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【朝日新聞】同時テロ10年 ブッシュ氏のエリートパニック

9月4日 朝日新聞朝刊 オピニオン欄より

アメリカ米同時テロ10年の節目に合わせたかのように8月末、チェイニー前副大統領の著作「わが時代」が刊行された。この機に、ブッシュ前政権を支えた人々の回顧録を7冊買いそろえ、一気に読んでみた。
 副大統領の本のほかに、ブッシュ大統領の「決断のとき」、ラムズフェルド国防長官「周知の事実と未知の事実」、リッジ国土安全保障長官「試練の時」、ローブ補佐官「勇気と結末」。あわせてローラ大統領夫人の「真心からの言葉」と母親バーバラさんの「回想」も斜め読みした。
 女性ふたりの著書は飾らない筆致で好印象だったが、男性陣の5冊は題名だけでなく中身も脂っこかった。共通するトーンは過剰な雄々しさ、みなぎる自画自賛。立て続けに読むとちょっと胸焼けがする。
 とりわけ興味深かったのはテロ当日の大統領の慌てぶりとその釈明である。
 《朝》大統領はフロリダ州の小学校を視察中だった。補佐官からテロ発生を伝えられ、取材陣の目の前で動揺する。ところが大統領の回顧録によると、自身は冷静だったという。〈危機管理の第一は平静さ。私がショックに陥ってはいけない。慌てたらパニックの波を国中に送ってしまう〉と自制したそうだ。ものは言いようである。放心し、恐怖にとらわれるまでの一部始終が放映されたことをお忘れらしい。
 《昼》大統領はなぜか首都へ戻らず、10時間あまり雲隠れした。副大統領の本によると、「首都に戻ると危ない」と大統領を諭し、遠くネブラスカ州で退避させたそうだ。どう考えてもあの局面で大統領が身を隠すのは賢策ではない。「臆病」「役立たず」と批判されたゆえんである。
 《夜》ようやく首都に戻り、大統領は眠りについた。まもなく「敵機襲来」の声に起こされる。夫人の回顧によると〈大統領は、近視の私にコンタクトを着けるいとまも与えず、寝間着のまま2人で階段を駆けおりた〉。敵機でなく米軍機と判明するのだが、その動転ぶりたるや尋常ではない。
 こうしてみるとテロ初日、ブッシュ氏は朝から晩まで逃げてばかりいた。まるでパニックに陥っていたかのようだ。
 大災害でパニックを起こすのは一般大衆ではなく、権力を持つエリートの方だという研究がある。米災害社会学で「エリートパニック」と呼ばれる現象だ。
 日本でも大震災の後に散見された。どなりちらす首相、放射線情報を隠す原子力当局、乱立した政府対策本部。どれもパニックと言ってよい迷走ぶりだった。
 この分野に詳しい米コロラド大学のキャスリン・ティアニー教授を訪ねた。
 「大衆は危機に直面するとパニックを起こすもの、と思い込んだ政府機関の長たちが恐怖にとらわれ、自らパニックに陥る現象です。安全じゃないのに『安全です』と繰り返す。手にした有益情報を隠す。はては被災者に銃を向けることもある」。6年前、ブッシュ政権が「秩序回復のため」と称してハリケーン被災地に部隊を投入したのが典型という。
 米国の災害学者たちは、地震やテロなど数十年分の惨事における大衆の動きを調べ「市民の圧倒的多数はパニックなど起こさない」という結論を得た。ティアニー教授自身、95年には神戸を、今年6月には東北を実地調査に訪れ、被災者がいかに冷静だったか学会で発表している。「むしろ問題が多いのは公的機関の動きの鈍さや連携のなさ。どの国でも、国難に直面して動転し、機能しなくなるのはエリート層です」
(後略)
朝日新聞・山中季広(ニューヨーク支局長)


キャスリン・ティアニー教授によればエリートパニックとは「大衆は危機に直面するとパニックを起こすもの、と思い込んだ政府機関の長たちが恐怖にとらわれ、自らパニックに陥る現象」のことです。テロがあった日に、放心したり、恐怖にとらわれたり、首都にもどらなかったり、味方機を敵機と間違えて避難したり、というのはエリートパニックとは違うことのようです。

「エリートパニック」という言葉は置くとして、山中氏のブッシュ前大統領批判は正しいでしょうか。朝昼晩と行動を論評しているので、私も朝昼晩をそれぞれ検証してみます。

<<朝>>
「危機管理の第一は平静さ。私がショックに陥ってはいけない。慌てたらパニックの波を国中に送ってしまう」とはブッシュ氏の内面です。山中氏にも誰にも、それを嘘と断定することはできません。また、実は、慌てていたくせに回顧録で美化するのが許せない、という批判は低劣です。慌てているように見えたことが、どのような弊害をもたらしたのかを論じるべきです。極論を言えば、弊害がないのなら放心しててもかまいません。

<<昼>>
後になって首都に危険はなかった、と言っても始まりません。その時の判断としてどちらの意見が正しかったのかと言えば、やはり政治家である米副大統領の意見だと思います。朝日新聞ニューヨーク支局長が米副大統領より、安全保障やテロ対策に精通しているとは思えません。それでも自身の意見に自信があるなら、根拠を示すべきです。「どう考えても」の一言だけでは根拠になりません。

<<夜>>
米軍機を敵機と見誤ったのは、ブッシュ氏の責任ではありません。当時の状況から考えて用心して避難するのは間違いではありません。また夫人にコンタクトをつけさせるいとまも与えずに避難したのも、なじられることではありません。火事の時に着の身着のままで避難するのを求められるのと同じことです。

後知恵でこき下ろすのは感心できません。


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