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【朝日新聞】対談:日韓の緊張、メディアの役割

6月24日朝日新聞朝刊オピニオン欄に、朝日新聞・大野博人氏と東亜日報・黄鎬澤氏の対談「日韓の緊張、メディアの役割」が載りました。

原発問題、慰安婦問題などを話していますが、ここでは、安重根記念館についての対話を取り上げます。

 ■安重根記念館 大野「なぜ今建設するのか」 黄「民族の自尊心を示す」
 大野: ところで中国・ハルビン駅にできた安重根記念館ですが、私自身は大きな違和感がありました。こういう動きは政治的な振る舞いとして正しいと思いますか。
 黄: 伊藤博文は日本の初代首相であり、紙幣にも肖像が使われた。でも韓国では伊藤は侵略の元凶であり、韓日強制併合の主役です。朴大統領は韓中首脳会談で中国の習近平国家主席に、安義士が伊藤を狙撃したハルビン駅に標示石を設置してほしいと求めたのですが、中国は記念館を作りました。
 大野: 記念館建設に違和感を覚えるのは、安が犯罪者という理由からではありません。韓国で安が義士と呼ばれることはよく知っていますし、日本では伊藤の功罪もいろいろ言われます。そうではなく、こんな東アジアの政治情勢の中で記念館を作るのが正しい判断かということです。日中韓の間に緊張のない状況であれば、開館時に日本の政治家がいたかもしれない。日本の保守政治家の中にも安をすばらしいと言った人はいましたから。しかし、政治的な事情で記念館建設を今の文脈で進めることはおかしいのではないか。朝日新聞の社説は安倍晋三首相の靖国神社参拝を批判しましたが、同じような視点も理由のひとつでした。
 黄: 安義士について多くの日本人はテロリストだとの認識を持っていませんか。しかし、伊藤博文を撃ったとき、韓国と日本は戦争中だったと考えます。日本の侵略と国権剥奪に対し、国の独立を守ろうという義兵が全国で立ち上がりました。伊藤狙撃は戦争中に敵国の司令官を殺したのと同じことです。安義士は韓国の独立闘士です。
 大野: 安に限らず、独立の英雄というのはテロリストと見られたり、解放された側から英雄と見られたりするケースは歴史上、山のようにあります。明治維新の時もそういう人がいたし、東ティモールのグスマオ氏や南アフリカのマンデラ氏だってそうでした。多様な側面を持った歴史的人物を、このタイミングで持ち出して、自分たちが支持を集めるための政治的な資源として使う振る舞いをどう考えるか。
 黄: 安義士の独立にかけた意志を政治的な資源として利用しようとしているという非難は、韓国の現実に対する知識が十分ではないため出るのだと思います。侵略された民族として、すべての韓国人が安義士の愛国的な行動に自負心を感じています。韓国侵略の先頭に立っていた人物を殺害した義士を敬い、たたえずして、どうやって民族の正統性を子々孫々に伝えられるでしょうか。
 大野: うーん。安が韓国で尊敬されていることは否定しません。でもなぜそれが今なのか、です。
 黄: それは日本的な視角です。日本には、なぜ韓国はいつも「謝れ」と言うのかという「謝罪疲れ」があるでしょう。一方、韓国には日本に対する「妄言疲れ」があります。なぜ今かというと、高い支持を得ている安倍政権が隣国に与えた苦痛や被害を認めないような発言をするため、韓中は同じ被害国として自尊心を打ち立てようとするのです。
 大野: 私たちは安倍政権から妄言が出れば批判します。そのことで自らも批判の的になる。それでも政権の振る舞いを相対化する役割を担わなければいけないと思うのです。
 黄: 朝日新聞も東亜日報も部数の多い新聞です。普遍的な大衆の心情と完全に遊離した論調を展開することはできません。ただ、私たちもあまりに日本に対して排他的な動きが出ていることには警戒の声を上げます。たとえば、歴史問題で今こそ中国と力を合わせるべきだという声がありますが、ケース・バイ・ケースだと思います。韓国と中国の間にも歴史問題があります。一時は中国東北部まで勢力を伸ばしていた高句麗という国がありますが、これを中国は自国の地方政府だったといって歴史を歪曲しようとしている。私たちは日本に対抗するために中国と手を握るのではなく、記念館のように、被害者として一致する分野についてのみ協力するわけです。


対談を終えて、として大野氏、黄氏がそれぞれ語っています。黄氏の発言を引用します。

 ■悲観していない 
 大野主幹と最も熱く議論したのは安重根義士のことだった。大野さんは、北東アジアの気流が敏感な時期に中国と韓国が手をとって記念館を作ることが果たして適切なのか、と長時間、表現を変えてただした。大野さんが問題を提起し、私が防御する形だった。
 大野さんは、記念館建設の際、批判的に論じたと述べた。結局は日本と韓国の国民の、伊藤博文と安義士への評価の違いから生じる問題であった。
 朝日新聞は安倍晋三首相の靖国神社参拝や慰安婦問題での発言にあたり、他の新聞より勇気をもって批判してきた。だが、初代首相である伊藤を狙撃した安義士については、進歩的な新聞でさえも日本人の平均的な心情を意識せずにはいられないようだった。
(略) 


黄氏の意見については同意しませんが、大野氏の意見にも賛同できません。

まず、黄氏の「安義士について多くの日本人はテロリストだとの認識を持っていませんか」について私見を述べます。

安重根はテロリストです。政治的主張のために暗殺という暴力的行為に出たのですからまぎれもなくテロリストです。「韓国と日本は戦争中だった」という説は無理があります。

ただし、テロリズムには要人だけを狙ったものから、無辜の民を巻き込むようなものやら、はじめから無辜の民を標的にしたものまであります。あの暗殺は伊藤博文だけを狙ったものです。テロリストであることは事実ですが、テロリストであるという理由で安重根を否定すべきとは思っていません。

黄氏の「日本と韓国の国民の、伊藤博文と安義士への評価の違いから生じる問題であった」というまとめは、大野氏の「記念館建設に違和感を覚えるのは、安が犯罪者という理由からではありません」という発言を無視しています。

初代首相である伊藤を狙撃した安義士については、進歩的な新聞でさえも日本人の平均的な心情」という発言は、一般の日本人が伊藤博文を敬愛しているため安重根を憎んでいる、と思ってのことでしょう。しかし平均的な日本人は歴史上の人物である伊藤博文を善悪といった切り口で評価していません。日本人は歴史と道徳を切り離しています。

歴史を道徳で論じないという日本人の感性が、黄氏には理解できないのだと思います。

一方、大野氏の「自分たちが支持を集めるための政治的な資源として使う振る舞い」という批判も疑問です。韓国が安重根を持ち上げるのは最近になってのことではありません。昔からです。政治的な下心があったといった批判は、韓国人には受け入れがたいでしょう。

事の本質は、中国による日韓離反策です。韓国からすれば中国と共闘しているつもりかもしれませんが、中国は韓国を取り込もうとしています。大野氏の分析は、この問題を日韓だけの問題と考え、中国という要素を無視しています。
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