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【本】人口激減 移民は日本に必要である


人口激減―移民は日本に必要である (新潮新書)人口激減―移民は日本に必要である (新潮新書)
(2011/09)
毛受 敏浩

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賛成できかねる主張の本です。気になった点を挙げてみます。

■外国人労働者が日本人の職を奪うのか

毛受氏は、次のように問題提起しています。

不況が続く中で彼ら(※)は、重労働の割に賃金が低い、日本の青年が嫌がって避けるような職に就き、大切な労働力として重宝されていた。それでも、「彼ら外国人が日本人の仕事を奪っている」と根拠もなく批判する人がいるが、はたして本当にそうなのだろうか。彼らがいなければ、日本人の失業率は改善していたのだろうか。(P4)

※外国人労働者

これに対する答えは、次のように書いています。

二○○九年正月、日比谷公園の年越し派遣村は社会的関心を集めた。多くの若者が職を求めている姿を見た大手クリーニングチェーンの理事長は、すぐに職業安定所に向かった。深刻な人手不足が続いていたからだ。正社員・月収二十四万の条件で人材を募集したところ百八十人が応募し、そのうち十二人を採用したという。ところが、一週間たって残ったのはわずかに一人。「おなかが痛い」「仕事が合わない」と出勤初日の午後に退職届けを出した人もいた。理事長は「日本人は少しでもきつい仕事はもうやらない、できないんだということがよくわかった」という。(『日経ビジネス』二○○九年十一月二十三日号「移民YES」より)(P67)


つまり、日本人が就きたがらない仕事を移民がやっているのだから、日本人の職を奪っているわけではない、という論理です。

間違っています。

「大手クリーニングチェーン」が慢性的に人手不足なのは、仕事に対して支払う給料が少ないことが原因です。本来であれば、「大手クリーニングチェーン」は給料を上げて従業員を確保しなければなりません。それができないなら市場から退場して、別の業者が出てくるだけです。低賃金をいとわず働く労働者(この場合は移民)がいると、このメカニズムが働きません。よほどの人手不足の状態でない限り、移民は日本人の職を奪います。

毛受氏は次のようにも述べています。

彼ら(※)がいなければ、弁当代やクリーニング代を今のような廉価に維持することは無理だろう。「彼らが日本人の職を奪っている」と無責任に言う人もいるが、彼らのように、根気がいる仕事を休まず続け、低賃金で働く日本人を見つけることは難しいだろう。(P176)

※外国人労働者

弁当やクリーニングを安く維持するのを大前提に置くからおかしな結論になっているのです。

■倫理的な側面
日本人の失業率が増えても移民を低賃金で使った方が、弁当やクリーニング代が安くなって得だ、との主張であれば、倫理的にはともかく論理は通っています。しかし毛受氏は

とにかく移民受け入れで重要なことは、「貧困のサイクル」を作らないことだ。移民一世は、日本語習得や職場環境に慣れるのが精一杯で、経済的に成功できるかどうかはなかなか難しいかもしれない。しかし、その子ども、孫たちまで貧困が連鎖することは避けなければいけない。(P185)


と言い出しています。では移民一世がいなくなったあと、低賃金でクリーニングの仕事をする人がいなくなります。当然のことながら無限に移民を受け入れ続けるほど日本は広くありません。毛受氏の主張は一貫性がありません。

■倫理的側面2
毛受氏は、移民を受け入れるべき理由を次のように述べています。

本書でなぜ移民受け入れの議論をするかというと、それはひとえにこのような逼迫した問題(※)が目前に迫っているからであり、それに目を瞑ったままでは、先述したような悲惨な状況が待っているのは自明のことである。
世界各国で、すでに「高度人材」と呼ばれる高い技能や知識を持った人たちは、引く手あまたの存在である。それは高度人材に限らない。それぞれの国で必要な分野の人材を、国外から呼び入れることは当然のこととして行われている。(P45)

※高齢化社会になること

そして

白書では、途上国からの頭脳流出についても言及している。途上国の科学・技術分野の人材の三分の一から半分は、現在先進国で生活しており、たとえばアフリカからの高度な技術を持った看護婦や医師が、毎年二万人流出している。その例として、イギリスのマンチェスターで働くアフリカのマラウイ人の医者の数は、マラウイ全体の医者の数よりも多いと報告している。(P65)

※2006年の世界人口白書

とも紹介しています。

一般に移民に否定的な人たちは排外主義者とか極右とか人種差別主義者呼ばわりされることがあります。しかし、ごく素直に考えれば、自国の医療のために貧しい国から医者や看護婦を奪っている方が、倫理的に間違っています。

マラウイの状態を自分で紹介しておいて、毛受氏は何とも思わないのでしょうか。氏の倫理の基準がわかりません。

■外国人流入によって犯罪は増えるか

入国者数の増加と正比例かそれ以上の割合で犯罪率が増加して初めて、外国人が増えると治安が悪化すると言えると思うが、このデータを見る限りそうはなっていない。(P116)


毛受氏の基準はおかしいです。入国者数と犯罪率に相関関係があれば関係があると疑えます。正比例以上でなければ悪化したと言えない、というのは間違っています。

もっと合理的に判断したいのであれば、人口あたりの犯罪者の割合を、日本人グループと外国人グループで比較することです。日本人グループより犯罪者率が多ければ、外国人によって治安が悪化した、といえます。

■移民を入れない日本人は身勝手なのか

移民受け入れについて、日本では相変わらず抵抗や拒否が根強くある。できるだけその議論はしたくないというムードさえ感じられる。
そうした心理の根底にあるのは、なんとか日本人だけで持ちこたえられないか、犯罪の増加や社会の混乱要因になる外国人の受け入れはなんとか避けたいという意識だろう。
しかしだからといって、日本人は排他的で、外国人嫌いな国民と一概に言えるだろうか。日本では不況の最中でも海外旅行は活況を呈している。海外の名所旧跡を訪れたい、異文化に触れたいという気持ちを日本人が持っていることは確かで、テレビ番組でも海外の文化や風習をクイズ形式で出題する番組がいくつもある。
つまり、異文化に感心がないのではなく、自分が海外に行くのはよい、しかし外国人が日本に来るのは困るというのだ。これはあまりに身勝手ではないだろうか。(P49)


この論理は滅茶苦茶です。

海外に旅行することと、移民とは比較の対象にはなりません。外国からの旅行客を歓迎するのも、移民を入れるのも、その国の主権の問題です。自国民が海外旅行に出かけるからといって、移民を受け入れる道義的理由はまったくありません。

■欧州の状況

もちろん、外国人を自国に受け入れるには、さまざまな課題を伴う。アメリカやオーストラリアのような移民大国ですら、移民については反対意見や否定的な見方をする人たちも多い。とりわけ不法移民については否定的な意見が強い。しかし、正規の移民受け入れを拒絶するという選択をする国は見当たらない。
これはヨーロッパでも同じだ。EUの拡大によって新メンバーになった東欧諸国から、旧EUメンバーの国々への移動が起こっている。EU諸国以外の中東やアフリカからの移民も多い。様々な問題はあるものの、EUの人々の中には、移民によってもたらされる活力が国の将来の発展につながるという意識が強くある。それは単に労働力の不足を補うためではなく、経済電圧(※)を上げ自国民をも奮い立たせる大きな力になることを知っているからだ。(P19)

※毛受氏の造語で、成長過程の国での富めるものと貧しい者とのギャップを指す。

社会が平等でない方と活力が生まれるから、貧しい層が必要という意見です。毛受氏がそういう意見を持つのは結構ですが、日本では少数意見だと思います。また、EUの人々が毛受氏と同じ意見であるかのように書いていますが、根拠が示されていません。毛受氏の思い込みではないでしょうか。

外国人の受け入れは、日本社会にとって合わせ鏡のようなものである。日本が彼らに対して、積極的に歓迎する姿勢を示し、そのためのサービスを充実させれば、彼らは日本社会に、彼らの持つ能力を最大限に活かして貢献してくれるだろう。しかし日本が逆の対応をとれば、移民問題で苦しむ欧州の一部の国のような状況に陥るだろう。(P121)


さらっと、欧州の一部の国が移民問題で苦しんでいることを書いていますが、具体的にどの国でどんな問題があるのかを書いていません。これでは、移民受け入れに都合の悪い事実を読者に隠している、としか受け取れません。

■理路整然?

そのように理路整然といくら説明しても、まだまだ日本には外国人受け入れに抵抗を示す排外主義という大きな壁がある。(P177)


これだけ穴の空いたことを言っておいて、みずからを「理路整然」と言い張るのにはあきれかえりました。
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