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【朝日新聞】インタビュー:経済成長という麻薬

1月18日 朝日新聞朝刊オピニオン欄に、仏の経済学者ダニエル・コーエン氏のインタビュー記事が載りました。

コーエン氏は、一人当たりの所得が増えていくというのは、歴史的に例外的なことであったと指摘し、欧州もこれから経済成長のない時代にはいるとしています。また人間が幸せを感じるのは、成長が加速していく時で、豊かさそのものはいずれ飽きてしまうものだ、と論じています。

成長にこだわらない選択肢として次のようなことを言っています。

たとえばフランスでは回答として労働時間を短くする35時間労働が打ち出された。もし経済成長にともなう暮らしに居心地の悪さがあるとすれば、それは働きすぎだからだ。みんなで同時に働く時間を少なくすればいい
35時間労働について、私が受け入れがたい批判はこういうものだ。『もっと働かなければならない。なぜなら中国人はうんと働いているのだから』。これはおかしい。富というのは、働かなければならない時間を減らすためにあるはずだ。フランス人が10%の労働時間を減らして、10%収入を減らしても、それは問題ではないはずだ。
貧しい人がたくさん働くのは、まさに貧しいからだ。余裕のある者も同じくらい働くべきだという考えはばからしい。


非常に魅力的な意見です。心情的には大賛成です。しかし、この意見への強力な反論として次のようなものがあると思います。すなわち「フランス人が10%の労働時間を減らすと、収入を50%失う可能性がある」。

現在豊かであるからといって油断をすると全てを失うこともあり得ます。これに対して有効な反論がないと一般への説得力を持ちません。

もう一つ、経済成長をしない時代に入ったことで、社会が悪い不寛容になる、とも論じています。これは昨日話題にしたユーロ圏崩壊に関係することです。引用します。

欧州の危機は米国と少し違う。それは欧州統合というプロジェクトの危機だ。これは、欧州を利己的な各国家を超えた共同体として統合しようという理念に基づいている。それなのに、繁栄している国々が、困難を抱えた国を助けずに見捨てようとする動きが出たときに、それを欧州統合の理念が押し返せない。
債務危機の議論とともに、ギリシャ対ドイツだの、イタリア対ドイツだのとステレオタイプもまたぞろ登場してきている。欧州建設が始まって半世紀にもなろうというのに愚かしい。
文明が進むということは、人類はだれもが兄弟だと考えることができるようになるということでもある。欧州統合もその一つだ。だが、文明の進歩がこれほどもろいとは、信じがたいほどだ。


コーエン氏は、欧州統合は損得の問題ではなく理念の問題と捉えています。

二点、指摘します。

第一に、コーエン氏の主張は、文明が進歩したら人類のだれをも兄弟と考えるのだから債務危機国を助けるべき、というものです。

しかし、現実の兄弟で考えてみます。独立した生計の弟が借金をして遊びに散財したとします。果たして金銭的に助けるでしょうか。よほどの余裕がなければ助けないでしょう。兄弟関係に譬えていますが無理があります。

第二に、「人類のだれをも」と言っていますが、ユーロ圏というのは汎人類的なものではありません。コーエン氏もギリシャを助けるべきと考えても、アフリカやアジアの貧しい国を同じように助けろ、とは言わないはずです。ユーロ圏は、国家の組みなおしに過ぎません。各国家が利己的だと言うなら、同じようにユーロ圏は外に対して利己的だといえます。

コーエン氏がユーロに理念を見出すのは自由ですが、ついてこない人たちに失望するのは少々ズレているように思います。
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