【朝日新聞】投書欄「どう思いますか」:“護憲派へ、自衛隊は違憲でしょ?”
■護憲派へ、自衛隊は違憲でしょ?
安全保障関連法の議論は空虚だ。右も左もめちゃくちゃ。一段上から傍観する態度は嫌いだが、今回ばかりはそういう態度を取らざるを得ない。明らかに憲法違反なのに、合憲と言い張る政権の横暴は散々批判されている。だから、立憲主義を盾に安保法ログイン前の続きに反対する人たちへ批判を書きたい。
憲法9条を素直に読めば自衛隊の存在は違憲だ。それなのに、護憲派から違憲だという批判が聞かれない。立憲主義を貫き通すならば、整合性が取れる立場は9条改憲論者か自衛隊解散論者だけだ。
僕の立場は前者である。違憲立法などせず、自衛隊を軍隊として位置づける憲法改正をすべきだと思っている。対して、安保法に反対するデモ参加者は大半が護憲派だ。護憲だけれども、自衛隊は現状のままでよいという人が大多数ではないか。そうなら、立憲主義を語る資格などない。
「改憲派だけれども安保法には反対」と考えている僕は、来年の参院選で誰に投票すればいいのだろうか。
(10月4日付掲載の投稿〈要旨〉)
実にもっともな意見です。
これに対して兵庫県の会社員男性(49)は、『改憲の議論すらご法度な護憲派の方々に、ぜひ柔軟に考えて頂きたい』と、賛成しています。
岩手県の農業の男性(67)は、『国際法上、個別的自衛権の行使は各国の権利として認められている。自衛隊が専守防衛に徹する限り、合憲と解釈』としています。要するに、従来の政府解釈です。しかし、元投書の、それも解釈改憲じゃない? という疑問への回答になっていません。また、集団的自衛権も各国が権利として保有していることも意図的にか無視しています。
千葉県の主婦(57)は、さらに酷い回答です。『改憲は国民投票で決めるもので、一内閣の解釈改憲は許されません』と、元投書の疑問をまるっきり無視して、野党の言い分そのままの主張です。
福岡県の大学名誉教授(68)の意見は引用します。
「誰に投票すればいいのだろうか」と悩む必要はありません。立憲主義を守るということと、日本の将来を考えて改憲するかどうかを決めることは、別の問題だと考えた方がよいでしょう。
まず、立憲主義を守るという点を考えてみましょう。違憲と考えられる法案を、国民の声をよそに数の力で成立させた安倍政権と与党は、国民に刃を向けたと言ってもよいと思います。だから、来年の参院選は誰に投票すべきで、誰に投票すべきでないか判断できます。
次は改憲の問題です。自衛隊を軍隊にして武力で国を守るのか。専守防衛に徹して自衛隊を維持しながら外交力で国を守るのか。自衛隊をなくして平和外交だけで国を守るのか。国民が時間をかけて議論し、国民の意思で憲法9条を維持するか改正するか判断すべきだと思います。主権者は国民ですから。
頭が痛くなります。
元投書は、安倍政権だけでなく、護憲を主張している野党も、自衛隊を認めている以上は立憲主義に反している。一部、自衛隊解散論をいう野党はあるが、これは自身の主張と真反対。故に、投票先がない、との主張です。
まるで人の話を聞いていません。
識者の意見は、木村草太・首都大学東京准教授(憲法学)です。これも引用します。
確かに憲法9条だけを読めば、自衛隊の存在は違憲と映るでしょう。ただ、憲法13条は、国民の生命や自由、幸福追求の権利を尊重するように定めています。国民の平和な生活を守るために、国の安全を確保する責任が政府にあると読めます。
つまり、必要最小限度の個別的自衛権の行使は例外的に認められ、そのための組織である自衛隊の存在は合憲であると解釈できるのです。
9条は究極的には、非武装を目指していると思います。ただ絶対非武装ではなく、非武装を選択できる国際社会の実現を求めているのです。
せっかく憲法に興味を持ったのですから、日本国憲法全体を読んでほしい。そして、条文の文言を読むだけでなく、条文が実現しようとする理念を読み解いてほしいと思います。
9条は自衛隊を認めていないという意見は、けっして憲法学者の間で異端視されていないはずです。元投書の高校生が勉強不足であるかのような決め付けは失礼です。
憲法全体を読んでほしい、というなら、前文の次の箇所を読みます。
(日本国民は)平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
つまり、外国は平和を愛するがゆえに攻撃などしかけてこないから、それを信頼しています、ということです。これと9条を合わせて考えれば、個別的自衛権を放棄していると考えられます。13条は、治安とか衛生とかの内政の話ではないでしょうか。
普通に考えれば、これが日本国憲法の理念です。
無理な理屈での自衛隊(個別的自衛権)合憲を主張は、元投稿の高校生の心に届かないでしょう。