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【朝日新聞】社説:裁判員制度5年 社会で経験蓄え育てよう

5月23日、朝日新聞の社説。

 すでに約5万人が担い、6千人以上に判決を言い渡した。
 くじで選ばれた市民6人が、裁判官3人と刑事事件を裁く裁判員制度が始まって5年たつ。
(略)
 さらに実のあるものにするための課題は少なくない。
 まず見直すべきは、裁判員裁判の対象の狭さだろう。
 殺人、強盗致死など重大事件に限られ、公判になる事件の2%にとどまる。大方は被告が罪を認めた事件で、裁判員が悩むのはもっぱら刑の重さだった。
 刑事裁判は有罪率が100%近く、検察が主張する有罪を確認する場だと指摘されてきた。それをふまえれば、有罪か無罪かの判断にこそ市民の目を生かすべきではないか。
 厚生労働省の村木厚子さんが巻き込まれた郵便不正事件、警察が捏造した鹿児島県議選事件、痴漢の誤認などをみても、冤罪のリスクは重大事件だけでなく身近な事件にもある。
 被告が起訴内容を争っている事件には裁判員が関与できるよう、対象を広げるときだ。
 死刑の選択に市民が直接向き合うようになったのも、裁判員制度がもたらした変化である。
 ことし3月末までに裁判員裁判で28件の死刑の求刑があり、21件で死刑、6件で無期懲役刑、1件で無罪の判決が出た。
 死刑判決のうち3件は、控訴審で無期に減刑された。
 誤判のおそれは常にある。死刑は執行したら取り返しがつかない。その決定の手続きには一点の疑いもあるべきではない。
 しかし、いまの評決ルールは多数決だ。多数意見に1人以上の裁判官が入る必要があるものの、5対4でも死刑は決められる。慎重な上にも慎重なルールとは言いがたい。
 死刑を続ける先進国は、日本以外には米国の一部の州があるだけだが、米国でも近年、死刑の選択はほかの手続きより厳格なものに改めてきた。
 日本弁護士連合会は、死刑評決は全員一致にすべきだと唱える。議論が尽くされたといえない点であり、再検討を要する。
(略)
 最高裁が毎年行う世論調査で「裁判に参加したい・してもよい」と答えた人は09年度の19%から昨年度は14%まで落ちた。
 候補になったが辞退する率は、09年の53%から昨年の63%へと増えている。
 制度が定着とは逆行しているように見えるのはなぜか。
 「裁判員の経験を社会で共有できていないことが妨げとなっている」。この制度と社会のかかわりをみてきた飯考行・専修大学准教授はそう語る。
 打開策の一つは、生涯課される守秘義務の見直しだ。裁判員法は評議の大まかな流れや判決に対する意見を述べることを禁じており、経験を話題にすることさえ、ためらわせがちだ。
(略)


裁判員制度を導入した目的は、「国民の皆さんの視点,感覚が,裁判の内容に反映されること」と「裁判が身近になり,国民の皆さんの司法に対する理解と信頼が深まること」、「そして,国民の皆さんが,自分を取り巻く社会について考えることにつながり,より良い社会への第一歩となること」です。(法務省のホームページより)

したがって裁判員制度を検証するのであれば、これらの目的が達成されているかということと、この制度によって弊害が発生していないかが論点になります。その意味でこの社説には疑問があります。

社説は冤罪防止のために裁判員制度による裁判の対象拡張を求めていますが、冤罪防止は裁判員制度の目的ではありません。それに、市民裁判員による裁判にすると何故冤罪が防げるのか理由が示されていません。普通に考えて素人が判断したら冤罪が増える恐れがあります。冤罪を防ぐことは誰もが賛成することですが、裁判員制度にそれを求めるのはピントはずれです。

また、死刑判決をできるだけ少なくする目的で裁判員制度の改正を求めていますが、これは筋が違います。死刑廃止を訴えるのであれば、死刑の替わりの刑罰をこれこれにすべき、という提案をして進めるべきです。裁判員の心理的負担を高めるという姑息な手段によってなすべきことではありません。

守秘義務が厳しすぎるというのは、裁判員制度の本来の目的の一つ(「裁判が身近になり,国民の皆さんの司法に対する理解と信頼が深まること」)に抵触するので見直しが必要だ、という指摘には的確だと思います。誰にも話せないなら裁判は身近にはなりませんし、司法の理解は深まりません。

また、社説で言及がありませんが、裁判員制度によってそれまでの裁判と比べ量刑に統計的に有意な違いが出ているのかも知りたいところです。仮に裁判員制度で量刑に違いがないのであれば、何らかの理由で市民感覚が裁判に反映していないのか、そもそも市民はプロの裁判官と同じ感覚だったということになります。違いがあるのなら、どういう罪で重くなったのか、あるいは軽くなったのかというのが次の関心事となります。

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