【朝日新聞】AVへの出演強要

1月13日朝日新聞朝刊のオピニオン欄。「耕論」のコーナー。「AVへの出演強要」についてです。

アダルトビデオ(AV)への出演強要とはなにかについては、弁護士でNGO「ヒューマンライツ・ナウ」の事務局長である伊藤和子氏の発言を引用します。

タレントやモデルにならないかなどと声をかけられ、AVに出演するという意識がないままにプロダクションから提示された契約書にサインし、出演を余儀なくされる事例が後を絶たないということです。一度契約すると、「断れば違約金が発生する」「親にばらす」などと脅されます。
 被害者は18~25歳が中心です。高校生の時にスカウトされ、「業務委託契約」を結んだケースは、露出度の高いグラビア撮影をされ、20歳になると会社が無断でAV出演を決定。意に反して出演させられた女性が精神的ショックを受けて契約取り消しを申し出ると、「あと9本の契約がある」と違約金を要求されました。



伊藤氏は、出演強制を禁止する法整備と問題のある作品の回収、教育の充実を訴えています。私も同意します。

しかし、神戸大学大学院の青山薫教授は、ちょっと角度の違う意見を出しています。

 ヒューマンライツ・ナウ(HRN)の報告書が指摘する、強要被害があったことは事実でしょう。出演強要は論外。なくしていくべきです。
 ですが、AV業界全体が悪という前提で、対策法を作って取り締まりを進めよ、などと訴えているように読めるHRNの政策提言には賛成できません。この前提で取り締まりを強化すると、AV業界が実情よりも怖いところであるというスティグマ(汚名)が強化されてしまうからです。
 戦後、売春防止法が制定された時、働いている人たちが堕落した人たち、あるいは犯罪予備軍と扱われてしまうという反対意見がありました。しかし、残念ながらほとんど取り上げられず、結局売春婦への差別が強まった。
 また、幅広い調査なしに規制を強化しても、強要や暴力を防ぐ効果は低いでしょう。被害者だけでなく、今そこで働く人の話を基に、仕事を続ける中で被害を招く悪条件を変えない限り、被害を防ぐことはできません。
 強制的に売春などをさせる人身取引を規制するときの調査も不十分でした。2005年に刑法に「人身売買罪」が新設されましたが、この時は、大変な被害にあった人の聞き取りだけが参考にされ、多くの、解決したい問題はあるが仕事を続けたい人の話は顧みられなかった。結果的に多大な被害にあった少数しか救済できず、人身取引の全体像は分からないままです。
 不十分な調査で新法ができ、新たな犯罪の対象になれば、今は表にいる業界の人たちが、地下に潜ってビデオをつくろう、となってしまうかもしれない。裏ビデオが主流になると、制御は今より難しくなります。
 広範な調査の好例もあります。世界の性産業の調査では、そこで働く人たちを尊重し、一緒に改善策を探る傾向です。時間もかけます。
 これにならって、政策提言するなら、AVメーカー団体など業界の人たちをテーブルに招き、一緒にする。その結果、ある種の規制強化になったとしても良いでしょう。
 AV業界にも男女差別の問題はあります。女性に対する出演強要は、女性をおとしめる表現と表裏一体と言える。欧州連合(EU)では18歳以上の成人が出る成人向けポルノは合法ですが、レイプなどの「過激なポルノ」を違法とする国があります。人をおとしめる表現は「言論の自由」には該当しないという考え方です。
 日本は性器にモザイクをかける一方で、他は何でもありです。業界内では、今回の強要問題をきっかけに業界を健全化しようという動きがあります。その流れが、暴力的表現を廃し、人をおとしめない表現で作品をつくる流れにつながって欲しいです。


少数の人権侵害にばかり目を向け、AV自体が悪であるような前提で対策をすると、地下に潜るなどで実態の解明に至らない、という意見です。

なるほど、そういう考えもあるのか、と思いました。

しかし、『人をおとしめる表現は「言論の自由」には該当しない』という意見には違和感があります。

AVではありませんが、映画で、殺人鬼が出てきたり、テロリストが出てきたりというのは普通です。そうしたものを規制するのはあきらかに「表現の自由」に抵触します。

それらの映画の意図は犯罪を擁護していないのだから規制できない、という反論は無意味です。作品の“意図”というのは客観視できるものではありません。好き嫌いで、この作品はOK、この作品はNG、としてしまう考えは、「表現の自由」とは相容れません。
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