【朝日新聞】社説:君が代義務化―本当に大切なことは
特定の歌を歌えと命じられる。口を動かしているかチェックされ、歌っていないと罰を受ける――まるで時計の針を戻すような動きだ。
卒業式などで教職員が君が代を起立斉唱するよう、全国で初めて条例で義務づけた大阪府の教育委員会が、実際に歌っているかどうか、口元を確認、報告するよう府立の全学校長に通知した。
国の学習指導要領は、式典で国歌斉唱を義務づけており、他の教委でも指導を強める動きがある。だが実際にはチェックの対象は起立で、口元の点検まで指示したのは異例だ。
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スポーツの国際試合では、選手を鼓舞したり勝利をたたえたりする観客が君が代を歌う風景が当たり前になった。ただ、かつて君が代は、軍国主義教育のなかで戦意高揚に使われた。その反省の思いから、式典での起立を拒否する先生がいるのも重い事実である。
世間の反応は鈍い。学力低下やいじめなど様々な問題を抱える公教育への不信も、「ルールを守らない」先生への厳しい視線につながっている。今回の動きも、そんな空気を読んでのことかもしれない。
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『「ルールを守らない」先生』に厳しい視線が注がれるのは当然です。先生の思想信条がどうあろうと、子供にとって節目となる卒業式で式典の雰囲気を壊すことは非難されなければなりません。
起立を拒否して式典の雰囲気を台無しにする教師は尊敬できませんが、その一方で口元の確認はやり過ぎだと思います。起立して歌っているふりをしているだけなら、式典の邪魔にはなりません。放っておけばいいと思います。いちいち口元をチェックするのも、おごそかであるべき式典には似合いません。
卒業式は大人が自分の思想を披瀝しあう場ではありません。己の信条を吐露したいのであれば、時と場所を選ぶべきです。