【朝日新聞】ベーシンインカム
政府があらゆる人にお金を配るベーシックインカム(BI)に、著名な経営者が共感を表明しています。IT大手フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏や電気自動車テスラのイーロン・マスク氏らが知られていますが、日本でもオリックス元社長の宮内義彦シニア・チェアマン(85)が支持を明らかにしています。熾烈(しれつ)な競争社会を勝ち抜いて富を手にしながら、なぜ「究極の安全網」に関心を持ったのか。その理由を聞きました。
(略)
――コロナ禍の経済対策として、特別定額給付金でも一律10万円が配られました。
「1回だけだとダメ。使わない。来月ももらえると思うから使う。だからベーシックインカムは面白いんです。財政は危機的ではない。1千兆円の国債を発行し、このうち4割超を日本銀行が持っている。政府と日銀を統合して考えれば、国債残高は600兆円ぐらい。びっくりするほどの額でもない」
(略)
――生活保護などの社会保障制度もあります。
「社会保障はかわいそうな人にあげようというもの。そういう人がいま、どこにいるのかわからなくなっている。政府はピンポイントで配ろうとしているが、当たらないことが多い。そういうことがないのが、みんなに配るベーシックインカムのいいところ。社会保障との関係はややこしい話だが、ずっとやってきたものをベーシックインカムができたらやめるなんて、そんなバカなことはできない。ものすごい調整がいる。ベーシックインカムは生きる権利として与えるもの。社会保障は上から目線の扶助で、思想がまったく違うんです」
(略)
――富の集中も問題視されています。
「最も社会を揺るがすのは、やはり底辺の拡大でしょう。上のやつが金持ちすぎるから税金でとれというのは、倫理的なのかどうか問われる。日本は格差というよりも公正さが欠けてきたと思う。典型的なのが正規雇用と非正規雇用の扱いの差。一方は保護されて団結力もあって交渉力もある。もう一方は見捨てられているわけです。雇用のあり方、労働法規を変えないといかん。正規で雇ったら解雇できないというなら、そんなおそろしいものはやめてパートでいいか、と企業はなる」
(略)
――米国では経営者と従業員の報酬の格差も深刻です。宮内さんも2014年度に退職時の功労金込みで50億円以上の報酬をもらいました。
「自分が決めた額ではないし、辞めたあとでもらったわけで……。米国の経営者だったら、あと10倍はもらえたと思う」
――日本の経営者も報酬をもらいすぎているという批判は、あたらないということですか。
「経営者は何兆円という大資産を動かすプロ。うまくやるのと下手にやるのとで、桁違いの業績差になる。それに対してコンマなんぼの報酬をだすのは当たり前です」
(略)
最近話題のベーシックインカムです。
私自身はベーシックインカムについては、現時点ではよく分かってはいないので賛成も反対もないのですが、賛成派の意見には納得しにくいところがあります。その代表的な意見として、宮内氏のインタビューを引用してみました。
■
ベーシックインカムに類似したものとして今年の10万円の給付金がありました。生活困窮者は使ったのでしょうが、特に困っていないひとの支出が増えたということはありませんでした。私も銀行に振り込まれたのを確認してそれで終わりです。
宮内氏は「1回だけだとダメ。使わない。来月ももらえると思うから使う」と言っていますが、理由が分かりません。つかう人はつかうけど、つかわない人はつかわないと考えるのが自然です。
■
>社会保障との関係はややこしい話だが、ずっとやってきたものをベーシックインカムができたらやめるなんて、そんなバカなことはできない。ものすごい調整がいる。ベーシックインカムは生きる権利として与えるもの。社会保障は上から目線の扶助で、思想がまったく違うんです
思想の違いという説が分かりません。社会保障も生きる権利として与えられるものです。社会保障は上から目線かもしれませんが、ベーシックインカムだって上から目線かもしれません。
また、社会保障との関係を「ものすごい調整がいる」と言っているもの注意です。そのまま手付かずで続行するとは言っていません。ベーシンインカム部分を差し引いて続行するというなら分かりますが、それだけの「調整」ですむかどうか疑わしいです。
また、年金や医療保険に手を付けるつもりなのかも気になります。
それらを止めてベーシックインカムにするというなら私は反対します。
■
>上のやつが金持ちすぎるから税金でとれというのは、倫理的なのかどうか問われる
税金というのは金の再分配なので、金持ちからとるのは倫理的に正しいことです。
非正規と正規に格差が問題だから、正規職のクビを切りやすくしろ、と言っておいて、自身の50億もの退職金を「自分が決めた額ではないし、辞めたあとでもらったわけで」と正当化する方が倫理的に問題です。
自分で決めたことでないから構わないという理屈は成立しません。自分でくつがえすことだってできたはずなのに受けったということは自分で決めたのと同然です。また、退職金は誰でも辞めたあとにもらうものですから、あとでもらったというのは正当化する理由になっていません。
■
もしかしたらベーシンインカム自体はいいものなのかもしれませんが、推進している人間がうさん臭いので、眉に唾を付けておくことにします。