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【朝日新聞】(インタビュー)対立打開、東洋の知恵 

10月10日朝日新聞朝刊オピニオン欄。東洋文化研究者のアレックス・カー氏のインタビューです。

 ――歴史に関する政治家の発言が、外交問題に発展するケースが後を絶ちません。
 「歴史を直に見ない、歴史を編集したがるのは、ある意味、アジア全体の問題です。中国は膨大な死者が出た文化大革命をめぐる矛盾が、複雑な問題として残っている。タイも戦前から戦後にかけてあったファシスト系の軍事政権の過去を、いまだ処理できていない。この問題は日本だけの問題ではありません」
 ――しかし、日本の政治家の歴史認識は政治問題化します。
 「政府が『戦争を起こしたことは申し訳なかった』と言っても、すぐに政治家が『違う、日本は正しかった』と発言するから、中国や韓国から見れば、日本はまったく歴史を認めていない、ということになってしまう。実は反省している人々はたくさんいるのに。尖閣諸島をめぐって日本側から『歴史』を言い出すと、笑いものにされます。歴史を直に受け入れなければ、歴史を語る立場にはない。この点を踏まえないことが、日本の政治家の甘い部分だと思います」
 ――同じ敗戦国のドイツでは周辺国と同種の問題は起きていません。
 「ドイツは戦争の過ちを法律上も、学校教育の場でも、様々な博物館でも示しています。ドイツを恨む国はありません。日本には原爆ドームなど戦争で被害を受けたことを示す記念館はありますが、海外での加害を示す記念館はありますか。さらに、日本では日清戦争に始まり、韓国併合、第2次大戦といった近代の歴史に関して教育の場で『空白』箇所が多く、歴史をぼかしたり、政治家が軽率な発言をしたりしたツケが回っているのです」
 ――日本人は加害を直視せよ、ということですか。
 「私は、その機会はもう逸した、通り越してしまったと思っています。若者は教育を受けていない。政治は経済問題にばかり力を入れている。現実、日本の中ではその論争はすでに終わっていると思います」
 ――それでは、中国や韓国との和解も難しくなりませんか。
 「歴史については難しいでしょう。ただ、今の時代は、お互いの経済関係が複雑になり、損益でつながっている。いろいろ論争があってもそういう問題を避けて通る『バイパス』で、上手に解決していくことができると思っています」
 「政府レベルでは尖閣問題もあるけど、日本企業と中国企業の間では緊密な関係ができている。そのバイパスを太くしていけば、歴史をめぐる問題はゼロにはならないものの、ウエートは軽くなる」
 ――それでも、中国では尖閣問題をめぐる反日デモで日系企業や商店に投石や放火が相次ぐなど、政治が経済に大きく影響します。
 「そう、確かに中国は大変です。『慎重に』というしかない。でも、バイパスにも2通りある。中国と経済や文化面でもっと緊密な関係を持つのが一つ。もう一つは、中国ばかりに依存しないで、東南アジアやアフリカなどにも進出すること。中国一辺倒では危ういでしょう」
 ――知恵が必要なのですね。
 「アジアには本音と建前という知恵が昔からある。お互いのメンツを守りながら解決を探ることはできるはずです。本音と建前を使い分けていくことで、突破口がきっと見つかると思う。中国もそう考えているでしょうね。歴史や領土の問題については表では譲らないことにしながら、裏ではお互いに譲り合っている。楽観的かもしれないが、そうなるのではないかと思っています。米国ではそんな妥協ができないから、今、(予算を巡って)政府と議会が大変なことになっている」
 ――日本と近隣国との間には、靖国神社の問題があります。鎮魂の祈りの対象か、侵略戦争の象徴か、と見方も大きく分かれます。
 「先日、米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官が千鳥ケ淵戦没者墓苑に行きました。少しずつ、(戦没者慰霊の場としての)重心が、千鳥ケ淵に移っていくと思います。靖国神社の問題は、正面からぶつかっても、無理があります。しかし、これにも『バイパス』は考えられます。外交の世界で始まり、日本国内でも公的に千鳥ケ淵へ少しずつシフトしていく。これが前向きな方向の一つだと思います」
 ――カーさんは京都・亀岡の天満宮で暮らし、神道とのつながりも深いですね。その立場から靖国神社をどう見ますか。
 「私は靖国神社が嫌いではないし、参拝したこともあります。日本国民のほぼ全員が賛同した戦争で、全員に責任がある。A級戦犯がまつられていること自体も私は問題視していません。戦没者のための祈りの場は、神社の中にあっても、おかしくないと思います。欧米では教会の中にあるケースもありますね。しかし、靖国神社は、あの戦争を肯定するかのような遊就館という施設を造り、政治的な道を選びました。とても残念です。そういう選択をしなければ、もっと美しい靖国があった。神道の尊い面、深い面が今の時代に発揮されればよいのに、と思います。伊勢神宮も明治神宮も何も言わない。沈黙の中に神々しい空気が宿っています。これが本来の姿です」
 ――首相の参拝が、政治的な道を助長してしまったのでしょうか。
 「そうですね。もし、(靖国神社が)沈黙を保ったのなら、総理大臣が行っても誰が行ってもいいし、個人の思いに委ねればいいと思いますよ。でも、現状では、天皇陛下も行っていませんね」
 ――日本の天皇制については、どう考えていますか。
 「私は日本は天皇制を残して良かったと思っています。進駐軍と狂信的な和平反対派との軍事衝突を避けることができたし、日本の歴史を考えても、戦争に負けたからといって、天皇制を廃止するわけにはいかなかったでしょう」
 「ただ、天皇を江戸城から京都御所に戻す、つまり、政治の場から文化的活動の舞台に戻せば、もっと良かっただろうと思います。天皇が京都御所に住むことになれば、京都もプライドを持っただろうし、つまらない開発で街をお粗末にはしなかったことでしょう。平安時代以降の日本の歴史を振り返ると、9割以上の期間、天皇は政治に関わっていません。修学院離宮や桂離宮といった建築や、公家から庶民に広がった和歌など、文化面の影響力ははかり知れない。『ソフトパワー』の意味で、日本の皇室は重要なのです」
 ――歴史を直視しない姿勢は、現実を直視しないことにもつながります。東京電力福島第一原発事故の対応の問題とも関連する問題に思えますが、いかがですか。
 「原発をめぐっては電力会社や官僚、研究者、メディアを含めた、強固なシステムがありました。この『ムラ』の上に座ってあぐらをかいた。そんな安逸が、日本の悪の根源だと思います。原発事故の際も、日本は情報を出そうとしなかった。情報を開示すれば、反対派からも賛成派からも議論を招いて、政治の場でもホットな問題になったでしょう。そういう事態を避けたがる。今の米国はその真逆で、オバマ大統領は楽じゃない。でも大変さから生まれる健全なものもある」
(略)


ひとつひとつ論評するときりがありませんので、大枠で批評します。

まず、朝日新聞の質問がきわめて誘導的です。第2次大戦中のドイツとの比較には少々うんざりします。歴史の陰という意味なら、第2次世界大戦の戦勝国も問題を抱えています。ほかに欧州の植民地支配やら、十字軍やら、といくらでもありますが、なぜか第2次大戦中のドイツとだけ比較したがります。歴史問題と靖国神社は関連がありますが、天皇制の是非や、原子力発電にまで話を展開するのは恣意的です。

また、この人は東洋文化研究者であって政治や歴史を専門に考えている人ではないようです。尖閣諸島の領有に関して経緯を説明すると笑いものにされるというのも実際に見聞きしたり、取材して言っているとは読めません。こうした議論をするのに本当に適切な人間なのか疑問に思います。

また、自己紹介(?)の次の文が気になりました。
>父の潜水艦は日本軍の魚雷を受けた。死んでいれば、私はここにいなかった

自分が特殊だと思い込んでいるようですが、民間人が空襲にさらされた日本人はほぼ全員が同じ状況です。先祖のだれかが子をなす前に死んでいたら私たちはここにいません。米国人のカー氏が日本人に向かって言う言葉としては少々無神経かと思います。

蛇足で付け加えますが、戦闘用の潜水艦に魚雷を発射することはなんら不当なことではありません。しかし、民間人の頭上に爆弾を投下するのは、勝ったから問題にされなかっただけであって、不当な行為です。


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