【朝日新聞】小熊英二氏の「論壇時評」

12月23日朝日新聞朝刊のオピニオン欄。歴史社会学者・小熊英二氏の「論壇時評」は『脱ポピュリズム 「昭和の社会」と決別を』でポピュリズムについてでした。

 ポピュリズムの支持者は誰か。遠藤乾はEU離脱支持が多い英国の町を訪ねた。そこでは移民の急増で病院予約がとれず、公営住宅が不足し、学級崩壊も起きている。「英国のアイデンティティ」の危機を感じる人も多い。
 だがこの論考で私の目を引いたのは、現地の女性が発したという以下の言葉だった。「彼ら移民は最低賃金の時給七ポンド弱(約九百六十円)で休日も働き残業もいとわない。英国人にはもうこんなことはできないでしょ?」
 私はこれを読んで、こう思った。それなら、日本に移民は必要ないだろう。最低賃金以下で休日出勤も残業もいとわない本国人が、大勢いるのだから。
 西欧で移民が働いている職場は、飲食や建設などだ。これらは日本では、(外国人や女性を含む)非正規労働者が多い職場である。西欧では移民が担っている低賃金の職を、日本では非正規や中小企業の労働者が担っているのだ。
 それでは、英国でEU離脱を支持した層は、日本ならどの層だろうか。日本の「非正規」が英国の移民にあたるなら、それは「非正規」ではないはずだ。
 先月も言及したが、大阪市長だった橋下徹の支持者は、むしろ管理職や正社員が多い。低所得の非正規労働者に橋下支持が多いというのは俗説にすぎない。
 米大統領選でも、トランプ票は中以上の所得層に多い。つまり低所得層(米国ならマイノリティー、西欧なら移民、日本なら「非正規」が多い部分)は右派ポピュリズムの攻撃対象であって、支持者は少ない。支持者は、低所得層の増大に危機感を抱く中間層に多いのだ。
(略)


■「トランプ票は中以上の所得層に多い」のか?
今回の米大統領選の結果で私がもっとも興味をもったのは、なぜクリントン有利との事前の予測が外れたのか、という点です。

一つ、はっきりしたのは世論調査の回答率が一割以下と低かった(精度が悪かった)ということです。しかし、精度が悪かったのであれば、各世論調査はバラバラな結果になるはずです。しかし、すべての調査はクリントン有利で一致していました。

もう一つの理由は、隠れトランプ、です。トランプ支持といいにくい雰囲気があって(アメリカ人も空気を読むの?)世論調査では答えなかった、というものです。

真偽はともかく、この件に関する世論調査が不確かだったのは確かです。

したがって、「トランプ票は中以上の所得層に多い」と言い切るのは勇み足です。事前の世論調査で答えなかった人たちが事後の調査で、自分の所得も含めて正直に答えるはずがありません。

■ポピュリズムの定義は?
リベラルというか左派というか、そうした傾向の識者の云う“ポピュリズム”という言葉は、ひどく軽薄な感じがあります。大衆に一定の支持がある自分の嫌いな政治傾向を“ポピュリズム”という単語に押し込めている気配を感じます。

英国のEU離脱がポピュリズムで、残留派がポピュリズムにならない理由が分かりません。離脱派は自国に閉じこもったともいえますが、世界とつながろうとしたという面もあります。残留派はEUに門戸を開けますが、EU内に閉じこもるという側面もあります。

ところで、スコットランド分離独立派はポピュリズムなのでしょうか?

定義のあいまいな言葉で論評しているように見えます。

■英国人に低賃金の人はいないの?
英国人女性の「英国人にはもうこんなことはできないでしょ?」という言葉を根拠に、英国人に下層階級はいない、という断定は乱暴です。

本当に移民が低賃金で英国人が中高賃金と分離されているなら、賃金競争を理由とする移民との葛藤はないはずです。実際には賃金競争で負け続けているから「英国人にはもうこんなことはできないでしょ?」という言葉になったと考えるのが自然です。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

sidetitleプロフィールsidetitle

えいび

Author:えいび
日々の出来事、映画やアニメの感想です。

sidetitle最新記事sidetitle
sidetitle最新コメントsidetitle
sidetitle最新トラックバックsidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitleFC2カウンターsidetitle
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleRSSリンクの表示sidetitle
sidetitleリンクsidetitle