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【朝日新聞】やらせメール ご無体な命令が思考を止める

7月15日朝日新聞朝刊のオピニオン欄にて、一橋大商学部長の沼上幹氏が九州電力の「やらせメール」について書いています。

引用します。


(前略)
先週発覚した九州電力の「やらせメール」事件は、「組織ぐるみ」の仕事にしては、内容も手順もあまりにもお粗末ではないだろうか。
どこが「お粗末」なのかを改めて確認するのもばかばかしいが、第一に、そもそもこの種の企画をしたこと自体が非常に非合理的である。もちろん非倫理的であるという批判も受けるべきだが、この「やらせ」は損得勘定で見ても割に合わない。あとで事件が発覚したら、どれほどのマイナスがあるのかを考えてみれば誰の目にも明らかだろう。
しかも、これが発覚しなかったらといって、得られる効果はたかが知れている。説明会に寄せられる賛成メールが増えるだけなのだ。原発を管理している会社にしては、無意味にリスク愛好的である。
お粗末だという二つめの理由は、実行プロセスがあまりにもずさんなことだ。「陰謀」は、確実に信頼しあえる少数者が、証拠の残らない口頭コミュニケーションで行うのが定石だ。それを転送・複写の容易なメールで子会社にまで依頼し、わかっただけで約2900人に伝わったというのは相当「お粗末」である。
多くの人が関与すれば、首謀者や会社そのものに怨恨を抱いている人が含まれる確率が高くなり、その首謀者の失脚や会社への復讐を狙って、マスコミへの密告が発生する危険が高まる。しかも、これだけ多くの人が知っていれば、誰が「裏切り者」かが露見しないので、気楽に密告できる。この「やらせ」は、かなり危ない橋を渡る企画なのに、その実行プロセスは穴だらけである。
(後略)



九電やらせメール問題を倫理面からではなく、陰謀のずさんさの面から批判しています。この後、沼上氏は組織論を展開していきます。最後にこう締めくくります。

組織が倫理観を維持するためにも、その倫理的判断力を支える論理的思考力が不可欠である。そのためには、常に組織の上下間で論理性の高い緊張感のある議論が維持されなければならないのである。


凡百の批判よりもはるかに刺激的な論考です。しかし、前提にしている九電やらせメールの分析には異論があります。

おそらく、九州電力は「やらせメール」を悪いことは考えていなかったと思います。だからこそ気楽にメールで2900人に依頼したのです。「お粗末」な「陰謀」ではなく、非難されると思っていなかっただけでしょう。

なぜなら、今回の「やらせメール」は、株主総会で社員を株主席に座らせ動議に拍手させるのや、政治家の街頭演説で支持者を動員するのと、基本的には同じことだからです。こうしたことは多かれ少なかれ、日本の社会では普通に行われています。それに気づいていない振りをして、九州電力だけを非難するのはカマトトというべきです。

九州電力を非難するなら、株主総会の「やらせ」や街頭演説の「やらせ」を等しく非難の対象にするか、九州電力の「やらせ」だけが問題だとする理由を説明すべきです。沼上氏に限らず、私の見聞きした範囲では、こうした議論はありませんでした。

念のために付け加えますが、私は原子力発電の再稼動を主張しているわけでもありません。電力会社を考えなしに批判することに異論があるだけです。
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