【本】日韓対立の真相
駐韓日本大使による韓国論です。韓国に厳しいことも書いていますが、全体的には日韓友好のためのわだかまりをなくしたいという真情が読み取れます。いわゆる嫌韓本とは違います。
四分の三ほどは、韓国の分析です。慰安婦問題への韓国政府の対応はおかしいとか、竹島の問題を領土問題から歴史問題に摩り替えている、など韓国を厳しく批判しています。
残りの四分の一で、それでも日韓は仲良くしなければならない、という論が展開します。なぜ仲良くしなければいけないかというと、放置すれば中国の陣営に行ってしまうからという理由です。
そして、韓国の反日は一部の人間が騒いでいるだけであって(日本大使館へのデモはいつも同じメンバー)、東日本大震災の時など韓国全土で募金活動があったことからも分かるように、韓国人の本音は日本を嫌っていない。むしろ、日本人の嫌韓の方が重症である。
韓国の優秀な若者を日本で雇用することでwin-winの関係になろう、と結んでいます。
しかし、武藤氏の分析では、そして一般の分析でも、韓国は経済で中国に傾斜し、安全保障で米国に頼ろうとしています。日本が韓国をつなぎとめようとしても、安全保障の分野で韓国が歓迎することは何もありません。経済の分野で、中国が韓国に提供するような市場や安価な労働力も提供できません。技術供与とか投資ならできます。中国が提供するものを日本が提供できるものは違います。したがって、韓国の中国傾斜を阻止することは結局はできません。
また、韓国が中国の陣営になったからといって、帝国主義の時代ではありませんので、とりたてて困ることはないようにも思います。もしかしたら北朝鮮が挟み撃ちの形になるので、日本には好都合かもしれません。
韓国の反日は、多くの識者が指摘しているように華夷秩序の序列意識に基づくものです。格下である日本が韓国に逆らうのが許せないという感情ですので、震災に苦しむ日本を助けることの妨げにはなりません。むしろ、華夷秩序的には正しいことです。
つまり、韓国の反日は、世界にある反米とは性質が違います。震災時に募金をしたからといって、韓国人一般が反日であることに変わりありません。世論調査の結果を受け止めるべきです。
韓国に優秀な若者はいるでしょう。しかし、優秀な若者がいるのは韓国だけではないはずです。インドにもペルーにもギリシャにも優秀な若者はいるはずです。その中で特に選んで韓国人を日本で働いてもらうという理由はありません。
韓国との友好を否定するつもりはありません。どこの国とも仲良くなるのは結構なことだと思います。しかし、特に韓国と親しくならなければならないとは全く思いません。仲が悪いなら悪いで仕方ないと思います。まして、日本人には受け入れがたい華夷秩序の意識を持っているかぎり、日韓友好は無理でしょう。
武藤氏のような日韓友好絶対必要論は、ちょっと理性的ではないようにも思います。