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【朝日新聞】AI研究家の「メディア私評」

4月18日朝日新聞朝刊オピニオン欄。国立情報学研究所教授・新井紀子氏の「メディア私評」のコーナー。「仏のAI立国宣言 何のための人工知能か、日本も示せ」より

 日本ではほとんど報じられていないが、人工知能(AI)分野で、地政学的な変化が起きようとしている。フランスの動向だ。マクロン大統領は3月末、世界中からAI分野の有識者を招き意見交換会とシンポジウムを開催。フランスを「AI立国」とすると宣言した。2022年までに15億ユーロをAI分野に投資し、規制緩和を進める。
(略)
 「新技術が登場する時には心配する人は必ずいる。電話やテレビが登場したときもそうだが、何の問題もなかった。AIも同じだ」と楽観論を展開するヤン・ルカンに、(マクロン仏)大統領は厳しく指摘した。「これまでの技術は国民国家という枠の中で管理できた。AIとビッグデータは違う。圧倒的な寡占状況があり、富の再分配が行われていない。フランスが育成した有能な人材がシリコンバレーに流出しても、フランスに税金は支払われない」と。
 アメリカと中国でブームになると、日本は慌ててAIに手を出した。だが、「何のため」かはっきりしない。夏目漱石そっくりのロボットを作ってみたり、小説を書かせてみたり。よく言えば百花繚乱、悪く言えば迷走気味である。メディアも、AIと聞けば何でも飛びつく状況だ。フランスは違う。AIというグローバルゲームのルールを変えるために乗り出してきたのだ。
 最後発のフランスにルールを変えられるのか。大統領のAIアドバイザーを務めるのは数学者のセドリック・ビラニだ。法学者や哲学者も連係して、アルゴリズムによる判断によって引き起こされ得る深刻な人権侵害、AIの誤認識による事故の責任の所在、世界中から最高の頭脳を吸引するシリコンバレーの「教育ただ乗り」問題を鋭く指摘。巨大なIT企業の急所を握る。そして、「データとアルゴリズムの透明性と正当な利用のための共有」という錦の御旗を掲げながら、同時に投資を呼び込む作戦だ。最初の一手は、5月に施行されるEU一般データ保護規則になることだろう。
 ヨーロッパでは哲学も倫理学も黴の生えた教養ではない。自らが望む民主主義と資本主義のルールを通すための現役バリバリの武器なのである。
 振り返って、我が国はどうか。「人間の研究者が『人工知能カント』に向かっていろいろ質問をして、その答えを分析することがカント研究者の仕事になると私は予想する」(「AIは哲学できるか」森岡正博寄稿、本紙1月22日)。
 これでは、日本の哲学者の仕事は風前の灯と言わざるを得ない。(敬称略)



マクロン大統領の「フランスが育成した有能な人材がシリコンバレーに流出しても、フランスに税金は支払われない」というのは、別にAIやビッグデータに限った話ではなく、「頭脳流出」という言葉で昔から言われてきたことです。

それはともかく、AIが急激に発展し変質する社会で国民国家という形が生き残るのかどうかも疑問です。ヤン・ルカン氏が言おうとしたのは、そういうことも含めてのことではないかと思います。


日本のAI研究が「よく言えば百花繚乱、悪く言えば迷走気味」なのは必ずしも悪いとは言えません。科学技術の発達というのは多かれ少なかれ、当初の想像もしない方向に展開するという傾向があります。

「何のための人口知能か、日本も示せ」というのが新井氏の主張に関わりますが、確かに何のためかを考えて研究するのも大切ですが、何のためか分からない研究も悪くはないとは思います。


>振り返って、我が国はどうか。「人間の研究者が『人工知能カント』に向かっていろいろ質問をして、その答えを分析することがカント研究者の仕事になると私は予想する」(「AIは哲学できるか」森岡正博寄稿、本紙1月22日)。
 これでは、日本の哲学者の仕事は風前の灯と言わざるを得ない。


このくだりは大変面白く感じました。
学者が他の学者を、公の場でここまであからさまに攻撃するのは珍しいと思います。
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