【朝日新聞】投書欄「どう思いますか」:“改憲派から護憲派へ3点質問”

9月14日朝日新聞朝刊の投書欄。毎週掲載の、投書に対する反響の投書を載せる「どう思いますか」のコーナー。今週は、“改憲派から護憲派へ3点質問”について。たたき台となった意見は愛知県の無職の男性(83)の次の投稿です。

 参院選の結果、憲法改正の議論が本格化しそうです。しかし、これまでの議論は改憲派と護憲派の意見がかみ合わないまま推移しているのではないでしょうか。両派の間で質問と回答を重ねる議論が必要と考えます。まず、改憲派の私から護憲派のみなさんに質問させていただきます。
 (1)戦争放棄や戦力の不保持が9条に定められているが、それだけで日本は戦争を仕掛けられたり戦争に巻き込まれたりしないという根拠はあるか。
 (2)改憲派の「日本が第2次大戦後、戦争をせずにこられたのは、日米安保体制や自衛隊の存在のおかげ」という意見をどう思うか。この考えを否定されるなら、日本が平和を維持できた理由をどう考えているか。
 (3)日本の近隣には核武装を進める北朝鮮や、南シナ海や東シナ海で覇権をうかがう中国がいる。こうした国々の覇権主義的な行動を止めるには、対話のほか、抑止力として一定の軍事力も必要ではないのか。
 ぜひ護憲派の方々のご意見を伺いたい。


論点が整理されていて、有益な投稿です。この投稿を私なりに解釈すると、“9条は戦力不保持をうたっているので自衛隊は違憲だ。しかし自衛隊は必要なので、憲法の方を改正すべし”、という意見です。9条を守って自衛隊を解散すべしという護憲派への質問だとみました。9条と自衛隊が矛盾していないという意見については触れていません。

4つの意見が寄せられています。まず、熊本県の大学生の男性(22)の意見。

 両派の間で議論が必要とのご投稿に大いに賛成です。私の回答は次の通りです。
 (1)戦争を仕掛けられないという根拠は、憲法の理念に基づいた具体的な外交や安全保障政策を通じて作り上げていくものです。
 (2)国際関係は様々な要素で動き、平和が続いた理由を安易に絞り込むことはできません。日米安保と自衛隊がなければ戦争に巻き込まれていたのではないかと考えるのであれば、9条がなければ日本がベトナム戦争や朝鮮戦争に巻き込まれ、日本の若者も血を流していたのではないかという可能性も考えるのがフェアでしょう。
 (3)軍事力による抑止に依存することは軍拡競争をもたらし、地域の緊張を高めます。日本が「戦力」を整備することは、かえって紛争の危険を高めることになりかねません。
 軍隊を持つか否かという硬直した二者択一にとどまらず、9条改正の議論を安全保障を柔軟に構想する議論に発展させたいものです。それが日本の民主主義に貢献すると思います。


(1)は9条と9条の理念で平和が守れる、とのご意見のようです。しかし、尋ねられている「根拠」については述べられていません。
(2)は、元投稿を誤読していると思います。元投稿は、戦後の平和に自衛隊と日米安保が貢献したと思うかどうかを問うています。9条の貢献があったかどうかは訊いていません。
日本が攻撃されなかったのは自衛隊と日米安保のおかげじゃないか、という意見であって、日本が攻撃しなかった理由を訊いているわけではないと思います。
(3)は、危険と思われる政権が近くにあるけど、戦力を整備するとかえって危険だという意見です。
この方が、9条と自衛隊は矛盾しないと考えているのかどうか分かりません。これが元投稿子の質問の核心です。

長野県の会社役員の男性(39)の意見は、

 私の考えは、こうです。
 (1)絶対的な根拠はありません。しかし、武力による威嚇や行使を初めから放棄し、交戦権を否認している国に対し、先制攻撃を仕掛けてくる国があるのでしょうか? 実行すれば、攻撃した国は国際社会から孤立することになります。そのリスクを考えると、攻撃を仕掛ける可能性は少ないと言えると思います。
 (2)日米安保体制や自衛隊に加えて、9条に基づく平和主義、そして何より、戦争を経験した方々の平和への思いゆえ、平和が維持できたと考えます。戦争が始まれば命が失われ、すべてが破壊される。その悲惨さを知る世代の思いです。
 (3)自衛のための軍備は必要と考えます。私は憲法の中で基本的人権が最も大事だと考えますが、それを守るためにも。ただ、どの程度の軍備なら自衛のための範囲内と言えるのか、といった部分を議論する必要があるでしょう。
 世代の違う投稿者さんと、是非語り合いたいですね。


(3)で軍備は必要と意見を表明しています。多分、自衛隊と憲法は矛盾していないという意見なのでしょう。したがって、この方は元投稿子が問いかけた「護憲派」ではありません。

大阪府の派遣社員の女性(51)の意見です。

 私は、憲法に修正が必要な部分はあるが、憲法9条の改変は不要だと考えています。以下、ご投稿にお答えします。
 (1)9条の存在だけで戦争回避はできません。9条の理念を国際社会に広め、その理念が実現するよう積極的に働きかけるべきです。
 (2)「日本が平和を維持できたのは9条のおかげ」とも考えられます。9条がなければ日本はすでに米国の戦争に巻き込まれ、派兵していたのでは。自衛隊や米軍基地と9条の共存は矛盾するとの意見もありますが、平和の理念と軍事力の共存は、国際社会全体が抱える矛盾でもあります。
 (3)軍事力で戦争を避けられるという論理に根拠はあるのでしょうか。抑止力に頼れば、必ず軍拡競争になります。「一定の軍事力」は先々、「無限の軍事力」になるのではないでしょうか。軍事力で国際問題が解決した例はなく、複雑な問題には多様なアプローチが必要で、日本は欧米とは違う手法を取ることが可能です。憲法をもっと積極的に使いこなすべきです。


(1)は、世界中が9条を持てば、つまり世界中の国が戦力を放棄したら戦争は起きない、という意見です。正しいと言えば正しいのですが、現実感がまるでありません。
(2)は、日本が攻撃されるという可能性を全く考えていません。つまり元投稿子の質問に答えていません。
(3)は、元投稿子が「対話のほか一定の軍事力も必要」という意見を無視し、あたかも軍事力だけを肥大させろと言っているように誤読しています。そもそも、第2次世界大戦は、日本が米国の軍事力で負けたことで終わったのです。他にも「軍事力で国際問題が解決した例」は山のようにあります。世界史のどこを見ているのでしょうか?

神奈川県のアルバイトの女性(65)の意見です。

 ご投稿は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の東シナ海・南シナ海をめぐる動きが日本にとって危機的状況に入ったとみての声だろう。
 歴代政府は日米安保や自衛隊を個別的自衛権の範囲内と解釈してきた。国民は9条の戦争放棄・平和主義を支持しており、個別的自衛権の範囲内ならばと自衛隊などを認めてきたと思う。
 しかし、安倍内閣は「日米同盟強化」を名目に集団的自衛権の行使を認め、安保関連法を強行採決した。こうした中、中国や北朝鮮の不穏な動きは沈静化するどころか、むしろ活発化している。
 ここで日本が中国・北朝鮮脅威論に応えるべく9条を改変すれば、中国・北朝鮮に軍拡の口実を与え、各国の世論も揺さぶられ、北東アジア情勢は流動化しかねない。同盟強化が逆に「安全保障のパラドックス」として作用してしまう。
 私たちは、9条が侵略や植民地支配への反省の上にできた重みを、思い起こすべきだ。日中・日朝の正常な関係は、加害国日本がきちんと歴史に向き合っているとの信頼があってこそ成り立つ。


この方の意見自体は、必ずしも間違っているとは思いません。動機はともかく、9条を改正すれば、それが中国や北朝鮮に影響することはありえます。しかしながら、せっかく元投稿子が論点を整理したくれたのに、それを無視して持論を展開するのはいただけません。元投稿とは無関係に寄せられた意見を、朝日新聞がここに掲載しただけかもしれません。

次回もこのテーマが続くそうです。
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