【朝日新聞】奉じる「自由」の不自由さ

10月21日朝日新聞朝刊のオピニオン欄。「イスラムと欧米」というテーマで、イスラム思想家タリク・ラマダン氏のインタビューが載っています。それに付随する“セカンド・オピニオン”という意味なのか、東京大学先端科学技術研究センター准教授・池内恵氏のコメント『奉じる「自由」の不自由さ』が掲載されています。普通は、メインのインタビューを補強するような論調が並ぶ欄なのですが、今回は“イスラム思想”にかなり辛辣な意見で興味深いです。

 西欧が自由と平等を掲げる以上、イスラム教にも様々な権利を与えるべきだと考える人は多いでしょう。では、そのイスラム教は西欧のような自由を認めているでしょうか。イスラム社会で他の宗教を信じることが許されますか。
 イスラム教の教義が主張しているのは、正しい宗教、つまりイスラム教を信じる「自由」です。ユダヤ教やキリスト教などは、間違いはあるが許容できる宗教として、信者がイスラム教の優位性を尊重する限り存在が認められますが、多神教は明確に排撃されます。実際、中東諸国で仏教寺院を建てることはできません。イスラム教の信仰を捨てる自由も認められない。欧州で「少数派の権利を守れ」と主張するイスラム教徒が、イスラム教が多数派の社会では「少数派や異教徒は神が決めた区別を受けるのは当然だ」と信じているところにズレがあります。
 ブルキニ問題も、単に服装の自由とのみ見るべきではありません。背景にあるのは「男性は身内の女性を所有し、保護する義務と同時に監督・支配する権利を持つ」というイスラム社会に根強い発想です。イスラム教のもとで、女性と男性は、平等ではありません。ブルキニを着る「自由」は、西欧社会にイスラム的な男女・家族関係を持ち込みます。
 その点をムスリムに指摘すると「イスラムへの差別だ」と反論します。でも、ムスリムとイスラム教をすり替えてはなりません。近代的な人権規範の下では、人としてのムスリム差別は許されませんが、イスラム教の宗教規範を批判する権利は認められるべきです。
 イスラム教の不平等や不自由な面に、イスラム思想家は言及しようとしません。ムスリムの自由を守るふりをして、自由を放棄させる思想を欧米社会に植え付けようとしている。そう見られても仕方ないでしょう。
 この問題は、「自由な社会は、自由を否定する思想も受け入れてなお維持できるのか」という普遍的な問いかけを含んでいます。ただ、欧州のリベラル派はそのことに気づいていない。自らが奉じる「自由」という言葉が普遍的であるという観念に惑わされ、西欧思想と同じ意味でイスラム教も自由で平等な思想だと勘違いしているからです。


自由と平等の名のもとにイスラム教の考えを容認すれば、内在する不自由と不平等もいっしょについて来ますよ、という指摘だと受け取りました。

なるほど、とも思いますが、賛成はできません。

イスラム世界が不自由で不平等であろうと、西欧や日本がイスラムの思想がイスラム教徒への差別が許されるということはありません。彼らの母国がどうであろうと、「自由と平等」の社会に来た以上、平等に扱われるべきです。

イスラム教徒という集団をひとくくりにして、イスラムの国では他宗教を差別しているのだからこの国ではイスラム教は差別されます、というのは「自由と平等」の価値観とは違います。

「自由な社会は、自由を否定する思想を受け入れる」べきです。もちろん具体的な行動に出れば制約を受けます。「維持できるか」は維持できるように法の秩序を守れるかにかかってきます。思想そのものは自由であるべきです。

ブルキニも、イスラム教徒の女性が自発的に着たい、というのであれば規制するのは「自由」の思想に反します。他宗教の女性に着ろ、と言っているわけではありません。ブルキニの背景の思想が気に喰わないからという理由で規制をかけてしまえば、「自由」の思想は内側から壊れてしまいます。

西欧のリベラル派も、イスラム教が西洋思想と同じ意味で自由で平等な思想と勘違いしているわけではないのだと思います。それを知った上で、自分達の社会の価値観を表明しているように見えます。
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