12月20日朝日新聞朝刊オピニオン欄、「今こそ政治を話そう」のコーナー。東京大学教授(憲法学者)の長谷部恭男氏のインタビューで、特定秘密法についてのインタビューが載りました。
長谷部氏は特定秘密法に賛成の立場であり、国会では自民党推薦の参考人として意見を述べています。
特定秘密保護法に賛成している理由は、「国をも守るための法律だからです。国を守るとは、憲法を守るということ」「憲法の定める自由で民主的な統治の基本秩序を守り、現在の政治体制を守るためには、特定秘密法をつくり、特別な保護に値する秘密が外に漏れないようにしなければなりません」というものです。
ある程度の理解はできますが、懸念が完全に払拭されたとは言えません。ただ、ここでこのインタビューを紹介したかったのは、特定秘密法への意見が言いたかったわけではなく、インタビュアーの高橋純子氏があまりにもひどかったからです。
まず、出だしです。
――もしかして、「御用学者」と呼ばれていませんか。
「何のことでしょうか」
――国会で特定秘密法に賛成の意見陳述をしたことが、この法律に反対してきた人たちに衝撃を持って受け止められています。
のっけから罵倒しています。卑劣というか、巧妙というか「
呼ばれていませんか」と他の人からそういう評価をうけていないかを訊いているという体裁をとっています。“決して私が言っているわけではありません”と言いぬけられる話術です。しかし、ここは特定秘密法への賛成理由を問う場です。長谷部氏が御用学者と呼ばれているか否かは無関係です。
次に特定秘密法ができたことで、秘密を知りたいという欲求が高まり、結果的にさまざまな情報が世に出回ることになる、との意見に対して
――そうでしょうか。特定秘密を漏らせば厳罰が科されるのだから、社会の萎縮はどんどん進むでしょう。長谷部さんと違って、多くの人は世間の空気を読みますから。
「すみませんね、空気も読まないで。そう。だからメディアが今、空気を作るべきなんです。萎縮する必要はないという空気を。それなのに『漏らせば厳罰』ばかり言ってむしろ萎縮ムードをあおっています」
長谷部氏の期待とは逆にやはり社会の萎縮が進むのではないかという疑念はもっともです。しかし、「
長谷部さんと違って、多くの人は世間の空気を読みますから」などという、からかいは失礼です。これにはさすがに長谷部氏もむっときたようです。
「制度の外側からいくら心配しても心配な状況は変わりません。変えるためには内側に踏み込んで、情報を外に出せるルートを作るよう政府と交渉しないと。安倍政権の支持率が下がっている今が好機です。法律には反対だ、廃止しろとだけ言い続けていたら交渉できませんよ。ルートさえできれば情報はどんどん外に出てくるのですから。清廉潔白な朝日新聞さんは嫌かもしれませんが、清廉なだけでは勝負になりません」
――どんなに嫌みを言われても、特定秘密法、集団的自衛権、憲法改正をパッケージで見ると安倍政権に懸念を抱くのは当然でしょう。
ここに来て高橋氏が特定秘密法に反対する本当の理由がわかりました。安倍政権を嫌っているから反対しているだけです。ひょっとすると、法律の文面は同じでも安倍政権でなかったら、あるいは自民党政権でなかったら賛成していた可能性さえあります。
こうしたインタビュー記事は全文を載せるのではなく、記者が抜粋して載せているのだと思います。つまり、どんなにインタビューであってもインタビュアーは自分をもっともらしく飾ることができます。それにも関わらず、この記事では高橋純子氏の無礼さが露呈してしましました。もしかしたら、無礼だと思っていないのでしょうか。