた。もちろん、「高校生らしい」身の丈に合った作品を選んだグループもいる。それでも、選ばれた本をみると、そこから青春の光と影のゆらぎのようなものを感じざるをえない。
(後略)


例えば、高校野球の甲子園大会の選手を見て、「自分が高校生の頃よりうまい」などと感想を言えるのは、プロ野球の選手くらいのものです。一般人が言ったら失笑ものです。

また、「自分が高校生の頃よりうまい。舌を巻きました」とまで言えるのは超一流の選手だけです。普通のプロ選手の高校生当時よりうまい高校球児がいても驚くことではありません。

「どくしょ甲子園」と銘打っているくらいですから、彼らは読書についてはトップクラスの能力を持っていると考えられます。本人の自己評価は知りませんが、世間では姜氏のことを読書の達人と評価しているわけではありません。姜氏が「高校生の頃、こんなに深い読みをしてたっけ?! 我が身を振り返り、応募作品の質の高さに舌を巻く」などと言うのはずうずうしいように感じます。

【朝日新聞】耕論:アンチエイジング

11月19日朝日新聞朝刊オピニオン欄より。生物学者本川達雄氏の「命が延びて不安が延びた」という一文が載りました。引用します。

細胞の老化を遅らせて長生きできるようにする長寿遺伝子の研究ですか?聞いたことはありますが・・・・・・。「長生きしたい」とか、あらゆる人間の欲望に火をつけるのが、医療や科学技術です。満たされれば「もっと長く」となって、きりがない。永遠に生きたいね、となっちゃう。
命を永遠にしたい、ずっと続いていきたいというのは、これは生物本来の欲望です。しかし、それは個体が生き続けるのではない。体は使っていれば、すり切れてガタが来るに決まっています。生きているのも大変だし、エネルギーも余計に使う。だったら定期的にまっさらの新しい個体、つまり子どもをつくっちゃおうと。適当なところですっと消えて、子どもに譲る。そうすれば、「私」は次の世代として生きていくことになります。これが生物が続いていくやり方です。
 生物学的には、人間も次世代を産む能力があるところまでが本来の部分で、老後は医療や科学技術が作り出した命です。子どもをつくって、子どもが暮らしやすい社会をつくるのならいいのですが、現実には老後を支える膨大なお金やエネルギーは、若者が負担しています。お年寄りに優しい長寿社会は、裏を返せば若者いじめの社会なんです。親が生きながらえて次世代を圧迫するのは、まずいんじゃないでしょうか。生物学者としては、私はそうした議論が可能だと思っています。
(後略)
(聞き手・久田貴志子)


次世代を生む能力があるところまでが本来の命、という考えは衝撃がありますが、簡単には否定できないものがあります。人倫とか社会正義とかから言えば否定しなければならないのでしょうが、生物学的にはそれが正しいのだ、といわれると反論する言葉が浮かびません。

おそろしく刺激的な意見です。しばし考えさせられました。

【映画】カイジ2 人生奪回ゲーム


【映画パンフレット】 『カイジ2~人生奪回ゲーム~』 出演:藤原竜也.伊勢谷友介.吉高由里子【映画パンフレット】 『カイジ2~人生奪回ゲーム~』 出演:藤原竜也.伊勢谷友介.吉高由里子
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ネタバレありの感想です。

第一作も観ています。前作も面白かったですが、今作も負けていません。原作を改変しているので、原作やアニメを知っている人でも楽しめます。

パチンコ沼の、実写化は迫力があり大成功でした。

映画オリジナルの「姫と奴隷」ゲームはちょっと失敗です。どこに正解があるのか全く手がかりがないのでは単なる運だめしにすぎません。「姫」が恋人や妻であって基本的には信じているのに、心の奥底で疑いだす状況があるなら、みごたえあったはずです。しかし、この時点でカイジが「姫」を信用する理由は皆無です。裏を読むか、裏の裏を読むかになりますが、どちらも根拠がないので、結局はただの運しだいです。

香川照之の利根川が全体を引き締めていました。しかし、利根川の扱いにはいくつか問題があります。

第一に、帝愛に借金を抱えている利根川が、ふらふら出歩いているのは不自然です。一条にいたぶられているシーンとの整合性がありません。

第二は、最後のカイジとの騙し合いです。協力者もなしに、あれだけ嵩張る札束をすりかえるのは無理です。しかもカイジは利根川を十分警戒していたはずです。落ち、としては面白いのかもしれませんが、リアリティに欠けます。

欠点がないわけではありませんが、文句なく面白いです。


【本】日本語は本当に「非論理的」か


日本語は本当に「非論理的」か (祥伝社新書 179)日本語は本当に「非論理的」か (祥伝社新書 179)
(2009/09/29)
桜井 邦朋

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著者は物理学者であって、言語が専門ではありません。しかし、決して見当はずれのことを言っているわけではないようです。著者の主張は「日本語は非論理的」というものではありません。むしろ日本語を使っている我々が日本語を論理的に鍛えていかなければならない、という意見です。

第一章の主題は、日本語で多用される「思う」という言葉の曖昧さへの批判です。著者によれば「思う」に対応する英語の言葉は13通りもあるとのことです。つまり何気なく「思う」という言葉を使っても、その意味するところが必ずしも明確でない場合がある、ということです。

第二章は、著者の経験に基づく日本の知的風土についてです。物理学者の世界の話なので一般的かというと疑問は残りますが、ある一面をあらわしていることは間違いないようです。

第三章以降も、それぞれ示唆に富んでいます。

全体を貫く日本文化論はやや鼻につきますが、気になるほどのことはありません。

この本を読んでの最大の収穫は、「思う」という言葉についての指摘です。私もよく「思います」という言葉を何気なく使っていました。これからは少し吟味してから使うようにします。

【時事問題】競艇選手に無罪判決

朝日新聞の記事より引用します。

痴漢で起訴の競艇選手に無罪 巡査証言「信用できず」
私服の女性巡査(25)の胸を触る痴漢行為をしたとして、兵庫県迷惑防止条例違反の罪に問われた競艇選手の森下祐丞(ゆうすけ)被告(26)=神戸市=の判決が15日、神戸地裁であった。片田真志(まさし)裁判官は「巡査の証言は信用できない」と述べ、無罪(求刑罰金30万円)を言い渡した。
森下さんは5月6日午前0時40分ごろ、神戸市須磨区の歩道で須磨署の巡査の胸をすれ違いざまに触ったとして現行犯逮捕、起訴された。巡査は現場周辺で多発していた痴漢事件の捜査中で、公判では「被告が約5メートル手前から手を上げて向かってきた。身がすくんで立ち止まると手のひらが右胸を覆う感触を覚えた」と証言していた。
これに対し、判決は「警官が何の反応もできずに胸を触られたのは不自然。逮捕して引き返せなくなったと疑うこともできる」と指摘。森下さんが「タクシーを探して後ろを振り返りつつ歩いていると、右肩から右ひじの部分が女性に当たった」「女性が怒っている感じだったので異常な人と思い、関わり合いにならないために逃げた」とした説明について「不自然とは言えない」と判断した。


私服で、「痴漢事件の捜査中」というのは、おとり捜査だと重います。警察官が、手を上げて向かってきただけの人間に、身がすくんだ、などというのはまるで信用できません。

明らかに、警察の横暴です。この事件の「被害者」の森下さんは勇敢に警察と戦いましたが、泣き寝入りしている人はいっぱいいるのだと思います。

起訴した検察の責任も重大です。

【朝日新聞】記者有論:米国のデモ 不平等に気付いた国民

11月15日 朝日新聞朝刊オピニオン欄の記者有論のコーナーにニューヨーク支局の春日芳晃氏による「米国のデモ 不平等に気付いた国民」という一文が載りました。引用します。

(前略)
努力すれば収入と社会的地位は上昇するという「アメリカンドリーム」は、世界中から多くの移民を引き寄せ、米国を前進させる原動力になってきた。それだけに、若者らが「今日より豊かな明日」を信じられなくなった今の米国の行き詰まりは深刻だ。
ただ、抗議デモをきっかけに、米国民は「我々の社会は不平等だ」と自己認識するようになった。超富裕層への課税強化など平等な社会へ変革を迫る動きも目立つ。こうした模索の末、米国民が国のあるべき姿を修正し、立ち直る可能性はあると思う。来年の大統領選挙はその試金石になるだろう。そして米国の苦悩は、同様に貧困・格差問題を抱える日本にとっても対岸の火事では済まないはずだ。


大部分は、米国のデモのレポートですので、日本の読者が知らないことを報告してくれています。その点では価値があります。しかし、締めがいけません。

米国の格差と日本の格差は数値でみても違います。また日本でもこの運動に触発されたデモはありましたが、たいして盛り上がりませんでした。つまり、実感としても米国ほどには格差を感じていないのです。全く無関係とはいえませんが、どの程度の関係かは、もっと正確に比較して論じるべきです。

外国の事情を書くだけではもの足りないと思ったのでしょうか。「対岸の火事ではない」と言うだけの締めなら、それは蛇足です。

【朝日新聞】いま、宗教を知りたい

11月15日 朝日新聞朝刊 文化欄より。

現在宗教関係の本、雑誌が続々と刊行されていることが紹介されています。その理由として日本人の宗教に対する意識の変化を挙げています。補足の記事として、宗教社会学者の井上順孝国学院大学教授の学生宗教意識調査を紹介しています。

(前略)
非宗教系大学に通う学生2003人中、「信仰がある」という回答は7.5%、「宗教に関心がある」は46.4%であわせて半数を超える。
(後略)


添付のグラフによると1996年では、「信仰がある」と「宗教に関心がある」を合わせて30%。徐々に上昇していく傾向が見えます。

この調査で疑問に思ったのは「宗教に関心がある」と答えた学生の真意です。私は信仰を持っていませんし、宗教団体には胡散臭いものを感じています。しかし、宗教に無関心かというと、そうでもありません。

一部の西洋絵画の鑑賞にはキリスト教の知識は欠かせません。アニメなどのサブカルチャーは仏教・神道・キリスト教など宗教の知識があるとより深く理解できることがあります。歴史を学ぶ際には宗教の知識は必須です。そういう意味で宗教には関心があります。しかし井上教授が想定しているような「信仰あり」の予備軍ではまったくありません。「信仰あり」の人と足し算されるのは不本意です。

アンケートに「関心あります」と答えた大学生もいろいろな意味で回答したのだと思います。大学生の意識に変化があることはグラフをみれば確かですが、「関心ありますか」といったどうとでも取れる設問では、世の中の実態を検証することはできません。

【時事問題】サッカーファンの北朝鮮訪問

朝日新聞の記事より引用します。

平壌で15日にあるサッカーW杯アジア3次予選の北朝鮮戦に向けて、日本代表のサポーターら約55人が14日朝、羽田空港から北京に向かった。同日中に北京経由で平壌入りする予定。日本が北朝鮮で試合をするのは22年ぶり。
 空港では、日本サッカー協会の公式ツアーに参加するサポーターらが航空券を手に、税関職員から土産の持ち出し禁止などの説明を受けた。
(中略)
 北朝鮮戦をめぐっては、政府がこの試合に限って一般人の渡航自粛を緩和。ただ、拉致被害者の家族会と支援団体「救う会」が平壌市内の観光地巡りの中止を要請している。


国家代表チームの応援なのに国旗を持ち込めないなどという馬鹿げた規則を守ってまで北朝鮮に入国したがる心理が分かりません。「仕事」で出かけるサッカー選手を非難しているわけではありません。わざわざ北朝鮮にまで出かけるファンがおかしいと言っているのです。

客観的に見て、北朝鮮は危険で常識を超えた振る舞いをします。何をするかわかったものではありません。あのような国に渡航するのはきわめて無謀です。渡航自粛を緩和した政府も無責任です。

もちろん事故や事件がないことを望んでいますが。無事に帰国できたとしても彼らの行動が無謀であったとの意見はまげられません。

【映画】Are We Alone?

於:コスモプラネタリウム渋谷

プラネタリウム用のCG映画。米国で制作されています。オリジナル版はハリソン・フォードがナレーションをしていますが、こちらは日本語の吹き替えです。投影前の説明では「ハリソン・フォードのままだとギャラが高いから」と冗談を言っていました。

特別にびっくりさせるような画像ではなく、情感豊かな表現というものでもありません。科学的に突っ込んだ説明もありません。すべてが淡々としていて、あまり印象に残るものはありませんでした。

【映画】三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船


三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船 (竹書房文庫)三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船 (竹書房文庫)
(2011/10/06)
アレクサンドル・デュマ原作、アレックス・リトヴァク原案・脚本 他

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何度も映画化されている「三銃士」なので、どういう風に料理するかが見所になります。今回は、ひたすらアクションとびっくりさせる映像のオンパレードで、ストーリーの細部はボロボロで矛盾だらけです。ただただアクションシーンを楽しむ映画といえます。

アクションシーンにしても若干の問題を感じます。殺陣が少し軽すぎます。あれだと、死んだのか負傷したのか気絶しただけなのか、よくわかりません。単に、“やっつけた”というだけです。

飛行船の戦いがこの映画のウリなのでしょうが、これだと銃士の活躍がみせにくくなります。派手にしたいのは結構ですが、ちょっと違和感がありました。

3Dで観ましたが、3Dならではというシーンはなかったです。2Dで十分です。

軽い気分で観るにはちょうどいい映画かもしれません。

【朝日新聞】日本一幸せなのは福井県、最下位は… 法政大教授が調査

朝日新聞の記事より、引用します。

「日本一幸せ」なのは福井県民という結果が出た。法政大大学院の坂本光司教授は9日、「47都道府県の幸福度に関する研究結果」を発表した。上位3県は福井、富山、石川の北陸3県。最下位は大阪だった。
 坂本教授と同研究室で、経済力や生産力による指標ではなく「幸福度」を数値化しようと調査。合計特殊出生率総実労働時間平均寿命など40の指標で点数化し、総合点から都道府県を順位づけた。上位県は人口が250万人以下で、第2次産業の比率が高いという共通点があったという。
 「すべての部門で改善が必要」とされた大阪は休養時間の長さで高得点だったものの、平均寿命の短さや保育所定員比率の低さ、刑法犯認知数の多さが順位を下げた。
 ただ、坂本教授は「幸せ度は、住む人々の努力で変えられると思う。ランクづけが目的ではなく、幸福度を高める地域づくりの方策を示したかった」。3年に1度程度、データを更新していく予定という。
(後略)


感心できない記事です。

まず、合計特殊出生率・総実労働時間・平均寿命・休養時間の長さ・保育所定員比率・刑法犯認知数という6つの指標しか記事にでていませんので、残りの34個は何を測ったのかがわかりません。

また、その指標にどのように”重み”をつけたのかも書いていません。数値化するためには平均寿命が70歳から72歳なら〇点、73歳から74歳なら〇点、といった具合に”重み”をつけたはずです。これでは40個の指標の中でどれをどのくらい重視したかがわかりません。

こうした情報を記事にしないのは、坂本教授の責任ではありません。記事の不備です。

次に、坂本教授の研究について述べます。

住民に実際に感じている「幸福度」と、坂本教授の計算式の結果にずれがある場合は、計算式が間違っていると考えるべきです。40個以外に指標にすべきものがあるのか、”重み”づけを間違えたのかです。指標や”重み“を改善していくことで、住民の実感と数値の一致を目指します。一致したところで初めて正しい幸福度計算式といえます。これを使えば、どういう指標を改善すればどのくらい住民が幸福になるのか、つまり「幸福度を高める地域づくりの方策」が分かります。

しかし、記事を読む限り、そうした検証をした形跡がありません。坂本教授が幸せと感じる指標で47都道府県を評価したに過ぎないように見えます。



【本】ライノクス殺人事件


ライノクス殺人事件 (創元推理文庫)ライノクス殺人事件 (創元推理文庫)
(2008/03/24)
フィリップ マクドナルド

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1930年発表の推理小説。

長編としては短めですが、構成に凝っていますので、読み応え十分です。

普通の推理小説としては異例の展開ですが、小説としても優れているためか読みづらくありません。登場人物も好感の持てる人が多く、読後感もさわやかです。

トリックも当時としては斬新なものだったようです。日本のある高名な作品との類似も指摘されていますが、発表は「ライノクス殺人事件」の方が先行しています。

ミステリファンは是非一読すべき作品です。

【朝日新聞】日本では電子書籍は売れない

11月8日 朝日新聞朝刊のオピニオン欄に微細加工研究所長の湯之上隆氏が「日本では電子書籍は売れない」と題した文を寄せてきます。

湯之上氏は、日本では電子書籍は売れない、と考えています。まず、現在電子書籍がほとんど売れていない、という事実を指摘しています。次に大学生、あるいは日本人一般が「情報はタダ(ついでに知恵もタダ)」と思っている、らしいことを挙げています。そして、結論としてアマゾンのビジネスは失敗する、と予言しています。

私も電子書籍は持っていませんし、現状で買いたいとは思いません。それでも、将来的にみて日本で電子書籍が売れないとは思えません。

湯之上氏の第一の指摘は電子書籍がまだまだ出揃っていない状態での売れ行きです。この数年でどう変わるかは予測できません。

問題になのは第二の指摘、“情報はタダ”との考えです。そういう傾向がないとは言えませんが、紙の本が売れている以上、電子書籍も慣れてくれば普通に購入する可能性はあると思います。

現状の電子書籍の問題は、紙の本に比べてメリットが少ないことです。電子書籍の普及には、電子書籍ならではの利点を打ち出すことが必要です。

私があったらいいなと思うのは漫画の電子化です。紙の漫画だとかさばるので、大量に持ち運ぶことは困難ですし、自宅に保管するのも限界があります。電子化するメリットは大きいです。ただし、小さな画面をちょこちょこ動かして漫画を読む気にはなれません。思い切って、漫画を原画と同じ大きさで鑑賞できるようにして欲しいです。ある程度の大きさの電子書籍機器さえあれば、原画と同じ大きさの漫画を楽しむことができるようになります。

作者の描いた絵と同じサイズの絵を見るようになるというのは、漫画文化の受容の仕方としては、重要な変革になるはずです。

こうしたメリットが出てくれば、電子書籍は大いに普及するでしょう。



【本】人口激減 移民は日本に必要である


人口激減―移民は日本に必要である (新潮新書)人口激減―移民は日本に必要である (新潮新書)
(2011/09)
毛受 敏浩

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賛成できかねる主張の本です。気になった点を挙げてみます。

■外国人労働者が日本人の職を奪うのか

毛受氏は、次のように問題提起しています。

不況が続く中で彼ら(※)は、重労働の割に賃金が低い、日本の青年が嫌がって避けるような職に就き、大切な労働力として重宝されていた。それでも、「彼ら外国人が日本人の仕事を奪っている」と根拠もなく批判する人がいるが、はたして本当にそうなのだろうか。彼らがいなければ、日本人の失業率は改善していたのだろうか。(P4)

※外国人労働者

これに対する答えは、次のように書いています。

二○○九年正月、日比谷公園の年越し派遣村は社会的関心を集めた。多くの若者が職を求めている姿を見た大手クリーニングチェーンの理事長は、すぐに職業安定所に向かった。深刻な人手不足が続いていたからだ。正社員・月収二十四万の条件で人材を募集したところ百八十人が応募し、そのうち十二人を採用したという。ところが、一週間たって残ったのはわずかに一人。「おなかが痛い」「仕事が合わない」と出勤初日の午後に退職届けを出した人もいた。理事長は「日本人は少しでもきつい仕事はもうやらない、できないんだということがよくわかった」という。(『日経ビジネス』二○○九年十一月二十三日号「移民YES」より)(P67)


つまり、日本人が就きたがらない仕事を移民がやっているのだから、日本人の職を奪っているわけではない、という論理です。

間違っています。

「大手クリーニングチェーン」が慢性的に人手不足なのは、仕事に対して支払う給料が少ないことが原因です。本来であれば、「大手クリーニングチェーン」は給料を上げて従業員を確保しなければなりません。それができないなら市場から退場して、別の業者が出てくるだけです。低賃金をいとわず働く労働者(この場合は移民)がいると、このメカニズムが働きません。よほどの人手不足の状態でない限り、移民は日本人の職を奪います。

毛受氏は次のようにも述べています。

彼ら(※)がいなければ、弁当代やクリーニング代を今のような廉価に維持することは無理だろう。「彼らが日本人の職を奪っている」と無責任に言う人もいるが、彼らのように、根気がいる仕事を休まず続け、低賃金で働く日本人を見つけることは難しいだろう。(P176)

※外国人労働者

弁当やクリーニングを安く維持するのを大前提に置くからおかしな結論になっているのです。

■倫理的な側面
日本人の失業率が増えても移民を低賃金で使った方が、弁当やクリーニング代が安くなって得だ、との主張であれば、倫理的にはともかく論理は通っています。しかし毛受氏は

とにかく移民受け入れで重要なことは、「貧困のサイクル」を作らないことだ。移民一世は、日本語習得や職場環境に慣れるのが精一杯で、経済的に成功できるかどうかはなかなか難しいかもしれない。しかし、その子ども、孫たちまで貧困が連鎖することは避けなければいけない。(P185)


と言い出しています。では移民一世がいなくなったあと、低賃金でクリーニングの仕事をする人がいなくなります。当然のことながら無限に移民を受け入れ続けるほど日本は広くありません。毛受氏の主張は一貫性がありません。

■倫理的側面2
毛受氏は、移民を受け入れるべき理由を次のように述べています。

本書でなぜ移民受け入れの議論をするかというと、それはひとえにこのような逼迫した問題(※)が目前に迫っているからであり、それに目を瞑ったままでは、先述したような悲惨な状況が待っているのは自明のことである。
世界各国で、すでに「高度人材」と呼ばれる高い技能や知識を持った人たちは、引く手あまたの存在である。それは高度人材に限らない。それぞれの国で必要な分野の人材を、国外から呼び入れることは当然のこととして行われている。(P45)

※高齢化社会になること

そして

白書では、途上国からの頭脳流出についても言及している。途上国の科学・技術分野の人材の三分の一から半分は、現在先進国で生活しており、たとえばアフリカからの高度な技術を持った看護婦や医師が、毎年二万人流出している。その例として、イギリスのマンチェスターで働くアフリカのマラウイ人の医者の数は、マラウイ全体の医者の数よりも多いと報告している。(P65)

※2006年の世界人口白書

とも紹介しています。

一般に移民に否定的な人たちは排外主義者とか極右とか人種差別主義者呼ばわりされることがあります。しかし、ごく素直に考えれば、自国の医療のために貧しい国から医者や看護婦を奪っている方が、倫理的に間違っています。

マラウイの状態を自分で紹介しておいて、毛受氏は何とも思わないのでしょうか。氏の倫理の基準がわかりません。

■外国人流入によって犯罪は増えるか

入国者数の増加と正比例かそれ以上の割合で犯罪率が増加して初めて、外国人が増えると治安が悪化すると言えると思うが、このデータを見る限りそうはなっていない。(P116)


毛受氏の基準はおかしいです。入国者数と犯罪率に相関関係があれば関係があると疑えます。正比例以上でなければ悪化したと言えない、というのは間違っています。

もっと合理的に判断したいのであれば、人口あたりの犯罪者の割合を、日本人グループと外国人グループで比較することです。日本人グループより犯罪者率が多ければ、外国人によって治安が悪化した、といえます。

■移民を入れない日本人は身勝手なのか

移民受け入れについて、日本では相変わらず抵抗や拒否が根強くある。できるだけその議論はしたくないというムードさえ感じられる。
そうした心理の根底にあるのは、なんとか日本人だけで持ちこたえられないか、犯罪の増加や社会の混乱要因になる外国人の受け入れはなんとか避けたいという意識だろう。
しかしだからといって、日本人は排他的で、外国人嫌いな国民と一概に言えるだろうか。日本では不況の最中でも海外旅行は活況を呈している。海外の名所旧跡を訪れたい、異文化に触れたいという気持ちを日本人が持っていることは確かで、テレビ番組でも海外の文化や風習をクイズ形式で出題する番組がいくつもある。
つまり、異文化に感心がないのではなく、自分が海外に行くのはよい、しかし外国人が日本に来るのは困るというのだ。これはあまりに身勝手ではないだろうか。(P49)


この論理は滅茶苦茶です。

海外に旅行することと、移民とは比較の対象にはなりません。外国からの旅行客を歓迎するのも、移民を入れるのも、その国の主権の問題です。自国民が海外旅行に出かけるからといって、移民を受け入れる道義的理由はまったくありません。

■欧州の状況

もちろん、外国人を自国に受け入れるには、さまざまな課題を伴う。アメリカやオーストラリアのような移民大国ですら、移民については反対意見や否定的な見方をする人たちも多い。とりわけ不法移民については否定的な意見が強い。しかし、正規の移民受け入れを拒絶するという選択をする国は見当たらない。
これはヨーロッパでも同じだ。EUの拡大によって新メンバーになった東欧諸国から、旧EUメンバーの国々への移動が起こっている。EU諸国以外の中東やアフリカからの移民も多い。様々な問題はあるものの、EUの人々の中には、移民によってもたらされる活力が国の将来の発展につながるという意識が強くある。それは単に労働力の不足を補うためではなく、経済電圧(※)を上げ自国民をも奮い立たせる大きな力になることを知っているからだ。(P19)

※毛受氏の造語で、成長過程の国での富めるものと貧しい者とのギャップを指す。

社会が平等でない方と活力が生まれるから、貧しい層が必要という意見です。毛受氏がそういう意見を持つのは結構ですが、日本では少数意見だと思います。また、EUの人々が毛受氏と同じ意見であるかのように書いていますが、根拠が示されていません。毛受氏の思い込みではないでしょうか。

外国人の受け入れは、日本社会にとって合わせ鏡のようなものである。日本が彼らに対して、積極的に歓迎する姿勢を示し、そのためのサービスを充実させれば、彼らは日本社会に、彼らの持つ能力を最大限に活かして貢献してくれるだろう。しかし日本が逆の対応をとれば、移民問題で苦しむ欧州の一部の国のような状況に陥るだろう。(P121)


さらっと、欧州の一部の国が移民問題で苦しんでいることを書いていますが、具体的にどの国でどんな問題があるのかを書いていません。これでは、移民受け入れに都合の悪い事実を読者に隠している、としか受け取れません。

■理路整然?

そのように理路整然といくら説明しても、まだまだ日本には外国人受け入れに抵抗を示す排外主義という大きな壁がある。(P177)


これだけ穴の空いたことを言っておいて、みずからを「理路整然」と言い張るのにはあきれかえりました。

【アニメ】渋谷109にTIGER&BUNNYの広告


TIGER&BUNNY(タイガー&バニー) 8 (初回限定版) [Blu-ray]TIGER&BUNNY(タイガー&バニー) 8 (初回限定版) [Blu-ray]
(2011/12/22)
平田広明、森田成一 他

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日曜日に渋谷を通りかかったら、びっくりしたことに渋谷109にTIGER&BUNNYの広告がかかっていました。1Fにはフィギュアや絵が飾られていました。

私のいた時には特別にイベントめいたことはありませんでした。ただ宣伝の袋を配っていました。入っていたのは次のものです。

■Calbeeのピザポテト 25g
■Pepsi NEX ZERO 160ml
■バンダイファッションネットのチラシ
    表面:折紙サイクロンのリバーシブルスカジャン \29,800
       バーナビーのベルト\12,000
       ロックバイソンのベルト\8,500
    裏面:Tiger&Bunnyとは無関係にバンダイファッションネットの宣伝
■牛角のチラシ
    表面:11月7日から20日までの「牛角×ロックバイソンキャンペーン」のお知らせ
    裏面:白紙
■munue株式会社(携帯電話を使った漫画配信の会社)のチラチ
    表面:TIGER&BUNNYの漫画による宣伝
    裏面:白紙
■バンダイビジュアル株式会社のチラシ
    表面:TIGER&BUNNYのBlue-ray&DVDの広告と、再放送中とのお知らせ
    裏面:TIGER&BUNNYのストーリー紹介
■SoftBankのチラシが二枚
    TIGER&BUNNYとは無関係の広告なので割愛

割合に多くの人が足を止めて見入っていたように思います。案外、認知度が高いのでしょうか。

【朝日新聞】耕論:東京五輪ふたたび

11月5日 朝日新聞朝刊オピニオン欄より

もう一度、東京でオリンピックを開きたい。2020年開催に向け、招致委員会が9月に発足するなど、歯車が回り始めた。でも、なぜいま東京なのか。16年招致の失敗の際に突きつけられた問いに、今回はどう答え、何をすべきか。


というのが朝日新聞からの問いかけです。これに対して、東京2020年オリンピック・パラリンピック招致委員会事務総長の水野正人氏と英ラフバラ大教授のイアン・ヘンリー氏が一文を寄せています。

水野氏はいろいろ言ってはいますが、説得力がありません。2024年だと米国や南アフリカが立候補してくる可能性があるので2020年のチャンス、というのはオリンピックを誘致したい理由ではありません。誘致したいのは前提でいつが有利なのかを言っているだけです。

東日本大震災から復興した日本を見せたいとも言っていますが、震災の以前からオリンピック誘致をしていました。これも口実としか思えません。

結局理由らしい理由は、

成長の時代を終えた日本には閉塞感が漂い、国際競争力も低下していました。女子サッカーの活躍にみんなが歓喜したように、スポーツには日本の活力、希望を取り戻すことにつながります。


くらいのものです。しかし、先の女子サッカーの大会は日本で開催したわけではありません。日本チームが外国で活躍したのです。したがって、水野氏の理論に基づけば「日本の活力、希望を取り戻す」には、選手の強化こそがなすべきことです。

なぜ執拗に東京にオリンピック誘致を目指すのか、まったく理解できませんでした。

【本】パチンコがなくなる日


パチンコがなくなる日―警察、民族、犯罪、業界が抱える闇と未来 (主婦の友新書)パチンコがなくなる日―警察、民族、犯罪、業界が抱える闇と未来 (主婦の友新書)
(2011/02/05)
POKKA吉田

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主婦の友新書の「なくなる日」シリーズの一冊。題名を「~がなくなる日」というように統一しているだけなので、特にパチンコが消滅する可能性について論じているわけではありません。

本書の特徴は、熱のなさです。パチンコを排斥したいわけでもなければ擁護したいわけでもなさそうに実に淡々とパチンコ業界の説明が続きます。賛成なり反対なりの立場がはっきりしていたら読み応えがあるのですが、こうも平板に書かれると読む気が失せます。また、私のようなパチンコをやらない人間にはわからない説明が続き、正直いって読みづらいです。

本文は淡々としているのですが、「おわりに」では一転して、若宮健氏の「なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか」や溝口敦氏の「パチンコ『30兆円の闇』」について熱のこもった記述があります。このアンバランスが不可思議で不可解です。

あまり面白い本ではありませんでした。わかったのは、警察がパチンコ業界と不適切なまでに密接な関係を持っていることぐらいでした。

参)【朝日新聞】異議あり:パチンコばかりバッシングするな
参)【本】なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか 

【朝日新聞】音楽は政治を変えるか

11月3日朝日新聞朝刊オピニオン欄に、指揮者のチョン・ミョンフン氏のインタビューが載りました。

チョン氏の言葉を引用します。

「音楽家は、人類に奉仕するという目的以外で、音楽を『道具』にしてはいけません。音楽は音楽以外の何物でもない。作曲家が書いた音に忠実たれ、というクラッシックの精神はそこにつながってゆく。音楽が人を結ぶ力を、政治的な思惑で利用しようとするのは危険なことです。


音楽は聴衆を説得できるけど、政治家を説得することはできない。


『音楽に何ができるか』といわれると、『ほとんど何も』と答えるほかありません。50人の北朝鮮の楽員と50人の韓国の楽員が共演する。すると、100人が互いに少し幸せを感じることができる。それだけのことであり、画期的な変化をすぐに期待できるわけではありません。



このようにチョン氏は、音楽の政治への影響力を限定的と考えています。ところが、インタビュアーは、「取材を終えて」で次のように書いています。

指揮棒1本で欧米社会を説得してきた「異邦人」。彼の熱い音楽は南北の垣根を超え、民族の魂をも揺さぶる。その凄みが言葉の端々ににじんでいた。政治家がどんなに時間をかけ、言葉を尽くしても解けない結び目を、たった1曲の音楽が一瞬にして解いてしまう。確信に満ちた語り口には、そんな奇跡を信じさせる力があった。(吉田純子)


吉田記者は人の話をきかずに、自分の意見を言っているとしか思えません。

同じ主旨でblog記事を書いたことがあります。これです。

【展覧会】世界遺産ヴェネツィア展 魅惑の芸術-千年の都

於:江戸東京博物館

ヴェネツィアをテーマにした展覧会。絵画、ガラス細工、衣装などさまざまな物品でヴェネツィアを紹介します。

ヴェネツィアという都市に特化してはいますが、展示物が多岐にわたりすぎてやや散漫な印象であることはいなめません。

祝日だからということもありますが、それなりに混雑していました。この展示場はいつも狭い場所に展示物を詰め込みすぎるきらいがあるので、見てまわっただけで少し疲れました。

ヴェネツィアの歴史を軽くでも勉強していった方が楽しめると思います。

音声ガイドは女優の岡江久美子さんでした。

【本】チャーリー・チャンの活躍


チャーリー・チャンの活躍 (創元推理文庫 122-1)チャーリー・チャンの活躍 (創元推理文庫 122-1)
(1963/08/02)
E.D.ビガーズ

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1930年発表の推理小説。

世界一周旅行団のなかで起きる連続殺人。

この時期の推理小説としては珍しい連続殺人ものです。たまたま2件目の殺人をしてしまった、というのはありますが、それは「連続殺人」というのとは違うと思います。私の知る限り1922年のイーデン・フィリポッツの「赤毛のレドメイン」や1928年のヴァン・ダインの「グリーン家殺人事件」、同じく1929年の「僧正殺人事件」くらいです。後年、長編推理小説では連続殺人がスタンダードになりますが、この時期としては珍しい例です。

連続殺人推理小説の欠陥(?)は探偵が原理的に有能でなくなってしまうことです。一回目の殺人で鋭く推理を働かせれば、二回目・三回目は防げたはずです。前述の「グリーン家殺人事件」は、この好例です。この「チャーリー・チャンの活躍」では、事件の後半までチャーリー・チャンを登場させないことで、探偵が傷つかないようにしています。

もう一つ指摘すると、団体旅行(互いに前歴の異なる集団)での連続殺人事件という状況は、後にアガサ・クリスティーが多用するものです。

この二点で、かなり先進的な推理小説といえるかもしれません。

なお、殺人の一つは横浜で起きています。日本人には残念ですが、あまり細かい状況模写はありません。横浜という地名が出ただけです。

【毎日新聞】trend:中東 日本アニメ人気拡大

毎日新聞の記事です。引用します。

 民主化騒乱に揺れる「アラブ最貧国」イエメンの首都サヌア。その一角で日本アニメのCDを販売する「アラブ・アニメーションズ」が営業している。オサマ・ハティーブ店長(31)によると、「ワンピース」など日本でも人気の作品約150タイトルをそろえる。売り上げは順調に伸びており、今年1月に支店をオープンしたほどだ。
 日本のアニメや漫画は世界で高い評価を受ける。中東でも、人口の過半数を占める20代以下の若者を中心に、熱心なファンが増えている。衛星テレビやインターネットの発達で裾野が広がった。日本貿易振興機構のアニメ・ゲーム市場調査(10年9月)は、オイルマネーの集まるペルシャ湾岸諸国や人口8400万人のエジプトなどが「未来の有望市場」であることを示す。
 文化背景の違う日本で生まれたアニメや漫画が、なぜ中東で受けるのか。ハティーブさんは「ストーリーの面白さ、絵の質の高さが世界の人々を引き付ける」と解説する。サヌアでゲームショップを経営するザキ・シャムランさん(40)は「日本のアニメが強調する友情や助け合いの大切さは、我々の価値観にも合う」と分析する。
 先月、エジプトの首都カイロの日本大使館で人気作品「サマーウォーズ」の上映会があった。約100席の会場は9割がエジプト人で埋まった。大使館のアンケートに「日本アニメをどんどんやって」との意見が多く寄せられた。11月にも別の作品を上映予定だ。
 カイロ郊外に住む薬剤師のヤスミーン・アブデルラヒムさん(24)も日本アニメの大ファン。取材場所の喫茶店で、バッグ二つに詰め込んだ漫画雑誌やキャラクター人形を披露してくれた。古本屋を回り、25エジプトポンド(約317円)の漫画本を見つけた時は「うれしさで値切るのを忘れた」。
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイには08年11月、英訳の日本漫画本も販売する紀伊国屋書店がオープン。山田拓也副店長(39)によると、日本漫画は仕入れ全体の1割未満だが、売り上げは当初の約2・5倍増。月2000点以上だ。この店では欧米人の利用が主流だが、漫画コーナーに限れば、伝統衣装を身にまとった顧客がほぼ半数だという。
 ただ、中東は日本や欧米に比べ保守的傾向が強く、当局の検閲もある。「暴力や裸体が含まれる青年向け作品や宗教色の強いものは要注意」(山田さん)のようだ。
【サヌアとカイロで和田浩明】


作品名が、「ワンピース」と「サマーウォーズ」しか出ていませんので、具体的にどういった作品が「要注意」なのかわかりません。「暴力や裸体」に規制があるというのは、だいたいどのあたりの作品が駄目なのか想像できますが、難しいのは「宗教色の強いもの」という縛りです。キリスト教や仏教、神道のアイテムは日本のアニメに普通に登場します。宗教と関連なさそうでも、世界のことわりに言及するような作品も危ないかもしれません。

一般人向けの記事ですので仕方ないのかもしれませんが、これだけでは“日本アニメの人気拡大”の様子がよく伝わりません。もう少し具体的に書いてくれたら、イスラム社会がどこまで異文化を受容できるのかを測ることができたはずです。せっかく今まで報道されていなかった分野にせまった記事なのに、ちょっと残念です。
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えいび

Author:えいび
日々の出来事、映画やアニメの感想です。

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